ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

復活第1弾?たとう紙

2011-03-22 02:06:06 | 着物・古布

 

久しぶりの着物関連記事、今日はすんごく長いですのでそのつもりでお読みください。 

 

たとう紙、は「畳紙」と書きます。元は「たたみがみ」、文庫紙といわれたり懐紙のことをいう場合もあります。

要は「たたみがみ」ですから、たたんである紙で、収納用の大きいものから、

お菓子をいただくときに皿代わりになるものまで、道具として使う紙です。

今はたとう紙といえば「和服収納用」がほとんどになっていますね。

 

よく、着物の収納のときに「たとう紙」を使わなければいけませんか、という質問を見ます。

これってほんとに難しい質問なんです。

つまり「メリット・デメリット」両方あるから。また着物の使用頻度や、着物の状況にもよります。

基本的に「使ったほうがいい」理由として、ホコリや汚れ防止、がありますね。

あまり細かいと眼に見えませんが、着物の出し入れのたびに、ホコリは舞っています。

よく着る着物はさほどきにしなくてもですが、いい着物は使った方が…と、私は思っています。

 

それと「着物は呼吸をしている」といいます。

たとえば桐が箪笥に使われるのは、湿気によって木の組織が膨らんだり縮んだりして、

自然と換気をしてくれるから、といいます。でも、「死んだ木」ですから細胞が生きて伸び縮みしているわけではなく、

木の組織そのものが水分を吸ったりはいたりしているわけですね。

おなじように、絹も麻も木綿も、湿気を吸ったりはいたりするわけです。

それをとめてしまう…というのが、たとう紙を使わないほうがいい理由、という説があるわけです。

でも、和紙もそういう意味では呼吸をしています。湿気を吸い取ってくれるともいえるのです。

ですから、虫干し、というのは着物を干すだけでなく、たとう紙もいっしょに干します。

 

次に、重ねた着物の間での、色移りとか汚れ移りとかの防止。

たとえば藍染の着物などは、すれただけで色が落ちたりします。

また湿気があると、赤い色や青い色が移る場合があります。

昔着物の紅絹は特に気をつける素材です。

 

たとう紙に「入れときゃいい」というものではありません。まず、気をつけるのは「糊部分」です。

「虫」は糊を好みます。たとう紙で糊が使われているのは「ひも」の部分。ここから虫がつく、といわれています。

今は虫が食うほかに、糊の成分の「化学変化」ってのもあるそうで…。糊が変化するんですね。

そういえばセロテープを長いこと貼っておくと、糊が茶色に乾燥してセロファンは取れちゃいますよね。

でもねぇ、素人には「これは何の糊であるか」なんてわかりませんよね。

心配なら、紐を糊のついた部分ごと切り取っておけば、穴はあきますが安心です。

 

また、基本たとう紙は和紙ですが、今、和紙のように見えて100パーセント和紙でないものがあります。

化学繊維がはいっているものですね。丈夫ではありますが、通気性などに違いがある…と言う説もあります。

また和紙そのものは、未ざらしではうすーい茶色っぽい色をしています。

紙漉き職人は、昔からそれを白くするための工夫をしてきました。

紙にする前の時点での紫外線による漂白、つまり「日にさらす」方法が多いのですが、

漉くときにさらし粉を入れるなどの方法もあります。これが今は化学薬品も使われたりするわけです。

化学成分というのは、便利ですがいろいろ問題もあります。

自然素材には自然素材が一番相性がいいのはご承知のとおりです。

 

たとえば昔の和紙の障子紙など、月日が経つとだんだん黄ばんだり茶色くなったりしました。

あれは空気中のホコリや、ヤニ、ススなどを吸い込むからです。つまり汚れを吸着してくれるのですね。

これも着物を汚れから守る…といわれるゆえんです。

古いたとう紙は、しらないうちに茶色っぽくなったりしています。

だから、たとう紙はいつまでもおなじものを使わず「お取替え」するものなのです。

 

それと最近は減りましたが、一番上にかぶせる部分に透明の小さな窓がついているものがあります。

あれは、あの窓用の薄いフィルム、だいたいOPPフィルムなどですが、それが防虫剤の成分などに反応して

解けたり変質したりする場合があります。中が見えなくて不便かもしれませんが、小窓はない方がベスト。

もし仕立て上がりの着物のたとう紙についていたら、フィルムだけはがします。

トップ写真のものは、呉服屋さんから届いたままの小窓つきたとう紙ですが、フィルムははがしてあります。

 

さぁそこで、たとう紙を買うとき使うとき、何に気をつけたらいいか。

まず、たとう紙をよく見ましょう。たとう紙はネットでたくさん販売していますが、素材をよーく確かめてください。

今はなんでも「安いもの」に眼が行きますが、安いものの中には和紙以外の繊維が入っているものがあります。

また蛍光剤を使ったかと思うほど、やけに真っ白なものは、化学処理で漂白している場合があります。

中に入れる着物はなんでしょうか、それによって使い分けしましょう。

たとえば「この着物は正絹だけど古着で2000円だったから」…安物の着物ですか?

着物の価値は、買ったときの価格ではありません。着物そのものの「質」です。

絹であれば、それは2000円でも、1980円の綿Tシャツと同じではありません。

「2000円」を包むのではなく「絹」を包むのです。そこを考えてください。

 

たとう紙にはサイズがあります。着物を二つ折りで入れられるのがだいたい83センチサイズ。

今は背の高い方も多いので、もう少し大きいのが主流になっているようです。

その次は65センチ前後、これは着物が三つ折で入ります。帯用は55センチくらい。

着物を入れる引き出しなどの大きさに合わせて使い分けます。

帯用に着物を入れてはいけないということはありませんが、適材適所で…。 

留袖、訪問着などは「紋や柄」をまもるために「夜具畳み」がベスト。これを入れるのは65センチサイズです。

こういう「いい着物」を保存するには、たとう紙の前に「ウコン染めのふろしき」がいいのですが、

今、ウコン染め、として売っているものには化学染料であの色を出したものもあります。

ただウコン色をしているというだけで、全くウコン成分のないものもありますので、これも気をつけて。

また別の防虫効果があるものを繊維に練りこんで「防虫効果あり」としてウコン染めとして

販売されているものなどいろいろです。買うときはとにかく「詳細をよく調べて」買ってください。

「漢方敷き」などの名称は比較的ホンモノウコン含有が多いです。

最近は売っている方が知らない場合があります。つまりプロの呉服屋さんではなく、

倒産品などをまとめて売っていたりする場合など。着物に関する備品は、着物の専門店での購入がベスト。

ウコンがはいっていなければいけない、のではなく、入っていると過信して虫除けで手抜きをしたり

そういうことに気をつけましょう、ということです。相手をよく知ることで上手に使い分ければいいのです。 

ウコンまでいかなくても…でしたら、晒し木綿、ただし、よーーく洗って糊っ気をしっかり落とします。

風呂敷サイズに縫い合わせて四角くします。もちろん、普通に洋服地として売っている

ヤール幅などの白木綿でもいいのですが、綿100パーセントであるもの、

余計な加工(撥水とか)がしていないもの、そしていずれにしても、よーく洗ってから。

 

さて、いよいよたとう紙に入れて収納する…ですが、中が見えないとか、

いちいち広げなきゃわからない、とか、実は自分でちゃんとしておけばいいことなんですが…。

母は箪笥の扉の内側に、どの引き出しに、何の着物がはいっているか、全部一覧表にしていました。

ははは、私にゃできん…。かといって、たとう紙を全部はずして重ねると、着物は出しにくいもの、です。

これからご紹介するのは、あくまで「普段用のちょこちょこ着物」に、です。

たとう紙の真ん中だけ残して上からかぶせる部分(フタにあたる部分)を切り取ります。

ついでに紐もいりませんので取ります。真ん中の紐を残すのはお好みで。

こうすると、着物がのる部分と、その左右の小さいかぶせ部分だけが残ります。

これだと着物もよく見えますし、着物の間に紙一枚入るので、色移りやシミがうつるのも防げます。

(入っているのが二部式じゅばんですので、白いさらし部分が見えています。着物と考えてご覧ください)

 

    

 

たとえば上から何枚目かの着物を出すときは…(上の着物が普通のたとう紙ですみません)

片手でカメラを持っていますので、上の着物を持てていないのですが、

実際にやるときは上の着物は左手をウデまでいれて大きく持ち上げます。

持ち上げながら、取り出す着物の左部分をたとう紙ごとしっかり持ちます。

       

 

着物をずるずると半分に折って行いく感じで右に引きます。

気をつけないと、上に載っている着物が、たとう紙からずれることがありますからそっとね。

       

 

二つ折りまでにして着物を引き出します。

     

                 

 

フタの部分がない分、横からスルリと抜けやすいですから、その点は気をつけてください。

写真をとるため、床の上でやっていますが、引き出しだと奥行きは着物分より少し大きい程度ですから、

上の着物が向こう側まで、ズリ落ちることはありません。

 

こうして出して、たとう紙だけ引き出しの一番上にのせておくと、、次に入れるとき手間が省けます。

基本的には、着物はせいぜい重ねても3枚まで…が理想ですが、そうは行かないのが現実…。

着物はたたむと袖や衿のある方が厚みがありますね。

複数重ねるときは、互い違いに入れれば、カサが少しは低くなります。

上のやり方ですと、互い違いに入れても、本来の紐の結んであるほうがあっちだ手前だと、

ひろげるのに苦労しなくてすみます。

なんか頼りない、と思われるかたは、上の一番大きいフタの部分だけ切り取っても、

中が見やすい状態になります。着物の種類によって、これも使い分けすればいいわけですね。

 

長くなりましたが、今日はたとう紙の基本的な知識と使い方…。

着物はその人によって「毎日着物」「おでかけだけ着物」など、着方も着物の種類も、着る頻度もいろいろです。

よいものは丁寧に、普段モノは使いやすく…が、たとう紙とのお付き合いかと思います。

たとう紙は100パーセント和紙でなければいけないとか、ウコンはホンモノでなければいけないとか、

そういう限定はいたしません。しょっちゅう着る紬や小紋、親から譲り受けた思い出の着物、めったに着ない訪問着…

そういう着物の「自分の中での整理順」によって、たとう紙もランク付けして使い分ければいいわけです。

 

本日のおまけ画像、さて、これもたとう紙なんですが…。

 

        

 

ただの四角い和紙にみえますが…

全部広げるとあまりに大きいので、左半分だけ…。

 

            

 

わかりにくいんですが、これ、楕円形のたとう紙です。

着物を入れるとこうなります。

 

         

 

「呉服屋さん用」たとう紙、長らく呉服屋さんとはお付き合いがあるのですが、

これを初めてみたのはつい最近のこと。おもわず「どこで売ってます?」と聞いたのですが、

これは問屋さんで使っているからねぇ…とのこと。ネットで調べてもでてきません。

たぶん、価格的に普通のたとう紙に比べて高価なものだと思います。

これのいいところは、紐がついていないので結ぶ手間がないのと、すっぽり包めること。

もうひとつは、中身にあわせて大きさが変えられるんです。小さくたたむとこんな感じ。

 

          

 

これは新品をいただいたので、まだ固くて突っ張ってますが、初めて見たのは、着物をお借りしたときで、

それが使い込まれて、しなしなと布のようにやわらかかったのです。

しっかりした厚手の和紙なので、しわしわに見えても破れておらず、使いやすかったです。

 

追記…いい着物を白木綿で包むことですが、木綿は置きもジミもでます。

    とにかく、着なくてもこまめに眼を通し、風を通すことが大切です。               


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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
始めまして。 (素緋)
2011-03-22 17:39:54
びば!復活♪いつも読ませていただくだけの、超・着物初心者です。唐突に失礼致します。今日も、「帯揚げ止め」の正体をトンボさんのおかげで知ることができました!←結構前の内容の感想・・・ごめんなさい。
私の実家が横須賀で、友人もほとんどが神奈川県民です。とんぼさんも本当に本当に大変な中、久々の着物ネタ!!!!!!?なんだか嬉しくて泣けてきました←うざくてごめんなさい・・・。
畳紙の奥深い世界(ふむふむ)。楕円形の畳紙!!!!?初めて拝みました!!ありがとうございます。
地震があって、本当にいろいろ変わってしまいました・・・まだまだ落ち着くには先は長いかもしれませんが、これからもいろいろ着物の楽しいことを教えてくださいませ。長々と失礼いたしました。ありがとうございます!!!!!
返信する
畳紙 (otyukun)
2011-03-22 18:12:42
畳紙にも色んな事が考えられるのですね。
目から鱗の驚きです。
窓のフィルムが溶ける可能性があるのも初めて知りました。
材質に寄るとは思いますが、工房で使っている畳紙にも窓が付いているので調べなくてはいけません。
生まれた家の向いがこの畳紙の木版摺をやって居られました。
印刷ではなく手摺です。
京都ならではと思いますが、今でも続けて居られます。

とんぼさんの所でも物資が足らなかったのですね。
暫く訪問出来なかったので失礼しました。
横浜なら荷物が届く筈です。
何でも仰って下されば、送らせて頂きます。
返信する
Unknown (陽花)
2011-03-22 19:11:23
畳紙に入れるとかさばるのですが、
出し入れの事を考えてどの着物も
畳紙に入れています。
防虫剤は金銀をダメにすると聞いてから
入れて無いのですが、フィルムは取る事に
します。
二部式長襦袢の色柄素敵ですね。
返信する
Unknown (とんぼ)
2011-03-23 01:43:43
素緋様
コメントありがとうございます。
いつまでもため息ついていても、何もできない私ですから、
元気でがんばるつもりです。
うざいなんてことはありませんよ。
私も喜んでいただいてうれしいです。
長いこと書き散らしていますから、
自分でもなにをどこに書いたやら…。
わからないことでもありましたら、
遠慮なく質問してください。

ご実家は横須賀ですか!馬堀海岸や横須賀市内に
身内や知人がおります。
元々子供のころ、今より横須賀に近いところにいましたので、
親の知り合いなども多く、懐かしい町です。

地震と原発で、なかなか先が読めませんが、
ようやくお彼岸も終わります。
寒くなるのもこれが最後かなと…。
またぼちぼち書き綴りますので、
よろしくお願いいたします。

返信する
Unknown (とんぼ)
2011-03-23 01:46:46
otyukun様

ツギの記事にも書きましたが、
今の時代は「化学モノ」がいろいろ入って
こちらも賢くならないと…です。

まぁ地震もたいしたものでしたが、ただいま停電に
右往左往、物不足に唖然…の日々です。
ようやくネットスーパーも開店しました。
ナントカなりそうです。
ご心配ありがとうございます。
何かありましたら、お願いしますので!
返信する
Unknown (とんぼ)
2011-03-23 01:50:11
陽花様

余裕があれば、全部いれたいところですが、
箪笥を何棹ももてませんしねぇ。
普段着は粗末な扱いです。

防虫剤について記事書きました。
ピレスロイド系なら大丈夫ですよ。

この二部式じゅばん、写真だといい色なんですが、
実物はなんというか…品がないんです。
ネットの安売りだったのですが、
ちとがっかりしてるんですよ。
返信する
Unknown (古布遊び)
2011-03-24 07:52:30
復活おめでとうございます。
今朝の新聞は水道からヨウ素との見出し。
早く安全な日本が復活してほしいのですが、ナカナカですね(>_<)。

たとう紙のお話興味深く読ませていただきました。
丁度、もう取り換えなくちゃなあと思って古いたとう紙から新しいものに取り換えているところだったのです。
そうかあ窓はダメなんですね。
便利でいいかなあと思っていたのですがフィルムは早速外します。
参考になりました(感謝!)
返信する
Unknown (とんぼ)
2011-03-24 16:44:16
古布遊び様

やっとなんとか気持ちも前向きになってきました。
次から次へといろいろ問題が起きていますが、
逃げられるわけじゃナシ、
みんなで踏みとどまって考えるよりないんですよね。
ほんとの春はまだ遠そうです。
返信する
楕円形のたとう紙 (cacao)
2011-11-05 10:49:38
はじめまして。

たとう紙のサイズを調べているときに偶然おじゃまして、楕円形のたとう紙なるものがあることを知りました。
その後ネットで検索して購入しました。1枚1,890円でした。しなしなと布の様に柔らかくなるまで使ってみたいと思っています。

ありがとうございました。
返信する
こちらこそ (とんぼ)
2011-11-05 11:56:11
cacao様

はじめまして。
コメントありがとうございます。

みつかりましたか!よかったですね。
少々割高ですが、使いやすいと思います。
お知らせいただいて、こちらこそありがとうございました。
返信する

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