意思による楽観のための読書日記

ハルビン・カフェ 打海文三 ****

記憶喪失の自分が、見知らぬ街に放り出されて、人と話すうちに徐々に記憶を取り戻すが、その記憶はとんでもない物語だった、というような近未来小説。場所は福井県の仮想の都市、海市、登場人物は多いが最後まで中心的な役割を果たすのは布施隆三。海市は中国、朝鮮、ロシアからの移民が大勢押し寄せた結果、日本人よりも他の民族の方がマジョリティを占め、日本の警察の勢力が十分にその威力を発揮でききれなくなってしまった街として描かれる。警官はマフィアに殺され、その結果取り締まりを強化しても、さらにマフィアにやられてしまう。そして、「P」と呼ばれる警察内部での仮想反抗組織が立ち上がり、警察内部とマフィア両方に対し牙をむく。そしてその「P」の内部に警察に通報するスパイの存在が明らかになる。

こうしたシナリオは徐々に、登場人物の履歴や記憶、告発などの様々な形で読者に示される。読者は徐々に全体像を組み立てることができる。作者は全貌を整えた上で、どのように読者に示すかを考えているはずであるが、この小説を読んでいる限り、ミステリーでもSFでもないジャンルの新しいタイプを感じる。

感想としては、あまりに多くの登場人物が死にすぎて、登場する女は必ず男と関係する、そんなものと言えばそうなのだが、読んだあとの気分は良くはない。しかし、それでは良くない小説だったかと言われると、著者の次の本を読んでみたいと思う、不思議な作家だ。警察内部のキャリアとノンキャリアの確執、警察の内部問題隠蔽体質など、黒川博行の作品を思い浮かべるが、死者の数は大沢在昌ばりである。もう少し、打海文三、読んでみるか。
ハルビン・カフェ (角川文庫)

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