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21:第5章 産出量と雇用の決定要因としての期待ー雇用量は期待で決まる!

2021年06月16日 | 一般理論を読む
 第二の問題、「経済分析において果たす期待の役割 」についての論述である。
 ただし、詳しくは「第12章 長期期待の状態」を待たねばならない。

期待と均衡の根本的な違い

 均衡は事後的に訪れるものだが、雇用量は事前に「期待」によって決まる。これは日々投資量を決定している資本家には自明のことだが、世間知らずで事後的にしか経済事象が見えない経済学者にはどうしても理解できないことらしい。期待はケインズ一般理論読解の鍵となる概念である。

 ケインズは有効需要量を決定する総需要関数は期待売上収入=f(雇用量)としている。期待売上収入=f(雇用量)という式と雇用量=f(期待売上収入)という式は同じことだから雇用量を決定するのは「期待」である。

ケインズは期待には短期と長期があるという

 短期期待とは、日々の売上に関する期待であり、長期期待は設備投資から将来どれくらいの収益をあげられるかという期待である。この章の段階ではこう理解しておいて間違いない。この期待に基づいて雇用量が決定される。

 この章では、ここまでの一般理論の議論を援用しては、長期期待の形成についてこれ以上論述することはできないので、雇用量の決定要因として期待は重要だということにとどまる。

 古典派においては需要と供給が事後的に調整されるのに対して、使用費用が企業者の行動に影響を及ぼしている以上、つまり資本設備が巨大化してくると事後的にではなく期待に基づいて行動するしかないだろう、というわけである。「時点」問題である。後に使用費用の概念がいかに重要かが理解されるであろう。しかも後に見るように長期期待は必ずしも安定しておらず些細なことで変動するのである。

 事後的に見れば、賃金も含めて全ての価格は需給が均衡する(している)最適価格ということになる。存在するものは合理的なのだよ。

 「使用費用が企業者の行動に影響を及ぼしている」という意味は、次章以下で明らかにされるが、読み解くには相当の忍耐が必要とされる。第2篇が終われば急な上り坂は終わり花々が咲き乱れる高原の散歩道となる。ここが踏ん張りどころだ。

 ただし、経済は常に均衡状態にあると思っている人は、頭の中の別のお花畑を見ることになる。

第5章結語
「しかもやがて第12章――そこでは長期期待についてもっと詳細に論じるつもりである――で見るように長期期待は突発的な改訂を受けやすい。このように現行の長期期待という要因は、たとえ近似のつもりでも、それなしですませたり、あるいは実現した結果で代用したりしてはならないのである。」


 

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