「メジャーの打法」~ブログ編

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続・投球のバイオメカニクス(18)

2011年09月09日 | 投法

 三角筋肩峰部・棘部。

 石井の水平内・外転トルクのデータを見てみよう。適当だが、外転値から風井の④をグラフに書き込んでみた。

 

  終期に入っても、値は減少するものの、依然として水平外転値を維持している。グラフからはわからないが、水平外転を担う筋肉が棘下筋→三角筋肩峰部へと交替しているはずだ。

 しかし、いまだに、この水平外転が球の加速にいかなる効果があるのか?がよくわからない。最大外旋直後の肢位においては、(肘における関節力を介した)前腕の回転にはほとんど働かないだろう。ただ前方に出て行く上腕にブレーキをかけるだけではないのか? すでに述べたように内転ならわかる。内転は肘を引き下げ、前腕を投球方向に回転させるからだ。肩が内旋するにつれて水平外転が同じ効果を持つようになるが、それを担うのは、肩峰部ではなく、棘部だろう。

 要するに、風井論文の、

この間,非連続型(N・K)では三角筋肩峰部・棘部に強い放電がみられた.これは岡本7)らの上肢の内転の筋電図的解析結果より上肢を前額面内で後方向に力を入れながら引き下げているのがわかる.

で、肩峰部が「後方に力を入れ」、棘部が「引き下げる」と解釈するほかないのだが、それがどう末端加速に結びつくのかがハッキリしないのだ。

 そこで、このように考えてみた。

最大外旋直後における三角筋肩峰部および棘部の収縮は肩内旋に働く。


 最大外旋直後の起始および停止の空間的位置などから考えたのだが、根拠となる資料はない。筋骨格モデルのソフトでもあれば簡単にわかるのだろうが・・・。
 しかし、これなら動作の意図ははっきりする。アーム式が肩甲下筋を肩内旋に使うのに対して、連続型、非連続型が使わないのはフォームや水平外転トルクから察しがつく。(12) それを補うために三角筋を動員する必要があるのだろう。

 肩内旋トルクのデータを見ると、普通のアメリカン投法では、最大外旋前にピークがある。下はFleisig1995だが(ただし、中央がリリース)、だいたいこのような形になる。肩内旋トルク出現の様子を石井のデータと比べていただきたい。


 フォワードスイング終期(加速期)に、三角筋棘部まで動員するのは連続型、非連続型(日本式投法)の大きな特徴で、それを明らかにした風井らの功績は依然として大きい。これが末端加速のメカニズムにどう係わるかを詳らかにできないようでは、日本バイオメカニクスの恥なのだ。

 

 



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