「メジャーの打法」~ブログ編

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続・投球のバイオメカニクス(17)

2011年09月05日 | 投法

 棘下筋。

 風井論文の終期の記述で、

この間,非連続型(N・K)では三角筋肩峰部・棘部に強い放電がみられた.これは岡本7)らの上肢の内転の筋電図的解析結果より上肢を前額面内で後方向に力を入れながら引き下げているのがわかる.

とあり、その「後方に力を入れ」ているのが三角筋肩峰部なのだった。

 そこで、石井の数値との関係を見てみよう。加速期が風井の終期に当たり、そこに現れる肩水平外転値が三角筋肩峰部によるものであれば、同時に三角筋棘部、大円筋、広背筋の収縮があるのだから、肩トルクは内転値のはずだ。ところが石井では、MER直後、外転値になっている。広背筋が収縮しているのに外転値というのでは困る。加速期における外転値をもって「Feltner論文が肩内旋を広背筋に期待するのは無理がある」としたのだが、その論法も根拠を失う。

 JobeのMERと風井の④は重ならないのだろう。③→MER→④の順で起こる。

 

③→④がフォワードスイング中期で、

・・・一方,非連続型(N.K)の三角筋鎖骨部の放電はポーズ②付近で消失し,ポーズ③一④で顕著な放電を示した.また,この期に大胸筋鎖骨部にも同時放電がみられた.・・・非連続型ではポーズ③より遅れて上腕を挙上しながら上腕の水平位内転がなされていることがわかる.

とある。このとき広背筋(大円筋)の収縮はまだ弱い。

ポーズ④で三角筋鎖骨部の放電が減少・消失し,かわって大円筋・上腕三頭筋長頭に顕著な放電がみられた.

となるわけだから。

 したがって、MER直後は風井の中期であり、内旋トルクをもたらすのは三角筋鎖骨部、大胸筋鎖骨部であって、広背筋ではないのだ。だから外転値でいいのだ。

 では、中期においては三角筋肩峰部の収縮はまだないのだから、水平外転トルクをもたらすのは何なのか?ということになる。風井も「上腕の水平位内転がなされている」としているではないか。

 答えは棘下筋だろう。棘下筋は90°外転位にある上腕に対して水平外転に働く(『身体運動の機能解剖』)。

 風井が棘下筋について言及しているのは、前中期の

両型とも棘下筋の放電がフォワードスイング前期,すなわちポーズ②一③に認められた.

および、終期の

連続型(A.K)では棘下筋に放電が認められたが,非連続型(N.K)では認められなかった.連続型にのみ棘下筋に放電が認められたのは前額面内で上腕が前方向に力を入れられているため,上腕が幾分回外方向に力が入れられたものと思われる.


 中期は体幹の回旋を上肢帯および上肢に伝える局面であり、それを担うのは三角筋鎖骨部、大胸筋鎖骨部だ。だから、風井は「水平内転がなされている」としたのだった。しかし同時に、

棘下筋によって水平外転トルクをかけて肘を後方に保ち、終期の腕振りに備える。

ということをやっているらしい。それが合成関節トルクを水平外転値にする。風井の場合、非連続型はそれほどでもないようだが、連続型については④に至るまで収縮があり、石井に根拠を与えている。

連続型・終期の説明は非連続型・中期にも当てはまるのだから、棘下筋の収縮があってもおかしくはない。個人差もあるのだろう。


 しかし、いずれにせよ、棘下筋の役割は中期で終り(連続型は終期に及ぶ)、替わって肩峰部の収縮が起こる。それが「上肢を前額面内で後方向に力を入れながら引き下げ」るのだから、当然、加速期後半に水平外転値をもたらすはずなのだが・・・・・

 (つづく)




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