ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

ひっぱりの2

2010-02-28 16:54:58 | 着物・古布
「ひっぱり」の話題でひっぱります。(さぶっ!)

昨日、ひっぱりのお話で「作るほう」のお話しがちょっとありましたので、
そちらのほうのことを少し…。

昨日、作務衣がどーの、ひっぱりがどーの…というお話しをしましたが、
実際、このひっぱりとか作務衣というのは、着物のように
きっちりと形が決まっていないところがあります。
いえ、もしかしたら、決まっていたのかもしれませんが、
元々が「働き着」ですから、自分の都合に合わせて、
或いは作ろうと思っている生地の量に合わせて、変えていいわけです。
要するに「ひっぱり」「水屋着」「作務衣」の基本的な作りと長さでの分類、
これをきちんとしておいて、あとは自由…ややこしいけど。

それとコメントでもいただきました「呼び方」、
「ひっぱり」というのが、いつごろからの呼び方なのかわかりませんが、
私の母は京都出身なので、関西の言い方なのかもしれません。
昔の本では両方出てきますが、時代が下がると「上っ張り」がほとんどです。
またこれは着物の歴史の特徴ですが、戦後、なんとか洋装に対抗?しようと、
いろいろなものの呼び方を変えたりしていますが、
昭和30年代は「キッチン・コート」「ホーム・コート」などの呼び方で書かれており、
しかも、和風の元々のひっぱりのカタチはほとんど見られず、
何かと「洋風」「モダンなカタチ」にしようという涙ぐましい努力が見られます。
したがって、出てくる写真はけっこうこんなのです。
着てみたくはなりませんが…下は「草笛光子」さん「スタジャン風?」


       


        

まぁ昭和30年代の本では、ほとんど家庭着はこのタイプの、
なんか考えすぎて、作るのがめんどくさそうなものが多くなっています。
着物には似合わない形…だから残らなかったのですね。


さて、そうなると…なんですが、昔は「ひっぱり用」として、
木綿とかウールの専用の半反分の生地が売られていたのですが、
今はさがすようでしょうね。もちろん、古い木綿着物やウールなどでもできます。
カタチなんですが、二つに分かれます。衿が下まであるかないか、です。
上の写真をもう一度出します。衿は途中までで、要するに「褄」部分があるわけです。


     
   

一方こちらは友人にもらった「作務衣」の上だけ。ごく現代のモノです。
衿の部分を見てください。柄がこんなですので、衿の部分に線を引きました。
黒い線が左身頃の衿、赤いのが右身頃の衿です。
衿が下までありますね。


     


これはお好み…ということだと思うのですが、
見てわかるように、衿の「Ⅴ」字が下のほうがせまいですね。
丈が短ければこれでもいいのですが、丈が長くなると襟元を深く合わせないとあきますから
裾つぼまりが強くなってちょっと動きにくくなります。
これは昭和57年の本(私の手持ちの古本の中ではご~く新しい時代のものです)
短いので衿のままでもすっきりです。これはリバーシブル。
(ポンチョは左のページでして、ここには出していません)


  


似たような時代なのですが、こちらは「おくみ」をつけたもの。
和裁の本なので実物の写真はありません。
トップ写真タイプで、さらに「おくみ」がついていますから、
丈を長くしてもラクです。水屋着はこのタイプですね。
これには「馬乗り(脇のスリットのこと)」がついています。
これも丈が短いものにもつけておくと、動きがラクになります。


  


ちょっと長い…けど「水屋着」ではなくて
かつて着物で事務仕事をするのがアタリマエだった時代の「着物用事務服」
セルの袴から作ってあるのですと。昭和8年の本です。
「キッチン・コート」より、かっこよく見えるなぁ。


         

    

私の手持ちの古本は昭和ひとケタから、新しくても40年代くらいがほとんどです。
戦後モノ30年代の本がけっこうあるのですが、
上にも書きましたとおり「洋装に追いつき追い越せ」の時代です。
つくづく思うのですが、和装の中で勝手にカタチや名前をこんな風にいじれるのは、
働き着と上に着るもの、つまり「コート」類しかなかったんですよね。
元々着物の上に着るものは「羽織・道行・被布」くらいだったわけですが、
まぁそれの変形で「雨コート」とか「和装コート」というものが考え出され、
千代田衿とか都衿とか道行衿とか…。
それが一気に「洋風モダン」にはしりましたから、
丈の短いこんなコートがたくさん載っています。


   

      


元々の和装では、どうも変化させられない衿を、思いっきり大きく…。
首に浮き輪をはめてるみたいだし…。
それまでは和装では使われない「毛皮」とか「ヒョウ柄」なんかにも憧れたんですかね。

こうしてみると、やっぱり「和装」には「和装」の特色があり、
しっくり合うものや、使い勝手のいいものが結局残っていくんだなぁと…。

というわけで…ひっぱりでひっぱったお話しはオシマイです。








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9 コメント

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バラエティ豊かでいいですね (Unknown)
2010-02-28 18:28:25
もともと手作りが基本だったのでしょうね。いろいろ工夫されていて、楽しく見せていただきました。

水屋着も形・丈いろいろです。庭担当だと短い上着ともんぺを水屋着にしたりします。流儀や先生によっては割烹着タイプもOKで、丈長割烹着を水屋着にどうぞと市販しています。

コートの衿といえば、変形千代田衿のコートと笹衿のコートを京洗いに出す時、受付票を書く若い(染めと呉服の店の)店員さんに「道行と道中着ですね」と言われ、「いえ、道行でも道中着でもないコートです」と妙な問答をしました。ちょっと意地悪だったかしら。最近またいろいろな形のコートが出てきて、うれしく思っています。
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名無しの権兵衛 (こいけ)
2010-02-28 19:14:03
↑のコメント、名前を書き忘れて、名無しの権兵衛になってしまいました。失礼いたしました。

今年、女性もののトンビがネットショップで出ていました。トンビ、カッコイイですが、スラッとした人でないと着こなしが難しそうです。
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Unknown (りのりの)
2010-02-28 19:44:38
結婚したとき母が久留米絣のひっぱりを持たせてくれていたのに20数年後に気が付いたわたくしは、着物のたもとのようになってる袖をちょこちょこっと縫って細くしてふつうにジーンズの上などに着ています。
もちろん家着ですけど。

わりと臨機応変に変化する上着は自由に楽しんでもいいですよね。
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Unknown (陽花)
2010-02-28 21:07:52
うわっぱり、そういえば小学生の頃
参観日にはほとんどのお母さんが、
着物の上に紺色のうわっぱりを着て
いました。

ひっぱり持っているのは、衿が下まで
あるのばかりです。
40年ぐらい前には写真の様なコートを
着た事もありました。懐かしいです。

返信する
着物用事務服! (sachi)
2010-03-01 08:38:35
40年前、まだ銀座が普通のオフィス街だったころ、OLデビューしたときはこの着物用事務服が制服でした。ヘチマ衿でお袖に余裕があって膝下丈、紺色のサージでした。画像を拝見して、懐かしい思い出がよみがえってきました。

今はこちらのお店の「活動着」というものを愛用しています。
http://item.rakuten.co.jp/manten-t/10000483/
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Unknown (とんぼ)
2010-03-01 18:13:48
こいけ様
こちらでお直しできればいいのですが、
変えられない設定ですので、
このままですみません。
たぶん「こいけ様」と思っておりましたよ。

いろんなものを便利に使えばいいと思うのです。
でも、半纏もひっぱりも、何もかもごっちゃで
なんか上に着るヤツ…なんてのは
寂しいですからねぇ。

今は呉服屋さんでさえ、間違った覚え方とか、
知識がないとか、ありますからねぇ。
きがついて学習してくださるといいんですけど。
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Unknown (とんぼ)
2010-03-01 18:15:49
りのりの様
親はありがたいですねぇ。
私の久留米絣は、そそっかしい私には長くて
なんだか動きがジャマされて…。
数えるほどしかきていません。探そう!!
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Unknown (とんぼ)
2010-03-01 18:18:53
陽花様
近所のおばちゃんたちが、おしゃべりするのに
集まると、みーんな「これ」でしたわ。
中には「どう見ても元は男物」と思うような
色柄もありましたっけ。
アタリマエの風景でしたねぇ。

私はチビでヤセでしたから、
こういうのは「埋もれる」といわれて、
母の黒いちょっとモコっとしたコートは
もらえませんでしたー。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-03-01 18:22:34
sachi様
母なども、同僚に着物通勤がまだまだ
いた時代ですから、作ってあげたり
したようですよ。母自身は、そのころ
仕事は洋服…としていたそうで、
銘仙の古着でスカート作ったりしていたとか。

HP拝見してきました。
こちら、存じ上げてましたよー。
これは衿が細い分、胸の重なりが
スッキリして、洋服にもラクだろうなぁと
思っていました。
いろんな工夫ができるジャンルですよね。
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