意思による楽観のための読書日記

日本を知る小事典1(冠婚、葬祭) ***

本書は全六巻の第一巻、家族、地域、一生、地方、交際、礼儀が記述されている。北から南まで様々な家族のしきたりや親族の考え方がある。共通しているものもあって、農家では子供は赤子から6歳までは神の子、死ぬことも多かったので、その間に亡くなった子の正式な墓は作らず、家の近くに葬り生まれ変わりを願った。7歳からは子供組に入り、子供同士のルールやしきたりを守るが、親も大いに関わる。男性は13歳、女性は初潮を迎えた頃から若者組、娘組に入り、若者たちによるルールと取り決めに従う。男女の出会いは若者組と娘組の集団的交際から始まり、好きなもの同士が名前を教えあい、「呼ばい」という名前を呼び合うことから、多くの場合男性が女性の家を訪問する。その際、男性は女性の家の前に印となる笹や木のお札などを立てておき、女性側が気に入ればその札を家に入れることで受け入れ表明となる。男女は見合いを必要とせずに知り合うことが普通であった。

女性が受け入れても家族が受け入れない場合もあり、その場合には若者組が女性側の家族と交渉したり、地方によっては女性を拐う場合もあった。歴史的に言うと、婿入りが古く、これは「呼ばい」により男性が女性の家に通ううちに婚姻し、長男の場合には家を継ぐので、数年の訪問と家への奉仕の後にこの誕生などを契機に男性の家に入る。武家では家の継続が第一になるので、嫁取りがメインとなり、その習慣が大きな農家には取り入れられるようになる。また、同じ村同士の婚姻から離れた村同士の婚姻が必要となる場合には、お見合いが必要となり、徐々に婿入りから嫁入りへと移行していったとも考えられる。

若者が婚姻を経て家を継承すると戸主となる。それまで戸主だった男性は隠居する場合もあるし、戸主を譲らない場合もあった。村では神社の祭りや村の冠婚葬祭を取り仕切る役割の一年神主が必要で、持ち回りで神主役が各戸主には回ってきた。この役回りをするのは男性が42歳、女性が33歳であり、この歳を役歳と言った。現在では厄年はなにかの不具合が生じる年回りとされているが、もともとはこのような役回りの歳であった。42歳を越えると年寄りとなり、61歳を越えると男性は庚申講、女性は念仏講に入り、村の中でのクラブ活動的グループを形成した。講組織には宗教的な参詣講や氏子講、経済的な頼母子講、無尽講、総合扶助の人足講などもあった。女性同士では、嫁同士の地蔵講とよばれるヨメ講、42歳を越えると観音講と呼ばれるカカ講、還暦をすぎるとババ講、念仏講があった。

若者組が村の活動の中心であり、村の行事、神社寺院の祭礼執行、警備、農作物の見回り、共有地漁場林野管理、道普請、屋根替え、橋梁建設、神社改築、共有林植え付け、難破船救助、婚姻統制などを司った。年寄り組は若者組OBとしてのアドバイザーであり、メインは各家庭の生活を担った。61歳以上の老年組は村の宗教的行事や神の司祭者、調停役となった。

厄年は役回りの歳を中心に、男女7と13、女性の19、男女の25、女性の33、男性の42、そして還暦の61と古希の70、77の喜寿、米寿の88となり、歳祝いである。つまり一定の年齢に到達した者は神事に参加できることを祝った。3・5・7歳の子供が稚児に選ばれる、13と25歳で御輿を担ぎ、42と61で宮座と呼ばれる祭祀組織の正式構成員となる。村落における宗教的生活のなかで一定の役割を果たす年回りが役歳である。神に仕える際には心身の清浄を保ち、言動を慎み、村人からの信頼を維持することが重要であったが、村と祭祀の結びつきが薄れるに従って、役回りの年齢と責任のみが強調されるようになり、厄年と認識されるようになった。

人の一生を考えると、出生儀礼、帯祝、成長過程では7歳祝、成人式、婚姻儀礼、役歳祝、歳祝い、葬儀、年忌供養などがあり、それぞれ地方ごとに異なるしきたりがあるが、共通するのはムラを一つの単位とする相互扶助を伴い、協同で農作物や漁業を営むための絆の確認作業が儀式化、儀礼化したものがあること。神仏習合であること。鎌倉以降は武家のしきたりも加わってきたことなどがあるが、武士ももとは農民であり、1月に行う左義長、どんと焼きは蹴鞠などを行う宮廷の儀式がもとになっているとも言われているらしい。日本の年中行事は農村のしきたりをベースに、宮廷、武家のしきたりがミックスされて今に至っている。


↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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