ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

価値観

2009-07-05 13:57:08 | 着物・古布
写真は、えーとだいたい40年近く前、二十歳過ぎたころのものです。
嫁入りのときに、別の新しいものといっしょに持ってきました。
実は当時の私はこの柄、嫌いでして、もう一枚の「桔梗柄」ばかり着ていました。
好みというものは変わるもので、その後よく着たのですが、
さすがにハデこくなりまして…。それでも保存にはきをつけていたせいか、
ダメージほとんどなし。ただ、いくらきれいに洗っても、
脇とか裾というのは、汚れがしみこんでしまうのですね。
なんとなく脇部分、薄く変色しているの、わかります?


   


さてこの先はどうするか…と迷っていたら、呉服関係の私の先生が、
「あなたもぅおばさんなんだし、ハデな柄であっぱっぱにしたら?」
なんかさりげなく、すごいことを言われた気がしたんですが…そうだよね。
こういう柄って、あっぱっぱにすると、いかにも…なんですけどね。
たとえばこめかみに小さく切った「こうやく」貼って、
酒屋の手ぬぐい首に巻いて…わぁぁぁぁ。
でも、いいかも、ちょっとデザイン考えて…。
ということで、この子の進路は決定しました。
ところで「あっぱっぱってナニ?」と思ったかた、いますよね、きっと。
和風むーむー、とでもいいましょうか、そんなもんです。


ゆかたの時期になって、ネットショップでもセットものがいろいろ出てきました。
3000円とか5000円くらいでフルセット、
洋服感覚の色柄に、フリフリきらきらとリボンみたいな帯だったりする…。
そういうものはワンシーズンで「今年のゆかた」として着ていると聞きました。
つまりTシャツみたいな感覚なのでしょうし、
来年は来年で、去年と同じもの着るのはねぇ…なのだとか。

ゆかたって、道具としては古くなったら寝巻き、
最後はオムツか雑巾、カタチを成さなくなったら、
燃やして灰になって土に還る、元々はそういうものです。
「安い」から買って、来年はもう着ない…それ以上に使ってやらないなら、
3000円でも高いものになってしまう…と、私なんかは思うのですが、
買ったときに安いことが「安い」で、だから気軽に処分できる、
そのアタリの価値観も、もう変わっているのですよね。
お祭りや花火大会で5回着た、1回600円、元はとったわよねぇ…かな。

むかーし呉服屋の奥さんの話に出てきた「親戚の多いお客さん」。
なにしろ親戚が多く、またご主人の仕事の関係でお付き合いも多いため、
年に何回かは結婚式やらなにやらに出なければならない。
そこで毎度、留袖も訪問着も「貸衣装」を借りにいらっしゃるのだそうで…。
「回数が多いのだから、お誂えになったら?」といったのだそうです。
決して着物が買えないおうちではなかったそうですし、
貸衣装って、留袖なんかは、結構しますから。
ところがそのお客さんの答えは「回数が多いから借りるのよ、
あの人来るたびに、同じ着物だって言われちゃう」…だったそうで。
呉服屋の奥さんはちょっとムカッときて、
「それは違いますよ、留袖や訪問着は、そのたびに『同じ物を着る』ことで、
あの着物はあの人の自前なんだ、と人は判断する。
そういうものは、一万二万で買えるものではないと、みんな知っているから、
毎回同じものを着ることの方がステイタスで、
そのたび違えばあの人は毎度貸衣装だ、留袖も持ってないんだと思われる」と、
即、両方お誂えになられたそーで…。

着物にはそういう「価値観」もあります。また代々譲られてきたもの、
なんていう素晴しいものもあります。外国では「宝石」がそうですね。
お嫁入りの時に、母親から指輪を譲られたり、
嫁ぎ先で「コレは我が家の妻の座についた女性がするブローチ」と譲られたり。
宝石と着物では、金額的な違いはありますけれど、どちらも
「伝えられてきた」ということに何ものにも替えがたい価値があるわけですね。

留袖とゆかたでは、比較しようにも、ピンとキリではありますが、
それでも、自然の恵みと人の手のかかったもの、という点ではかわりません。
外国の、綿花畑で働くひとの映像をみたことがあります。
決して裕福ではない身なりの女たちが、ただ黙々と、
白くはじけた綿の花を摘んで摘んで駕籠に入れ、
日焼けした男たちがそれをつぎつぎ車に積みあげて…。
そうやって集められたたくさんの綿花から、細い細い糸がひかれ、
それが織られて染められて…。
いったいどれだけの人の手に触れて、一枚のゆかたになるんでしょう。

今、盛んにエコが叫ばれていますね。
ペットボトルとか、古新聞とか、ポリ容器とか。
そして「再生しましょう」と、少しずつでもそれをまた原料に、
新しいものを作っています。まだまだだけど…。
でも、着るものについては、そんなにいわれない…たしかに、
自治会でも古着の回収はあるんです。
けっこう細かくて、あれは受け付けない、これは使えない…。
行く先は、たとえば外国のひとにそのまま衣服として使ってもらう、
これが一番いいんだけれど、届いた町内の説明書きには、
だいたいが暑い地域なので、冬物はあんまり…だと。
でも、一日で温度差の大きい地域だってあると思うし…?あー難しいです。
そのほか、切り刻んでウェスにしたり、フェルトにしたり…。
でも、まだ着られそうなものを切り刻むのかと思うとなんかため息…。
洋服のリフォームは、なかなか手間がかかりますからねぇ。

最近は、お下がりをあげるとかもらうとかの形も変わってきてますね。
近所だとか、そういう人からもらうのはどうも…でもリサイクルショップなら…。
わが子だからの思いもあるでしょうし、お付き合いの変化もあるでしょう。
またそれなりに余裕も出てきて、人にもらわなくても買えるのでしょう。
そうかと思うと、同じ子供服でもブランドものだと、喜んで譲られたりする…。
なにをどう大切にするのか、そういうところもかわってしまっていますね。

私の子供のころのゆかたは、まともには一枚も残っていません。
夏場わずかの間しか着ないのに、肩あげ腰あげをおろしてももう小さい…、
そういうものは、もう少し年下の子のためにもらわれていきました。
母がまだ娘時代、実家には長兄夫婦と次兄夫婦が同居していたそうです。
大家族で子供もごちゃごちゃいて、着るものはもちろん着まわし状態だったし、
まだそれぞれの子供が小さいころは、誰かしらの「元はゆかた」だったものが、
いつのまにかオムツになっていたと。

暮らしがすっかりかわってしまった今、繕ってまで着る、ということは、
かえって恥ずかしい…みたいなそんな感じですね。
あの先日の「手ぬぐいの衿なしじんべ」ですが、ナレーションで、
「てぬぐいは、両端が耳になっているので、端の始末がいらなくて便利です」と
やっていました。
だったらわざわざ手ぬぐい買わんでも、古いゆかたでもいいわけでしょ。
なぜ「古いゆかたも同じです」ってのをいわないんでしょ。
子供が女の子なら、自分がかつて着ていたトロピカルゆかた、
リフォームしたほうが、たとえば一度くらい間違えたって
やり直しはたっぷりできる量があると思いますがね。

価値観が変わっていくのは、それはしかたないことだけれど、
それで実はとっても「損」をしてしまうこともあることに気がついたら、
エコの方法も、また新しいものが考えられるのではないかと思うんですが。



我が家の「グリーンカーテン・朝顔さん」は、
お日様がなかなか顔を出してくれないにもかかわらず、
なんとか伸びてくれています。
まだまだスカスカだけど、カーテンになる日まで、ガンバレ!


  

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13 コメント

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あっぱっぱ! (あひる)
2009-07-05 16:21:19
あっぱっぱの作り方を知りたいです!
実物は見たことありませんが、漫画や昔の映画でなんとなくはわかります。
帯を巻くのが暑い真夏、古い浴衣をあっぱっぱにしてしまえばいいだろうなーとずっと思っていました。
猛暑用に1枚、甚平のなが~い感じのものを作ってはみたのですが・・・。
あっぱっぱの作り方、できれば手縫いでも作れるものを、是非教えていただきたいです。

「使い切る」というの大切ですね。
今は子供服も千円以下で買えるので、着られなくなったら捨てて、また新しいのを買ってもそんなに経済的に困らないです。
でも、高い安いの問題ではなく、ひとつのものを最後まで使い切るという気持ちを持ちたいです・・・。お下がりあげる相手を探すのも、一苦労ですが・・・。

ペットボトルなどのリサイクルも、「再生してもらえるから~」と、どんどん新しいペットボトルものを買うのはどうかな~と思います。
ペットボトルでも瓶でも、中身だけ買える方式になったらいいだろうな~と思います。
返信する
続・あっぱっぱ (りのりの)
2009-07-05 17:26:17
あっぱっぱって関東の方でも使うのですね。名古屋周辺の方言みたいなものかと思ってました。要はデザイン云々より一枚でペロッと着るワンピースのことですよね。子供の頃近所のおばあさんがするめみたいになったおっ○いがこぼれそうに着ていたあれですよね。あれはちょっと涼しさ優先しすぎ、と子供心におもってましたが・・・

今近所の呉服屋さんで浴衣1000円で買取キャンペーンというのをやってて、「持ってきてよー」といわれました。あんまり着ていない浴衣が2,3枚あるにはあるけどそれこそ「あっぱっぱにでもしようと思っているからない・・・」と答えたばかりです。
返信する
同じ物を着る意味 (zizi)
2009-07-05 21:30:26
なるほど、感服いたしました。

母が私に作ってくれた夏物の洋服は、姪が小さいときに子供服に作り直しました。10着以上作ったでしょうか。母はいい生地を使っていたので完全に元を取りました

そして夕べはワタスがダーリンのズボンのウエスト出しTT(これで今週4本目) 最近は、旦那様が太ったらズボンも捨てるとか・・・・工賃も高いからでしょうか。。。。ほんの10分で終わる作業ですけども。

やりくり、使い尽くすは 日本の美徳の時代だった・・・・過去形なんでしょうね。
返信する
同じ物を着る意味 (花蛙)
2009-07-06 00:52:31
私も目から鱗。
考えてみれば毎回着物は同じでも中身は年を取るんだから写真を見比べたとき面白いですね。

20年近く夏になると着ていたあっぱっぱのようなワンピース。今年はそれを解いて型にして同じ形のワンピースを3枚縫いました。
一枚は貰い物の子供向けの柄の絣の反物を使ったんですが反物4枚の幅で十分足りました。
もし幅が狭いような方はスリット(馬乗り)を入れればいいと思います。
返信する
続々あっぱっぱ (りら)
2009-07-06 01:57:56
そう言えば、サザエさんのお母さん舟さんや意地悪ばぁさんは夏に着てますよね、あっぱっぱ。
丁度今、何度目かの再読していたところでした~。

黒留の誂え。
そうなんですよねぇ・・・忙しない流行を追う洋服を着続けてきた所為でしょうか?
「毎回同じ物を着る」(着てもおかしくない)のが着物の良さの一つなはずなのに、私などもその際たるものなのですが、な~んか感覚がずれちゃってる気がします。
普段の着物でも、もっと「季節が来てまたこの着物が着られる~♪」ということを楽しめるようになりたいものです。
返信する
古着の行方・・・ (おつう)
2009-07-06 08:25:23
毎シーズン流行の物を買ってたら、あっというまに古着が溜まりますよね~
うちのところではリサイクルショップでもウェスの引き取りはしてくれません。
ゴミにも出せないし、自治会の廃品回収でも「できるだけ専門業者へ」と言われ・・・どこに捨てりゃいいのよ?となってしまいます;;

うちの旦那は「服が着られなくなるから絶対太らない!」と宣言しており、厳しい体重管理をしています。
しかし酒飲みでもあり、年齢的にも40手前で厳しくなってきているようす・・・。
「着物にしちゃえば~?多少太っても着られるし洋服要らないよ~~」という悪魔(わたし)のささやきに、ちょっとぐらついてます(笑

とんぼさん、メール差し上げたいのですが、どこから送ったらよろしいでしょうか?
前はメールフォームがあった気がするのですが、見つからなくて・・・。
すみませんです。
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Unknown (陽花)
2009-07-06 10:05:40
アッパッパ、懐かしい言葉です。
20代後半から40前まで夏によく着て
いました。肩ひもが細くてもちろん
ノーブラ、胸元にたくさんギャザーを入れて
カモフラージュしていました。
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Unknown (とんぼ)
2009-07-06 11:13:30
あひる様
面白い名前ですよね。
これについて今、記事をかいております。
数日中には、簡単な作り方のポイントなどもと
思っています。
もう少しお待ちくださいね。

使い捨てから使い切りへ…と考えたとき、
ほんとに今はそれで悩みますね。
容器のリサイクルは、もっと原始的な方法に
戻るべきではないかと思います。
「詰め替え用」といいますが、
それがまたプラ容器にはいってるんですから。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-07-06 11:16:34
りのりの様
いまや全国区、というより「年代」みたいですね。
元は英語だそうです。
いましたよね、胸を気にしないお年寄り…。
おおらかでしたねぇ。

ゆかたの下取り…ありますね。
商いの方法とも思いますが、
それはそのあとどこ行くの?が心配です。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-07-06 11:21:21
zizi様
手作りを着られるって、幸せだと思うんです。
着物でも洋服でも、あっそれ元は私の…
なんて、そんなのも楽しいし、
なにより自分がお世話になって、
また形を変えて誰かの役に立つってことが、
なんかうれしいですよね。

ウエスト直しと裾上げは、ほんっとに
ちょっとなんだけど、手間がかかりますね。
うちのだーりんも、結婚してから
みるみる太ったクチですが、
あまりにも変化がひどかった一時期、
「スーツのスボンもゴムにせぃ!」と
しかったことがあります。むりだっての。
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