ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

黒い羽織・喪用編

2015-04-15 18:30:43 | 着物・古布

 

写真は、昭和47年のもの。「ご近所の不幸」でのお通夜の装い。

モノクロですが、説明には「紫地の無地綸子」の着物とあります。

この左側には「黒地に白の鮫小紋に黒帯、小物も黒」の写真があります。

 

黒紋付きの羽織は本来慶弔両用すが、黒絵羽が出てきてからは、もっぱら「喪用」が主になってきました。

でも、実際今の時代にお通夜告別式で、黒紋付きの羽織を着た人を見ることは皆無と言っていいですね。

それよりも喪服自体が見られません。さみしーわ…。

喪服については過去に「白喪服」のことから書いていますので、今回は羽織メインのお話で。

 

もう一度おさらいしますと、女性の黒紋付き、正式は三つ紋です。次が背中の一つ紋。

多様に使うには「一つ紋」が使いやすいです。

染抜きが最上、日陰紋が二番目、縫い紋は更に格が下がります。

何度も言うようですが、女性にとって「羽織」の歴史は浅く、

「黒紋付き」は元々が男性の慣習からの、いわば「借り物」的立場。

よって積極的に着るものではなかったわけです。

これも繰り返しになりますが、喪服や色喪服など、すべてそろえる余裕がない時代、

普通の着物に黒紋付き羽織、で略礼装としての役目を果たしていたわけです。

大きく変化する間もなく、そのまま止まりましたから、今もそのままです。

ではそれはどんなもんか…といいますと…入卒と同じ、基本的には「小紋か縞に」です。

こちらは昨日のトップに使った昭和35年の本からの写真です。羽織、長いですね。

下に着ているのは色はわかりませんが地味な小紋。

 

            

 

地模様があるように見えますが、これは写真の具合で、実際のところは説明がないのでわかりません。

織柄、つまり綸子の地模様みたいな柄があっても構わないのですが、

柄が大きかったり、光の当たり具合で地や柄がテカって見えたりするものは、喪には向きません。

鶴や松などの吉祥紋もNG。季節や吉祥に関係のない流水や雲柄などが無難です。

こちらは左が昭和55年、右は57年。20年あいたら、丈がこんなに短くなりました。

右は地模様があるのがわかります。典型的な喪の装いの「縞に黒」、

左は本文では「ジミな小紋」となっていますが、今ならちとハデ目柄?色でみているのでしょうね。

 

 

       

 

ご覧になって気が付かれたかと思いますが、帯の色。

今はそこまで言わなくなって…そう、結局わからなくなると言わなくなる…。

今、いろいろなマナー本を見ても、実にいろいろで「どれがホンマやねん」と、言いたくなります。

ここでは、私の母の時代に教わった「黒紋付き」のこと…。

 

今回は親族ではなく、一般弔問客の立場のことです。

まず、お通夜ですが、何度も書いています「縞に黒羽織」。

縞と言ってもいろいろですが、上の写真のような細いもの、縞は遠くから見ると混ざった色に見えますから、

少し離れたところから見て、全体的に赤く見えないもの。

そして帯ですが、ここがややこしい…母は「お通夜から黒帯締めるなら、小物をジミに」といいました。

実は、上の二枚、グレーの帯ですね。これは「色喪帯」です。帯がグレーで小物は黒、ですね。

でも、トップ写真、はいもう一度出します。47年では、お通夜で「黒帯」です。

小物については書いてないのですが、黒で揃えてあるようです。

 

                

 

母が言った「喪帯(黒)なら、小物はジミ」というのは、例えば帯締め帯揚げをグレーとか、

歳が若ければ濃いグリーンなど…。そして告別式には、同じスタイルでも喪帯に小物も黒。

最初は「色喪帯って、誰しもが作るわけではないから、まぁ臨機応変ということかな」と思っていました。

たぶんそういうことだとは思うのですが、実際には喪帯で黒い小物…で、私もお通夜に行ってます。

これは「葬儀の状況」が、どんどんかわっていったせいかなと思っています。

 

まず、お通夜には全身黒ではいかない…と以前は言われていました。

私が30歳くらいのころは、まだその名残がありました。

お通夜というのは「亡くなったと聞いて、とるものもとりあえず駆けつけました」の装い、というのが理由。

全部そろえて行ったら「準備して待ってたようで、相手に失礼だから」。

元をたどっていけば、いまのように誰しもが電話一本で全国に情報を届けることができなかった時代、

知らせが届くのも時間がかかる、なので遠方の人は本当に「駆けつける」ことになる、

そのときにしっかり用意していたら準備していたようで失礼…というわけですね。

また実は親族だって、お通夜は正装でなくてもいいのです。遺族だって急なことなんですから。

でも、今や地球の裏側にいても、あっというまに情報は伝わります。

迎えるほうだって「あの人、一番遠い北海道から着たのに全身黒だった」なんて文句いいません。

でもこういうことは、「実際がどうか」ではなく「心遣い」という意味ですよね。

ほんとは残してもいい慣習だと私は思うのですが…。

結局は、最近葬儀そのものを自宅でやることはほとんどなくなり、情報はあっという間に伝わる…

そんなことから、今は心遣いよりも、すみやかに進行させることが中心です。 

更に今、親族やよほど親しい間柄でなければ、お通夜と告別式、両方参列することが減っていますね。

自宅でやらないからよけいです。

通夜告別式は必ずしも土日にはなりませんから、そうなると、夕方からのお通夜のみ出席、

という人が多くなります。友人は「お通夜にしか行かれないから告別式の分、黒で行ってもいいのだ」と

そう解釈していましたが、行かれないのはこちらの都合、お通夜、にでるのだから「お通夜」のカッコ、

そうは考えないのかなぁと思っています。

 

着物の場合、喪服を着るのは遺族親族です。

黒羽織を使うのは「一般参列者」、で、洋装和装限らず「通夜は駆けつけましたタイプ」なら、

真っ黒ではなく、どこかに黒、もしくは黒多めでどこかに別の色…。

つまり、お通夜では洋服なら上着は黒でもスカートはグレーとか、全体に暗い色のスーツなど

着物なら、前述のジミな着物に黒紋付、黒帯なら小物は白やグレー、色喪帯なら黒の小物

告別式には、洋服はブラックフォーマル、着物は色喪服があればそれで、

羽織を着るときは、下はジミな着物に黒紋付、このときは黒の帯に小物もすべて黒

 

着物の場合ここまでめんどくさくなくても…元々略喪服なので、全部黒じゃありませんから、

お通夜も告別式も、同じカッコで今の時代はOKだと思っていますし、

こういった本でも、本によって違ったりしつつ、年代が進むと、だんだんそのあたりがゆるくなっています。

私は、洋服で通夜も告別式もまっくろけ…から比べたら、それくらいの緩みは十分許容していいと思います。

黒い服でいつも通りのお化粧で赤いルージュだったり、ピアスだからとヒカリモノつけたりすること、

なんとかしたほうがいいんじゃないかと思いますねぇ。

 

いえいえ、和服の方の問題は、あまりに和装が忘れられたため、こんな姿で行ったら目立つこと、です。

別に目立っても、しきたりに反しているわけではないのですから、何も言われる筋合いはないのですが、

洋装がお通夜も告別式も、みんなそろって全身真っ黒、の中では「黒ではない」というだけで、

「なにあれ」と言われたりしてしまう…。実際「言われている人」を見てしまいました。

その時私は洋服だったのですが、そばにいた和服の方のことをひそひそ「何でお葬式なのに黒じゃないのよ」と。

また呉服屋さんの奥さんが、お客様のお通夜に色喪で行ったら「呉服屋のくせに色物着て」と、

あとで注意されたことがあって困ったそうです。しらないということは、オソロシイことですね。

何も伝わらなかったために、そんなことが起きるんですね。

 

入卒には、ちょっとクラシックに着たいわ…と、黒絵羽姿を見直してくださる方も、

少しずつ増えているような気もしますが、弔事になると…だーれも「お通夜はこれでいいですか」って

聞いてこないし…あぁぁですね。

 

先日の葬儀の時の私…実は「衿芯」忘れまして…くにゃってます。

喪服は誰でも似合う、と申します…が、やはりヒトによりけりかと…。

 

        


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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (女々)
2015-04-16 17:13:39
仕事中の怪我で私の右手は 肩の位置より後ろと言うか エプロンも縛れないので…着付けをお願いしてまで もう自分では 着ないのかなあとか 帯は略式で…とか 半帯を前で…で後ろに…位しかできなくなりました。それでも 手持ちの着物処分できないし…まぁ 人には着せられますけどね。
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Unknown (としこ)
2015-04-17 14:50:45
黒羽織は重宝しています。
義母の遺した色無地を3年ほど前に染め直して一つ紋付の黒羽織に自分で仕立てました。
丈の短かった以前の黒羽織も重宝しましたが、義母の物を自分で仕立て直したということにただの黒羽織以上の価値を見いだして自己満足しています。(和裁は独学です)
親戚の葬儀や法事などにはよく着ますが、それ以外の時は悲しいですが無難に洋服で出席します。
どこに行っても黒羽織は私一人です、て言うか、着物姿が本当にほぼ皆無ですね。配偶者や娘たちも洋服のことが多いです。
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Unknown (桃花)
2015-04-17 15:11:59
勉強になります。
拝読していると 遠い記憶がよみがえってはきますが、自身では経験があまりないので 反芻しなきゃと思います。

結婚してから 実父、義祖父母、義父をみおくりました。
全て、母が 要るものを和ダンスから出してくれ、着付けもしてくれました。

ついでに、洗濯やアイロンあて、、、挙句、和ダンスにしまうところまでしてくれて 今に至ります。

その母も 軽いアルツハイマーになり お薬で 進行は止まっておますが、本人も流石に大好きだった着物は着なくなりました。
次にそんな時には、洋服にするか、(今時は 会館でするから 和装一式を着付け付きでお願い出来るのですって) 借りるかかしらと思っていました。

ここで学んで 日本人なんだもの 自分で出来るようになりたいと思います!

まあ、焦らず 少しずつですけれど、チャレンジしていこうと思います。
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黒紋付の羽織と喪服 (kitty)
2015-04-17 17:10:54
本日 義伯母の35日の法要に参列してきました!
会場は ○○モニー ○○閣 今日は仕事の途中で出席し 帰ってからも仕事の残りを片付けるつもりでしたので
黒のロングスカートに黒のレースの上着で参りました!
結果 お通夜に 遠目には無地に見える細かい染め匹田のグレーの着物に黒の喪帯 帯締め帯揚げは にびいろ その上に黒の一つ紋の長羽織を着用 告別式には五つ紋の喪服に黒の喪帯 帯締め帯揚げも黒(The 喪服コーデ)だったわたくしめに 親戚のおばさまが 今日も 「着物でくると思ったら・・・」と 思いがけないお言葉!!
同じ人が集まる場所に 3回着物で行くと 着物の人と認められる!とは なにかの本で読んだことはありましたが・・・ このおばさまの中では わたくしめは たった2回で 着物の人となっていたようで・・・
着慣れない ボディスーツに身を包んで しんどい思いをするよりも 着慣れた着物で行くほうが わたくしめにとっても 口うるさいおばさまにとっても 普通!なんだと あらためて おもい知らされました!
なにごとも 普通が一番!と変に納得した日でした!!
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Unknown (とんぼ)
2015-04-18 00:21:20
女々様

私も一時期肩が痛んで、着づらかったです。
歳とともに太ったのと体が硬くなったのとで、
帯は、半幅に限らず前で締めて回しています。
帯の仕上がりが気になるときは、羽織でカバーします。
着てください。もったいないですから。
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Unknown (とんぼ)
2015-04-18 00:24:10
としこ様

黒羽織はほんとに見ませんね。
このまえ出した写真の黒絵羽を、
丈を少し延ばして仕立てなおしてもらう予定です。
紋がないので、おしゃれに着たいと思っています。
羽織って便利なものなんですよね。
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Unknown (とんぼ)
2015-04-18 00:25:49
桃花様

着物着ること自体は、特別難しいことではないのですが、
数こなして「コツ」をつかむことが必要です。
まずは普段着から…で、トライしてみてください。
大丈夫、いつからだって始められますから。
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Unknown (とんぼ)
2015-04-18 00:28:50
kitty様

相手にも「慣れさせてしまうこと」ですよね。
私も、身内の葬儀は喪服を着ますので、
当たり前に「帯のとき、てつだうね」なんて、
声かけられたりしてます。
いつもあちらの控室で着替えるので、
みんな気を遣ってくれます。
洗脳しているつもりなんですが、
「私も着よう」がいないのがさみしいです。

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よくわかりました。 (向日葵)
2015-06-10 23:57:10
はじめまして。
最近着付けを習い始めた初心者です。
私は慰霊祭に行くのに着物を着たいと思っていたので、色無地の薄いグレーの着物を買いましたが、帯や帯揚げ帯締めをグレーでいいのか黒にしないとダメなのかがわからなくて検索していました。
写真と共にわかりやすい解説を読んで、納得することが出来ました。
ありがとうございます。
また覗きに来ますね。
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Unknown (とんぼ)
2015-06-12 12:57:11
向日葵様

コメントありがとうございます。
なにかしらお役にたてたら、ほんとにうれしいです。
ぼちぼち綴っております。またお越しください。
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