「メジャーの打法」~ブログ編

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蘭学事始

2009年05月05日 | どうでもいい話

 オースチン伝の抄訳は楽しかった。

 書かれてあること、特にオースチンの言葉は打法を理解する上でとても参考になったし、英語もそれほどむずかしくないので助かった。これがYahooの野球コラム程度ならお手上げだったろう。しかしむずかしい部分もあったので、そんなときは原文を併記した。プロの翻訳家であればそんなことは許されないし、あるいは適当にスルーしなければいけないときもあるかもしれない。たいへんだろうな・・・などと考えているうちに、中学の(たぶん)国語の教科書に載っていた『蘭学事始』を思い出した。『解体新書』を翻訳するときの苦労話を杉田玄白が綴ったもので、ご記憶の方もあると思う。

 そのなかに、

「鼻はフルヘッヘンドしたものである」のフルヘッヘンドがわからず苦労したが、結局それが「うずたかくなる」という意味だとわかった

というエピソードがあった。そんな当たり前のことを理解するのにずいぶん手間がかかったという話なのだが、頭脳明晰ではなかったオレはその「うずたかく」という耳慣れない言葉にひっかかってしまい、「それに何か解剖学的な意味があるのか?」などと思い悩んだために、話のよさがイマイチ伝わってこなかった。せめて、現代語訳の段階で「もり上がる」ぐらいにしてもらえばよかったのかもしれないが、玄白が使った「うずたかく」が使えるのなら使うべきなのだろう。

 ところが、そのフルヘッヘンドにはちょっと気になる裏話があるようなのだ。ウィキペディアによると、

『ターヘルアナトミア』の「鼻」のところにフルヘッヘンドはないが、「乳」のところにはある。
「盛り上がった山形」という言葉の意味からして、「乳」についての記述であることに間違いないだろう

とある。なぜ「乳」が「鼻」なったかについては、

  1. 説明をわかりやすくするための、杉田玄白による創作。
  2. 『解体新書』には『ターヘル・アナトミア』以外にも数冊の蘭書が参考資料として使われていたので、どれかにフルヘッヘンドの単語があった。
  3. 乳との記憶違い。
  4. 「乳」の形状について真剣に議論したというのが、自分にとって恥ずかしいので、あえて「乳」を「鼻」と置き換えた。
  5. 性的な部分についての話を記述するのは、一般向けの啓蒙書では不適切であるので、あえて「乳」を「鼻」と置き換えた。

などの可能性があるとしている。

 また、こちらには

『ターヘル・アナトミア』には、 フォールオイトステーケンデ(vooruitsteekende・突出している)という語が用いられています

とある。どうせひとつ嘘をつくなら、「フォールオイトステーケンデという言葉の意味がわからなかった」ということにしてくれればよかったかもしれない。

玄白: つまり、顔の真ん中に出っ張ってるのが「鼻」だってわけだ。
淳庵: なーんだ、アホらしい。苦労かけさせやがって・・・。
一同: (笑)

といったノリなら、ボンクラな中坊にも話がストレートに伝わったと思うのだが・・・。

ちなみに、「うずたかくなった」で、「胸の前にだらしなく垂れ下がった」としなくていいのは、これが解剖学の教科書だからだ。検体は仰向けに寝かされている。



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