快読日記

日々の読書記録

「避難弱者」相川祐里奈

2015年07月02日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《☆☆ 6/25読了 東洋経済新報社 2013年刊 【東日本大震災 福島 東京電力福島第一原発 老人福祉】 あいかわ・ゆりな(1986~)》

2011年3月11日、福島第一原発周辺の高齢者福祉施設では何が起き、どう対応したのか、当事者(16施設・20数名)インタビューをまとめたものを読みました。

自身も家や家族を失った被災者である職員たちが、必死に利用者を守ろうとする姿には「仕事って、ここまでの責務を負ってやるものか…」とショックを受けますが、自治体の災害対策がまともに機能していれば彼らがここまで自分たちを犠牲にしなくても済んだんです。
避難して介護を続けようとする彼らの障害となっているのはどう考えても行政としか思えない場面が多く、「いや、そもそもあてにする方が間違ってるのか」とさえ思ってしまう現状。
もちろん、しっかりと住民を助けた自治体だってたくさんあるだろうし、あの緊急事態に役所を責めるのは酷だという意見もあるかもしれない。
しかし、道路が寸断され流通も止まり、何より放射線の恐怖の中、預けている家族もおいそれと引き取りに行けない状況で、寝たきりや認知症の年寄りを預かるって相当なことですよね、そこに「総理大臣の命令です。とにかく避難してください」としか言えない行政の無力さ。

震災の話からそれちゃいますが、この本を読んでつくづく考えたのは「長生きしたところでどうなるんだ」ということです。
別に特別贅沢な暮らしをしたいわけではない。
のんびりと不安なく毎日にこにこと生きていくことは不可能なもんでしょうか。
家族と離れ、とくに誰かの役に立つのでもないのに、何から何まで他人の世話になって生きるつらさや虚しさ。
平時はともかく、災害や緊急事態にはお荷物になって、若い人を苦しめるなんて。
自分なら、もう生きていたくないとさえ思うかもしれない。
子供の頃に戦争を体験し、その後仕事をして家族を持ち、子を育て、たとえ小さくても国を繁栄させた歯車の一つとなって働いて、その結果がこれだとしたら、「長生きしてどうする」という気になりませんか。

介護する人、受ける人、どちらにとってもつらい話で、「苛政は虎よりも猛なり」というのはこういうことだと痛感しました。
硬直し、優先順位が狂っちゃった行政と、そういうシステムを是とする政治は怖い、地震や放射線といい勝負です。

/「避難弱者」相川祐里奈