個人の貯蓄打為は言うなれば今日は夕食をとらないと決意することである by ケインズ 本章冒頭の文章だが、この比喩は秀逸だ。明日二回夕食を摂るわけにはいかない。今日摂らなかった夕食の分は永遠に失われた消費である。これはこの二年間のコロナ禍で散々経験したことだ。貯蓄は現在の消費需要を将来の消費需要に振り替えることではない。それはこのような需要を全体として減少させてしまうことなのだ。&nbs . . . 本文を読む
貨幣利子率が最強になるとき 第4章末尾で指摘しておいた「一般理論の中でも後に詳述されるので、ここではこれ以上触れないが、貨幣が様々な財やサービスの一般的等価物である、ということは一般理論の重要な前提となっている」の解明である。全ての商品にはその商品固有の利子率がある。しかし貨幣利子率だけが資本の限界効率の下限となるのはなぜだろうか?ここから利子率の本質について流動性選好とは違うアプローチから迫って . . . 本文を読む
表題の問いの正解は「できることもある」である。21世紀にもなって金価格が高騰しているのをみると難しいなあと思う。ケインズもそう思っていたに違いない。この章のここまでの節の結論は面白いので全文掲げる。こうして、貨幣-利子率が上昇しても貨幣の生産量を刺激することはなく(貨幣の生産は完全に非弾力的だと想定されている)、その上昇は生産が弾力的なあらゆる生産物の産出量を抑止する。貨幣-利子率は他のすべての . . . 本文を読む
この本は「雇用・利子および貨幣の一般理論」である。雇用量の決定要因を探るために書かれた。つまり「第18章 雇用の一般理論」とは一般理論そのものであり、この章は、経済体系の操作可能性の探求である。と同時にケインズ自身の手になる一般理論の要約でもある。その要約を紹介する前にケインズ一般理論の「理論」とはどのようなものか自ら語っている部分を紹介する。経済体系の決定因を所与の要因と独立変数との二群に分類 . . . 本文を読む
賃金が下方硬直的であることは、経済体系の安定性のための必須条件である 雇用の一般理論の次に出てくるのは経済の固有安定性の話である。我々の経済が、おおむね安定しているのはなぜか。貨幣よりも銃が幅を利かせ、一般的等価物が白い粉になり、公共インフラはとうに消滅してしまっている。そういう夜警国家ならぬ夜盗国家のような、マッドマックスの世界のような経済もあるにはあるが。なかなかそうはならないのはどうしてだろ . . . 本文を読む
賃金と物価に関係はあるのか??? 第5編 貨幣賃金と物価に入る。 第5編は、労働組合関係者にもっと読まれてしかるべき箇所である。賃金と物価の関係について一般理論は何を主張しているのだろうか。労働組合の言う「所得政策」や「逆所得政策」は理論的に成り立つのだろうか?そもそも問題の立て方が間違っているのだろうか? 実は、賃金と物価はケインズにとって周辺的な問題であった。周辺的というより、あるものの二つの . . . 本文を読む
口絵のように賃金が上がれば物価が上がり、物価が上がれば賃金も上がる。この相関関係に間違いはない。それは有効需要の水準が完全雇用に近づきつつあるか、それを越しているからだ。問題は有効需要なのである。では・・・賃金が下がると価格が下がり消費は刺激されるのか 見出しの裏には、賃金が高いから(商品の価格が高いから)消費が伸びない(景気がよくならない)という考えがある。形を変えて国際競争力が低下するという . . . 本文を読む
第19章は、不況の原因は賃金の下方硬直性にある、といういまだに見聞きする議論への批判であった。不況の原因どころか、賃金の下方硬直性は経済の安定性にとって必須の条件であるいう話だった。では、そもそも失業の原因はどこにあるのだろうか?これまで長々とピグー教授の失業理論を批判してきたが、それはなにも彼が他の古典派経済学者以上に批判を受けてしかるべきだからではなく、彼の試みが、私の知るかぎり、古典派の失 . . . 本文を読む
産出量の弾力性を検討する 心が折れること必定の章である。ケインズすら「代数を好まない(それが当たり前)人は本章の第一節を読み飛ばしても失うところはほとんどないであろう。」などと嫌味なことを言っている。裏では「僕は得意なんだけど…」と言っている。ご安心ください。ケインズの代数部分、数式の展開を、経済学説史上もっとも簡明に文章にしておきました。ただ、簡明な分、失われることもあるので、原文 . . . 本文を読む
雇用関数の非対称性というと分かりにくく、とっつきにくいが・・・要は労働者はX円以下の仕事に就かないことはありうるが、X円以下で働こうとしても仕事があるとは限らない、という立場に置かれている。ということだ。これが最低賃金規制の重要性である。賃金・物価・利潤 の関係は、あくまで需要⇒賃金・物価・利潤である ケインズの所論をまとめると 完全雇用下では労働の追加に対する労働の報酬は高 . . . 本文を読む