恩

２年前の１２月６日、ノースウエストの機内からテニアンの島影を端から端まで、
瞬きをせずに見て、お別れを告げ、心の中に封印をしました。

チャンスをもらってアメリカへ行きました。
もうすぐという直前で、理不尽な、でも、もっともな理由でチャンスが消えました。
行き場のなくなった私たちを助けてくれたのは、
善良なアメリカ人たちでした。
私たちに親切にしても何のメリットもないのに、同情して涙を流してくれた方もいました。
キャプテンM夫妻、そしてD家とそのファミリー。
お金のない私たちに、写真のお礼という名のドネーションをしてくれて、
どんなに嬉しかったか・・・。

その後、またチャンスをいただきました。
トルコへ行きました。
もうすぐ、というところで世界不況が始まり、そしてタイの治安が悪くなり、
予定されていた仕事がなくなってしまいました。
大家さんの家を出るとき、
トルコ人のお父さんが英語で書いた紙を読み上げながら、
涙を溜めて発した第一声は「I'm sorry」
とにかく親切にしてくれたトルコの人たち。
忘れません。

そして、旦那ちゃんが市民権を持っているパラグアイ。
呼ばれて行ったのに、まったく動かず、
苛立ちを抑えながら、他のチャンスを手にするも・・・。
そこで、面倒を見てくれたのが、
日系パラグアイ人の方々。
異国で苦労をすることがどんなに大変か身に染みているのか、
私の理解を超えるほど親切でした。
奉仕という精神なのでしょうか。

果たして、自分の身に置き換えて、私たちが受けた恩の
何分の一でも、他人に親切にすることができるでしょうか？
もしかして、彼らは、彼らの宗教としてそういった大きな心を持っているのでしょうか？
たまに不安になるときがあります。
ちっぽけな自分がいるとき、これから先、運が良ければ生きているであろう数十年間で、恩を返すことができるのでしょうか？と。