第二次世界大戦中の昭和20年4月、国産の豪華客船弥勒丸は安導券を有した緑十字船として艤装、シンガポールから北上していた。本来沈むはずのない弥勒丸は途中の台湾沖で米軍潜水艦の魚雷により撃沈。 それから数十年後、台湾人・宋英明に弥勒丸引き上げの話を持ちかけられた町金融の社長・軽部順一。かつての恋人だった新聞記者・久光律子と共に話の裏付けを取り始める現在のストーリーがある。同時に並行して語られるのが、ナホトカで国際赤十字の依頼による連合国軍捕虜宛ての救援物資を積み込む弥勒丸から始まる昭和20年のストーリー。物語は阿波丸事件を元に組み立てられるが、太平洋戦争における大日本帝国陸軍と海軍の思惑を下士官の視点から描写、米海軍の思惑も描いている。また、現代においては恋人に捨てられて数年後に再会、行動を共にすることで、戦時の女性と現代の女性の違いを描いている。浅田次郎なのでうまくて当たり前だが、読んでいて終わらないでほしい、と思える面白さである。浅田ファンならずともお勧め。
シェエラザード〈上〉 (講談社文庫)
シェエラザード〈下〉 (講談社文庫)
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