阪神大震災で、借金まみれの工場や家がつぶれ、被災した青年雅也。当日、父の保険金目当てに来ていた叔父が建物の下敷きで倒れていた。雅也はその叔父の顔に瓦をふりおとした。そして、それを見ていた女がいた。女は新海美冬と名乗り、そして二人は東京に行き、美冬は事業家として成功する。その陰にはいつも雅也の姿があり、そして、美冬の周りできな臭い事件がたびたび起こり、刑事の加藤は美冬を疑い始める。謎の中心は美冬の過去。阪神大震災の前の美冬については何もわからない。 美冬の周りの男はどんどん失墜し、その黒子役となる雅也。「二人が幸せになる為には、こうするしか手はないんや」と諭す美冬は魔性の女。美冬の周りで起きる数々の事件は、解決の糸口を見せないままストーリーは進む。それを追う刑事と、徐々に異変に気付く主人公。どうしても、宮部みゆきの「火車」を思い出す。ラストの暗さについていける読者はいるのか。 幻夜 (集英社文庫 (ひ15-7))