「メジャーの打法」~ブログ編

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投法(4)

2007年09月07日 | 投法
 広背筋の役割にアメリカ型の本質があるように思う。

 バッティングのアーロンの項で述べたことと類似性がある。つまり、
  • 体幹の捻転のエネルギーを利用する。
  • ムチ動作を使って末端を加速する


という点である。
 広背筋は、上腕の動きに逆方向の力を掛け、肘に投球方向とは逆の力を及ぼすことによって、「ムチ動作」を起こすのである。

 ライアン著「ピッチャーズ・バイブル」の中に、トム・ハウスの言葉で、

上腕の加速に大胸筋、小胸筋、三角筋前部を使い、減速に広背筋、三角筋後部を使うので、加速の筋肉3に対して減速の筋肉2だから、減速の筋肉を余計鍛えねばねばならない


という一節があったように記憶する。大胸筋と広背筋は逆の仕事を担うのである。


 しかし、

アメリカ型の投法とはまったく異なり、大胸筋と広背筋を共に上腕の加速に使う投法が存在する


ということを我々は知っている。「アーム式」である。
 腕を振り回す投げ方で、振り下ろす時に両方の筋肉が同時に収縮する。例えば岡島(BOS)を真似てみれば明らかだろう。


 しかし、「アーム式とはどんな投法なのか」というときに、

広背筋を上腕の加速に使う投法


としたのでは、十分ではない。(普通の日本人の投球である)連続型も広背筋を加速に使うからである。
 例えばこちらの上原(巨人)。腕を引き下げているのが判る。連続型の投手は球を前で離し、肩の内・外転トルクも内転値を示すことをバイオメカニクスのデータは示している。同じ「体幹の捻転投法」でも腕の振りはアメリカ型とはまったく違い、むしろアーム式に近いのである。

 では、普通の投法(連続型)とアーム式の違いはどこにあるのだろうか?

この動画で西崎幸広は連続型、斉藤明夫はアーム式である。両者の投法の違いを明確にしなければ投法を論じたことにならない。


 通常は腕の振り、体の開き、といった現象面の指摘がなされるが、もっと本質的な違い、動作原理(力の使い方)に考えが及ばなくてはならないだろう。



 結論から言うと

アーム式は上体の屈曲を使う投法である


としたい。この場合「屈曲」とは、股関節から前屈するだけでなく、腹筋を使って体を折り曲げるのである。

 連続型は、体幹の捻転によって肩を前方に引き出す。上肢(および球)も前方に加速するが、それに腕振りを「上乗せする」。
 「アーム式」は体幹部分の動作で肩を斜め下方に引き摺り下ろす。それが上腕の前転を誘導するのである。体幹から腕にかけての「しなり」を使うという言い方もできるだろう。

 打撃に喩えるのは語弊があるかも知れないが、連続型が後半に偶力を使うⅠ型、「アーム式」がA型に似ている。


 上体屈曲の例として、サンディー・コーファックスのフォームを載せておく。当然、彼はアーム式ということになる。



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