叶精二『宮崎駿全書』より。
> 鈴木の発案・構成で、『アニメージュ』八一年八月号に巻頭三一ペ
> ージの大特集「マンガ映画の魔術師・宮崎駿―冒険とロマンの世界」
> が掲載された。そのカラー扉数項を、未発表のイメージボードが飾
> った。それは、鎧武者と飛行機械や空中に浮く城が共存する奇妙な
> 作品で、未掲載ボードには武装集団・土鬼(ドルク)、トリウマ、巨神兵のよ
> うな巨大ロボットも描かれていた。
http://www.amazon.co.jp/dp/4845906872/
鈴木敏夫『映画道楽』より。
> 最初に提出したのは、僕が仮タイトルを付けた『戦国魔城』というチャン
> バラものでした。宮さんの場合、作品を作るときにいろんなイメージが重な
> るんですが、岩見重太郎のヒヒ退治とか俵藤太のムカデ退治。ああいうもの
> を作ってみたいというのがあったんです。それは単に昔話として面白いとい
> うよりも、巨大なものをやっつけるところに日本の伝統があるんじゃないか
> と。タイトルにも『魔城』とあるように城も出てくるんですが、雰囲気は映
> 画『もののけ姫』をもっと素朴にした、その原型みたいな企画でしたね。
> 結局、この企画はうまくいきませんでした。
http://www.amazon.co.jp/dp/4041005663/
黒澤明 宮崎駿『何が映画か 「七人の侍」と「まあだだよ」をめぐって』より。
> 黒澤(中略)
> シェイクスピアやったらどうですか、日本の時代劇にして。たくさんありますよ、面白いのが。ど
> う?
> 宮崎 いや、これは……、うーん。
> まずその時代、何を食べてたのか、何を着てたのか、というところから入らないと。
> 黒澤 でもね、その文献ならありますよ。昔のもののほうがあるんです。献立を書いたものとかが。
> 宮崎 室町というのはどうですか。
> 黒澤 室町頃だってありますよ。室町もいい時代だけどね。しかしやっぱり鎌倉……。
> 宮崎 南北朝でめちゃめちゃになりますね、「太平記」の時代に。何があったかよくわからない。あの
> 時代は僕はどうなのかと興味があって……。
> 黒澤 そうね、あまり遠くなるとわかりにくいところがたくさんある。平家だったら、そっくり残って
> るわけですからね。
> 宮崎 黒澤監督は『七人の侍』を作ったことによって、日本の映画界に一つの基準線を作ったと僕は思
> っています。もちろん『七人の侍』は歴史観や、そのときの経済情勢や政治情勢や人々の気持ちや、そ
> ういうもののなかで、まさにあの時代が生んだ作品でもある。黒澤監督をはじめとするスタッフの力量
> であると同時に、時代が生んだものです。あの映像のなかにある侍像や、百姓像や戦いの描き方そのも
> のが一つの時代を作っている。そして、それは呪縛のように――まさに呪縛です――その後、多くの人
> 間たちが映画を作るときに縛ってきた。べつに、悪いとかいいとかということじゃなく、それだけの力
> がある作品なんです。
> でも、今、自分たちが時代劇を作るとしたら、それを超えなきゃいけないんです。歴史観も変わった。
> 変わったというのは変な言い方ですけれど、前より少し余計にわかったことがある。また、前よりわか
> らなくなっている部分もあるでしょう。その点を自分たちで見極めないと、『七人の侍』を超えること
> は、やはりできないでしょうね。超えることができないということは、なにも並べてみてどっちがいい
> かということを競うというんじゃない。
> つまり、黒澤監督があの作品を作ってからもう何十年かたっているのに、その間に自分たちが何を学
> んできたのかということを、問われることになると思うんです。それに対する回答は残念なことに日本
> 映画は出していないと僕は思いますね。実をいえば、黒澤監督も出していない。日本のなかでは、まだ、
> 『七人の侍』を超える映画は作られていないですよ。それができるかできないかは、やってみないこと
> には話にならない。
> つまり、あの場で時代劇についていろいろお話しすることよりも、我々に課せられているのは、「な
> るほど違う時代劇だ」という映画を果たして作れるかどうかということです。いろいろいっても、作れ
> ないんだったら話にならないんです。
(中略)
> んなにワクワクするのか。そんな映画はめったにないです。自分が今までに見た映画のなかに、いい映
> 画はいっぱいあるんですよ。でも、一番好きな映画といわれたら、やっぱり『七人の侍』ですね。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます