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『Q&A共産主義と自由―「資本論」を導きに』に込めた思いについて

2024年07月12日 13時29分21秒 | 一言
志位議長の会見から
 日本共産党の志位和夫議長が10日、国会内で行った『Q&A共産主義と自由」―「資本論」を導きに』(7月12日発売)出版発表記者会見で語った、著書についての思いと記者団との一問一答(要旨)は以下の通りです。

「共産主義と自由」についての真実を伝えたい

 冒頭に、この本に込めた思いについて、3点ほどのべさせていただきたいと思います。

 第一は、「共産主義と自由」についての真実を伝えたいということです。

 世界の資本主義の現状を見ますと、貧富の格差が目もくらむような勢いで拡大している、気候危機がきわめて深刻になっているなど、さまざまな矛盾が噴き出しています。そうしたもとで、「資本主義というシステムを続けていいのか」という問いかけが、いろいろな形で起こっており、社会主義への新たな関心や期待も広がっているという状況があります。一方で、社会主義・共産主義というと「自由がないのでは」という声も少なくないということもまた事実だと思います。

 この本では、この問題、すなわち「共産主義と自由」の問題について、そもそも科学的社会主義の礎をつくったマルクス、エンゲルスがどう考えていたか、このそもそも論に立ち返って明らかにしたいと考えました。そのさい、私が、最大の導きとしたのは、マルクスの畢生(ひっせい)の大著『資本論』、それを準備する過程で執筆された『資本論草稿集』でした。これらのなかでマルクスは、社会主義・共産主義の最大の特徴として「人間の自由」、「人間の自由で全面的な発展」ということを繰り返し、さまざまな表現で語っています。そして、そのためには「自由に処分できる時間」―人間があらゆる外的な義務から解放されてまったく自由に使える時間を、万人が十分にもつことが最大の条件になるということが語られています。私たちは、ここにマルクスの社会主義・共産主義論の一番の要があると考えています。

 ところが旧ソ連などでは、マルクスのこの肝心の思想が、未来社会論からまったく消し去られ、封印され、踏みにじられてきました。それは、マルクスの未来社会論を、物質的生産の分野の、しかも生産物の分配のあり方の問題にしてしまい、「人類の未来史からそのもっとも輝かしい部分を切り捨てる、きわめて大きな誤り」(不破哲三『「ゴータ綱領」批判の読み方』、『古典研究 マルクス未来社会論』所収、77~78ページ)でした。私は、この理論的な誤りは、旧ソ連において社会主義とは無縁の抑圧体制がつくられ崩壊にいたったことと、無縁ではないと思います。

 私たち日本共産党の綱領路線は、かつての国際的に「定説」とされたこうした社会主義論を大胆に克服し、マルクスの未来社会論の一番の輝き―「人間の自由」が開花し、「人間の自由で全面的な発展」を可能にする社会―に光をあて、マルクスの未来社会論の本来の輝きを発掘し、発展させたものとなっています。この本もそうした努力の一つの産物としてお読みいただければと思います。

「人間らしく生きたい」と願うすべての方々に、マルクスのメッセージを届けたい

 第二に、より広く言いますと、いまの日本社会のなかで、「人間らしく生きたい」「自由に生きたい」「自身を成長させたい」と願っているすべての方々に、マルクスが語ったメッセージを届けたい。これがこの本に込めた私の思いです。

 マルクスは『資本論』を作成していく過程で、資本主義的な搾取の秘密を明らかにしていくわけですが、そのなかでマルクスは、「それでは搾取によって奪われているものは何だろうか」ということを考え抜いていくわけです。彼の結論は、人間が搾取によって奪われているのは「モノ」や「カネ」だけではない、「自由に処分できる時間」―「自由な時間」が奪われている。マルクスは『資本論草稿集』のなかで、「資本家は自由な時間、すなわち文明を、横領する」という言葉を使って、そのことを告発しています。

 いま一つ、マルクスが考察したのは、「人間にとっての真の富とは何か」という問題です。もちろん富と言った場合に、物質的な富、これは人間らしい生活の基礎であり土台であり、それなくしてはいかなる「自由」も語ることはできません。同時に、マルクスは、それはあくまでも基礎であり土台であって、そのうえに、万人が「自由に処分できる時間」―「自由な時間」を持ってこそ、人間の「自由で全面的な発展」を実現することができると考えました。マルクスは「時間は人間の発達の場である」(『賃金、価格および利潤』)という有名な言葉を残していますが、『資本論草稿集』のなかでは「『自由に処分できる時間』こそ、人間と社会にとっての『真の富』である」ということがずばり語られています。搾取によって奪われている「自由な時間」を取り戻し、拡大し、万人が「自由な時間」を十分に持つことによって、自分自身の能力を「自由に全面的に発展」させることができる社会をつくろう。これこそが社会主義・共産主義だ。これがマルクスが『資本論』や『草稿集』でのべているメッセージです。

 このマルクスのメッセージは、「自由な時間」を奪われている、現代日本の多くの人々の心に痛切に響くのではないかと思います。日本の労働の現場では、いまなお「過労死」が大問題となっており、日本の労働者の労働時間はヨーロッパの主要国に比べて年間400~600時間も長い。多くの学生のみなさんからは、異常に高い学費を払わなければならず、深夜バイトや徹夜バイトに追われ、勉強する時間がないことが最大の悩みだということが訴えられます。先日、「今年の母の日にもっともほしいものは?」という世論調査(家事代行サービス「キッズライン」調査)が0~17歳の子を持つ母親を対象に行われましたが、「自分だけの時間」が35・5%で最多となりました。30~40代の働く女性の仕事と家事の時間は合計で10時間を超えます。日本人女性の平均睡眠時間は7時間6分で世界一短いといわれています。(NHK「国民生活時間調査」)

 多くの日本国民にとって、「自由な時間」がほしいというのは痛切な思いだと思います。そういう方々にとって、マルクスの「自由に処分できる時間」―「自由な時間」こそ人間と社会にとっての「真の富」だという言葉は深く響くのではないでしょうか。

日本共産党の新たな躍進の力にしていきたい
 第三は、日本共産党の新たな躍進の力にしていきたいということです。

 日本共産党は、暮らしと経済、平和と外交、人権とジェンダーなど、あらゆる問題で、国民の利益にたった、現実的で抜本的な政策をもっており、それを語るならば共感はどんどん広がると思います。裏金事件の追及などでも、「しんぶん赤旗」と日本共産党の果たしている役割は、抜群のものがあると思います。ただ、「日本共産党はいいことを言っているし、いいことをやっているけれども、共産党という名前が…」という声が多く聞かれることも事実でしょう。

 そういう方々に、日本共産党の目指す未来社会―社会主義・共産主義の本当の魅力を攻勢的に語って、広げて、「日本共産党はこういう理想を掲げている党だからこそ、目の前の国民のさまざまな苦難にこたえた活動もできる」ということを広く明らかにしていくことが大事だと思っています。この仕事を戦略的な課題として位置づけて取り組んでこそ、日本共産党の新しい躍進、そして「強く大きな党」をつくる道が開かれると考え、新たな努力を始めているところです。

 「共産主義と自由」を語り、日本と世界の前途を語り合う大運動を起こしていきたいと考えています。この本が広く読まれることを願ってやみません。

記者団との一問一答から(要旨)
メディアの問題をどう考えるか?
 ――テレビとかラジオの統制をしているのは社会主義とか共産主義というイメージがあったんですけれども、いま資本主義の国では富裕層・大富豪がテレビ局を買収している。このメディアの問題をどういうふうにお考えなのですか。

 志位 メディアについては、この本のなかでも触れている部分があります(124ページ)。「自由と民主主義の諸制度」を将来にわたって継承し、発展させるというのが日本共産党の確固たる立場ですが、たとえば日本の現実を見た場合に、憲法では言論・出版・報道の自由が保障されています。それでは巨大メディアの現状はどうなっているでしょうか。巨大メディアは「権力の監視役」という本来の役割を果たしているでしょうか。多くの場合にはそうは言えないという現状があることは否定できないでしょう。その根本には巨大メディアの多くが財界・大企業との強い結びつきのもとに置かれている、あるいはアメリカの影響下に置かれている、という問題があることを指摘しなければなりません。

 こういう「外的な制約」をとりのぞくことは、資本主義のもとでの民主的改革においても急務となっていますが、社会主義に進むならば、メディアはそうした「外的な制約」から自由になり、言論・出版・報道の自由という点でも、はるかに豊かなものになるというのが、私たちの展望です。

若者との対話を重視している理由は?
 ――最近の議長の動きを見ていると、若者との対話を重視しているのかなと思います。どういう考えがあって若い人と対話をしているんですか。

 志位 若い方々と私たちが心を開いて対話し、若い方々の願いを生きた形でつかんで、それにこたえた取り組みをやることは、日本の社会を良くするうえでも、日本共産党の未来を開くうえでも、決定的に大切なことだと考えています。

 この本は、4月27日に民青同盟のみなさんが主催して行われた「学生オンラインゼミ」での講演を収録したものですが、そのさい、ある大学で、立看板をつくって「ゼミ」の宣伝をしたところ、その大学から10人以上の方が、日本共産党の本部まで来てくれて、熱心に聞いてくれ、感想文を読みましたら「よくわかりました」、「共産主義のイメージが百八十度変わりました」というような真剣な感想を寄せてくれました。

 若い方々のなかで、学費の問題、働き方の問題、気候危機の問題、ジェンダーの問題など、さまざまな問題で自民党政治に対する批判と、「変えたい」という思いが広がっていることを感じますが、さらにもっと根本の「資本主義というシステムのままでいいのか」という問いかけがずいぶん広がっているという感じがするんです。そういう若い方々に、人類は、資本主義という矛盾と苦しみがたくさんある社会を乗り越えて先に進んでいく力がある、という未来への希望を伝えたいという思いがとても強いです。

内外の研究者との意見交換をすすめたい
 ――4月の「オンラインゼミ」の時に拝見し、すごく分かりやすくお話をされていて、それが本になったのだなと。共産党だけでなくいろいろな学者と連携できると思うのですが、どうお考えですか。

 志位 個々に、どなたと、ということは控えますが、私たちとしては、多くの研究者のみなさんと自由な意見交換を進めていきたいと願っています。国内的にもやっていきたいと思いますが、「共産主義と自由」というテーマは、日本国内の問題にとどまらず、国際的にも重要なテーマだと思いますので、国際的にもいろいろな方々との意見交換をやっていきたいと考えています。

 それから4月27日の講演などを準備する過程で、日本での先行する研究者による先駆的業績があることについて知り、たいへん多くを学ばされました。日本での理論的探究の蓄積や到達点もしっかり踏まえて、私たちの理論を発展させていきたいと強く感じているところです。

「自由な時間」を持つだけでなく、「享受する」ことの重要性
 ――今回、この本で、時間に着目したのは興味深いと思っています。ジョージ・オーウェルの『パリ・ロンドンどん底生活』という本で、貧しい人たちは、休日、自由な時間があっても、有意義な使い方ができないということを書いています。時間ができても、のんべんだらりと過ごしている人たちも多いのでは。どう考えていますか。

 志位 マルクスを読んでいきますと、「自由に処分できる時間」を持つことの重要性とともに、それを「享受する」ことの重要性も言及しています。人間は労働によって、物質的な富をつくり、さらに「自由な時間」をつくりだしていくわけですが、そうした活動をつうじて、それらを「享受する」――人間的に活用する能力、有意義に使っていく能力も――もちろんそのなかには豊かな余暇ということも含まれると思いますが――、発展させていく、これがマルクスの大きな展望だと言えると思います。


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