意思による楽観のための読書日記

アルジャーノンに花束を ダニエル・キイス著 小尾芙佐訳 ****

主人公チャーリーは多少知的障害を持っている32歳、IQは68。パン屋のドナーさんのところで働かせてもらっているが、両親に捨てられたことも覚えていない。何をやっても人並みにできないので他の店員は彼をからかってちょっかいを出したりしていた。チャーリーはお人好しなので、自分が笑われていても、人が笑うのはそれが自分に対する嘲笑であっても楽しいこと。人が自分を見て笑いが巻きおこれば、チャーリーにとっては友達の証、その人たちは自分のことが好きなのだと信じることができた。大学の教授から、チャーリーに頭が良くなる手術を受けないか、という申し出がある。いつももっと頭が良くなりたいと思っているチャーリー、他の人たちと同じように本を読んだり書いたり、数学ができるようになることを望んでいた彼にとっては願ってもない申し出だった。

脳の外科手術の実験で、知恵遅れの彼は天才へ、チャーリイ自身が書いた報告が彼の知能の進歩を示します。原文ではどうなのかわかりませんが、日本語では漢字や句読点の使い方、文法など幼稚で読むのにも苦労する文章が、徐々に読みやすくなり、手術から時間が経つにつれて、高度なものへと進化していきます。チャーリー自身の変貌を報告書が示します。しかし、知能の向上がチャーリーにもたらしたものは、手術前に期待していたものとは全く違っていた。チャーリーの知能はさらに進んで、手術を施した教授たちをも凌駕するようになった。チャーリーは、知識の量に反比例するような疎外感を感じるようになる。頭が良くなればもっとたくさんの友達ができる、ひとりぼっちではなくなる、そう信じていた彼は、普通の人では一生かかっても得られないほどの知識を得たが、たくさんの友達は得られなかった。チャーリーのあまりの変化にに誰もが笑いを失い、彼を手術した教授たちも、チャーリーに劣等感を抱くようになってしまった。さらにチャーリーは今まで感じたことのなかった憎しみや驕りといった感情を抱き、多くの人間は賢いわけではない、ということに腹が立つ。彼と同じ手術を受けたネズミのアルジャーノンだけはチャーリーの悲しみと憎しみを理解してくれた。

アルジャーノンはチャーリーと同じように知能を向上させたけれど、段々情緒不安定になり、行動は凶暴になり死んでしまう。チャーリーは自分をそこに見出してしまう。チャーリーが天才になり、その後退行していくときの心の動き、心理、それらの描写が読者にそれぞれの思索の時間ときっかけを与えてくれる。とても印象に残る本です。
アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)
24人のビリー・ミリガン〈上〉 (ダニエル・キイス文庫)
24人のビリー・ミリガン〈下〉 (ダニエル・キイス文庫)
五番目のサリー〈上〉 (ダニエル・キイス文庫)
五番目のサリー〈下〉 (ダニエル・キイス文庫)
心の鏡 (ダニエル・キイス文庫)

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