
いただきものの中に、巻きの反での白生地と、大島の白生地がありました。
まぁなんとぜーたくな…。
すでに柄のある反物というのは、洋服で言うと「既製品」、ろいろある中から好きな色柄を選ぶわけです。
少し前までは、余裕がある人、あるいは将来に備えて(結婚とか)の買い物では、
白生地を買う人が、今よりいました。地模様のいろいろ、あるいはただの無地ちりめん、
織りのいい緞子など、好きなものを選んで、必要になった時に必要な「染」をする…ですね。
知り合いの方は、御嬢さんの成人式に備えて、まだ七五三かというようなころから、
緞子の素晴らしい白生地を「確保」しておられました。
大切に保管され、10年余の時を経て、美しい若葉のような色無地のお振袖になりました。
これはオーダーより「セミ・オーダー」でしょうね。色柄は「見本」から選びますから。
本格的に「フル・オーダー」というなら、織りの時から「こういう織り柄」…ここまで来るとすごいですが、
染の段階からのオーダーなら、いわゆる「おあつらえ」になりますね。
私は「かわほり」の柄の道中着がほしくて、染めていただきました。
ちょっと前の写真で、写りがあまくてすみません。
染工房「遊」さんだと、お手頃価格ですよー。
さて、この白生地、かなり古いものですので、黄変も汚れもあります。
再練りしてもらわないと、このままでは使えませんね。
写真だと光ってきれいに映ってますが、実は黄色茶色のオンパレードです。
ちりめんの方も全体に汚れた感じがありますので、これも再練りでしょう。
左側は羽尺で「流水にてっせん風の花柄」、右は着尺で駒綸子「観世水に雲取り」。
お手持ちのものを拝見すると「水」に係わるような柄がお好みだったように思います。
白生地で持っていると、好きな色柄に染められる…という楽しみがありますね。
いただいたお着物の数からいっても、本当に着物がお好きで、
こんなふうに白生地で求めておいて、好きな色柄に染めて楽しまれていたのでしょう。
紬の白生地は、ツヤがありますから、色無地にすると平面的でテカリがあって、
ちょっと安っぽく見えてしまうことがあります。せっかくの大島なら、やっぱり柄染めですね。
染大島というのも、よくありますが「染大島ならこんな柄」…というものが多くて…。
シャリ感や独特の風合いで着てあげたいと思うので、どうせならよろけ縞かなんか粋な柄に染めたいですね。
と…またここでモーソーが炸裂するし…。
着物って不思議な魅力がありますね。
何十年か前の反物でも、再練りして真新しい一枚の着物になる、またそこから何十年かの時を経て、
誰かの手にゆだねられ、着られて、繰り回されて…。
この白生地が(いますぐじゃないけど)いずれどんな色柄かに染められて、着られて、譲られて、
繰り回されて…何十年後かに、いったい何になるのでしょう。
人生を旅にたとえることがありますが、さしずめ「物」は、道連れの一つ…。
着物は楽しい道連れとして、その人の旅によりそい、時として別の人の旅の道連れとかわる…。
大島のいいものは100年着られる、と言います。着物でなくなって、ハギレになっても、なら、
手入れさえよければもっと持つかもです。
人が先に逝っても、はぎれになった大島のなかに、誰にもわからない「誰かの時間」がある…
そう思うと、今、手元にある古い着物やハギレの来た道に、どんな人の人生があったのだろうと、
私はいつもそんなことを思うのです。
いずれ染めたい…と、今は願望するのみですが、きっと…縞柄に…。
はい、モーソー爆裂で足元危ないです。気を付けてぇ、またアザが増えまっせぇ。
「再練り」は「再精錬」のことです。
白生地は反物に織りあげたあと、
セリシンや余分なもの、糊を落とすために、
まぁお洗濯みたいなものをします。
再練りは、それをもう一回することで、
元のように白くなります。
ただ、特にシミがあったりすると、薄く残りますし、
あまり濃い時はシミ抜きを部分的にするとか…。
全体を「漂白」したりもあります。
生地の状態によってですね。
再練で検索すると、やってくれるところが出ます。
お値段がねぇピンキリ。
基本だけで3000円から6000円くらいかなぁ。
最近していないので、正確ではありませんが。
昔は、町の呉服屋さんが悉皆やさんと
しっかりつながってましたから、呉服屋さんに持ち込みでしたが、
最近は、悉皆やさんが減って、こちらの細かい要求に
こたえてもらえないこともあったりします。
キレイになりますから、お試しください。
あっても「予定」がないと、ついつい、
そのうちいつか何かに…ですよね。
やろうとすると、どうせ染めるのだから、と、
いきおいこんで「さぁなににしよう」と、
いいものとか後悔しないものとか、それで迷う…。
思いきらないとなかなかできません。
とりあえず、何にするかではなく、染めておこう…
くらいのほうがいいみたいです。
これなら派手になったら羽織にすればいい、とか
帯にもなるような柄…とか、そのあたりで。
紬の白生地は、色をかけるとほんとにテカリます。
なんというか「サテン」ですかね。
だからちょっとパーティー着みたいになっちゃう。
それを生かして訪問着なんかに染める人もいますね。
私はテカリと縞は合わないかなと、それはプロに
相談してみるつもりです。
染大島の柄って、よく茶屋辻とか更紗、風景なんかで
だいたい「鮫」の点描がはいっています。
あれはその「テカリ消し」なのかなぁと思っているのですが、
柄を入れれば、結構消えるのではないかと思ってみたりしています。
また白くなるのでしょうか?
ぜひ、教えてください。
大島を染めるって何がいいのか?
十年以上、時折考えます。
そろそろ染めないと、染めても着る期間が短くなってしまいます。
次に着てくれる人がいるかどうかも分かりませんし。
ただ、染めるどころか買うのは主に古着でお仕立てすらお願いすることが少ないので、考えるのもなかなか難しいです。
多分買ってからだと30~50年は経ってるので、縮緬の方も何にでもとか言ってないで、そろそろ染めないとと思うのですが。