意思による楽観のための読書日記

運命の人(2) 山崎豊子 ****

弓成亮太に逮捕状がでた。国家公務員の機密情報漏洩が嫌疑である。新聞記者が取材を通して国家の秘密を知りうる立場の人間にアプローチして秘密を漏洩する行為を幇助した罪である。外務省審議官の事務官であった三木昭子も出頭し逮捕されていた。

尋問に応じた昭子は弓成に情報を漏らしたことを自白していた。出頭する前日夜、弓成は昭子に電話、情報は外務省廊下で手渡したことにしよう、と口裏合わせを申し合わせていたが、秋子は男女の関係であったこと、弓成から要請されて情報を手渡したことを自白していた。弓成は新聞社には言論の自由を侵害する国家の横暴である、情報元である三木昭子とは男女の関係はない、と言い張っていた。

裁判になり、検察側から公訴事実が明らかにされるに及んで新聞局は驚いた。被告人弓成は被告人三木昭子を情を通じ国家機密を聞き出した、と記述されていたからである。新聞記者嫌いの佐橋首相から徹底的に弓成を追求するようにとの要請が入っていることは間違いないと感じる新聞側であったが、沖縄返還に伴う国家による疑惑隠しである、というマスコミ側の主張に対し、男女問題からでた機密漏洩、とした検察側の悪意を感じる新聞社首脳たちであった。

マスコミはこうしたネタに飛びついた。連日の取材に弓成の妻由里子は困り果てていたが、子供たちに取材の手がのびて新たな被害者にならないよう手を尽くすのであった。弓成は妻のこうした苦労に気が回らないのか、イライラする毎日であった。子供たちのためには由里子は離婚などはしたくなかったが、逗子の実家の両親はいつでも帰っておいでと別居を勧めた。

警察は弓成の取り調べで、現場検証として昭子と関係を持ったホテルの現場検証をし、腰縄を付けたまま弓成を連れ回した。弓成のプライドはずたずたにされた。昭子は夫と離婚、植毛しない失意のどん底であった。裁判が始まってもまともな証言をする気力もなく、弁護士に支えられて初公判は乗り切ったがそれ以降は出廷もできなかった。外務省幹部の証言者は外務機密はいかなる性格のものであれ外国との交渉事項を含むものであり、国家機密である、そのような情報を漏洩することは国家公務員の職務を定めた国家公務員法違反であると主張した。

運命の人(二)
読書日記 ブログランキングへ

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「読書」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事