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意思による楽観のための読書日記

絶滅の人類史 更科功 ***

50年ほども前の学生時代に習った人類史では、100万年ほど前に現れたのが猿人で、その後原人、旧人、新人、現代人と遷移していったように思う。ジャワ原人がピテカントロプス・エレクトス、北京原人がシナントロプス・ペキネンシス、南アフリカで発見されたのが猿人のアウストラロピテクス。新人がクロマニヨン人で、別種にネアンデルタール人がいた、というストーリーだったはず。

本書によれば、発掘された人骨化石において、犬歯と頭蓋骨にあいた脊椎に向けての穴の位置から、食料と直立歩行が確認できるので、それで人類と類人猿の区別をすることで、約700万年前に現れたサヘラントロプス・チャデンシスが最古の人類だという。アウストラリピテクス・アナメンシスは400万年前の人類、アウストラロピテクスの属は各種が現れ、約120万年前まで生き延びたがその時点で絶滅。現生人類はホモ属であり、約200万年前に現れたホモ・ハビリスが現在では最古の化石である。その後のホモ・エレクツスは180万年前から10万年前まで生き延びたがそこで滅びている。約70万年前から20万年前まで存在していたのが、ホモ・ハイデルベルゲンシス。15万年ほど前にホモ・フロレシエンシス、そして、約25万年前にホモ・ネアンデルターレンシスが現れ、現生人類であるホモ・サピエンスとも共存したが、ネアンデルターレンシスは数万年前には絶滅し、現在生き残っているのはたったの一種属、ホモ・サピエンスである。つまり、多くの人類の種族が現れては絶滅を繰り返し、15-10万年ほども前にアフリカ大陸を出た種である現生人類だけが生き延びたということ。

地球環境の乾燥化により、森林から草原に出ざるを得なくなり、直立歩行を始めたことで、骨格と内蔵配置に無理が生じて、脳容積拡大による難産や腰椎圧迫などによる腰痛の悩みを人類は抱えることになる。また、草原で直立する人類は肉食獣による犠牲になりやすかった。しかし直立歩行は両手を食料運搬に使えることになり、多くの子供を養えるようになると、他の人類、類人猿よりも生き残る子孫を増やすことに成功する。多くの子供が養えると、肉食獣による被害を上回る子孫繁栄に成功することになる。

石器としては、石と石を打ち付けて作るオルドワン石器と石を成形して、ハンドアックスなどの都合のいい形を生み出すアシュール石器がある。骨から肉を剥がし取るならオルドワン石器でもできたが、死んだ草食動物の骨の中にある骨髄を食べるなら、ハンドアックスなどの石器が必要になった。これにより栄養価の高い肉や骨髄を常食できるようになる。さらに肉を焼く、肉食獣から身を守る、暖を取るという目的から火を使うようになる。消化の良い肉を常食するようになり脳容積も増やすことが可能となった。

ホモ・サピエンスとネアンデルタール人の共存は現在では約7000年、43000年前にヨーロッパ進出をした現生人類とネアンデルタール人の共存は約3000年だった。この二種には交雑があり、現生人類のDNAの2%はネアンデルタール人由来であるという。ネアンデルタール人は現生人類よりも寒さに強く、骨格も頑丈で大きかったが、「燃費が悪かった」。現生人類は寒さに強いというネアンデルタール人の特質を受け継いだのかもしれない。氷河期で寒くなることもあったヨーロッパで、寒い地域にも何十万年も生き延びたネアンデルタール人よりもあとにヨーロッパに来たホモ・サピエンスが生き延びたのは、雑食性と手先の器用さによる温かい着衣の開発、そして集団による狩りの旨さがあった。僅かな生存率の違いでも数千年の時間軸では、ホモ・サピエンスとの競争によるネアンデルタール人絶滅につながった。

この先、新たな人類が誕生することがあって、その生存確率が少しでも現生人類よりも高ければ、そちらが生き残ることになる。ウイルスの変異種と同じことが、人類にも起こるということ。
 

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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