快読日記

日々の読書記録

読了『脳が壊れた』鈴木大介

2016年09月26日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
9月21日(水)

図書館で『脳が壊れた』(鈴木大介/新潮新書)を見つけ、あ!『ヤクザと原発』の人だ!と手に取り、表紙裏に貼られた帯を見て、脳梗塞になったのか!と驚いて借り出し、帰宅してから人違いに気づいた。
『ヤクザ』は「鈴木智彦」だった。

それでもこれも何かの縁、と読み始めると、これがただの脳梗塞体験記ではなくて、たった二晩で読み終えた。わたしにしては珍しいことだ。

まず、後遺症の症状が手に取るようにわかる。
こういう闘病記って、どうよくなったかはせっせと書いても、症状をナマの感覚で伝えることは少ない。
目つきが悪くなってしまうのはこういうわけだ、小銭を数えることができない感覚はこうだ、感情をうまくコントロールできないのはこんなかんじだ、と比喩もうまく使いながら上手に説明してくれる。

そして、その「障害」が、実は筆者がそれまで取材してきたいわゆる「底辺に生きる人たち」の多くに見られる症状で、「ああ、彼らが苦しんでたのはこれか」と気づくあたりがこの作品のキモだと思う。

最後に、病気を引き起こす原因が自分にあった、と振り返る場面、「運命はその人の性格の中にある」という言葉を思い出した。