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意思による楽観のための読書日記

雨の科学 武田喬男 ****

「雨はどこから水になって落ちてくるのか」「雨が降る時は滝のようにつながらないのはなぜなのか」「暑い夏に冷たいヒョウが降るのはなぜか」「雨は降るのに雲はなぜ落ちないのか」このような子供なぜなぜ教室のような疑問は、聞いても答えてくれる先生にはなかなかお会いできないものだが、本書筆者武田先生はその人である。

雨粒は大きいほど落下速度は大きくなるが、大きい雨粒は落ちる際に分裂するので半径3mm以上にはならない。0.1mm以下では小さすぎて雨粒とはならず、雲のままで浮かんでいるので、0.1mmから3mmの間だという。しかし、それらは一定ではなく、大きさにより落ちる速度も異なるため、大きい雨粒が小さいなものを吸収して分裂してを繰り返しながら落下してくる。

雲の中で雨粒が形成されるには、水滴が集合して集まる凝結だけではなく、粒の芯になるものが必要。硫酸、硫酸アンモニウム、塩化ナトリウムなどの化学物質が雲に溶け込んだ環境では雨粒が形成されやすい。凝結と同時に併合といって、複数の粒が一緒になることで大きくなり、0.1mm程度に達すると雨粒となり落下を始めるが、同時に雲の中では上昇流があり上空に吹き上げられる。寒い上空で冷やされた水滴、雲は雪の結晶になる。雪は結晶の大きさや温度などで種類分けされていて、六角形の角板、星型の星状結晶、角柱、針状、立体樹枝、鼓、不規則粒子、あられ、凍雨、雹などがある。気温がマイナス0-3度だと平板状、-3から-10度だと角柱、-10から-22度は平板、それ以下では角柱状になる。雲は零下になっても、刺激がなければなかなか凍らず、風などによる振動で氷結する。氷や雪は落ちてくるが、途中の温度や湿度によっては融けて雨に変わる。

氷を含む雲と湿気を多く含む雲が重なると、芯になるものと成長する湿気が合わさり雨粒が形成されやすい環境になる。この二種類の雲を、シーダー・フィーダーと呼ぶ。

積乱雲は、一つの雲の中に低いところから上昇気流が発生して形成される乱雲があり、積雲となり立ち上り、上昇して層状の雲にになって上空高く広がる。つまりシーダー・フィーダーの状態になり局地的な大雨を降らせる。線状降水帯は、一定の強い風が一方向に吹き続けている状態で、同じ場所の地形の上に同じ原因で形成される積乱雲が次々と生まれては雨を降らせる現象である。

一時間にどのくらい多くの雨が降るのか、それは日本での最大記録から言うと、1982年長崎豪雨での187mm/hで、歴代上位20位までは140mm/h程度までで続く。日本は北緯35度を中心とした南北に長い列島である。世界で見るとこの緯度帯には砂漠地帯が多い。赤道地帯には上昇気流が発生して一年中雨を降らせる雲が発生しやすい。雲は対流して北緯30度あたりに貿易風をもたらすので、30度近辺には乾季が多い地域が広がりやすいが、日本は、大陸の西の端に位置する、日本海があり西からの貿易風で湿気がもたらされる、そして列島で雲が発生する、という世界ではまれな地形のために、温帯にあるのに年間1700ミリという湿潤な気候が存在するという。本書内容はここまで。

雨について、雲から貿易風までを易しく読みやすい形で提供してくれる本書は、小学生には少し難しいが、気象に興味がある高校生、大学生が読めば、気象についてもっと学びたい、気象予報に携わりたい、と考える人が出て来るかもしれない。筆者は白血病の病床で本書を書き上げ亡くなったというが、まさに「虎は死して皮を残し、、、」であり、後世に残る一冊である。

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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