おお、なんと悲しげで狂った動物だろうか、この人間というものは!
*ニーチェ「道徳の系譜学」、174頁
だから、人間の知恵は、
動物である人間に倫理と法を守る義務を負わせました。
また、国民が代表者を選ぶための選挙を通じて政治に参加し、意思を反映させる「選挙制民主主義制度」を作りました。
この制度は理性的行動をする人間を前提にして組み立てられています。
しかし、実態は「狂った動物」(ニーチェ)のようです。
人間は衝動と感情に左右され、戦争をする唯一の動物です。
人間という動物は倫理能力は未発達のままですが技術を開発する能力は発達しました。
技術を使いこなす倫理力はありません。
選挙により選ばれた人間による、民主主義制度の破壊は簡単です。
現時点での私の記録として、他国の選挙戦を眺めたこの総括を記します。
【伝えたい要旨】
選挙制民主主義制度には問題がある
トランプは、人類史上最悪のデマゴーグである
民主党は直面する課題に対処できない
選挙制民主主義制度
選挙制民主主義制度には大きな問題があります。
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ポピュリズム: 短期的な利益や感情に訴えるポピュリストが支持を集めることがあり、これが長期的な政策の一貫性や持続可能性に悪影響を及ぼすことがあります。
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選挙制度の不備: 選挙制度が不公正であったり、特定の集団や地域に有利な設計になっていたりすると、民主主義の基本原則が損なわれる可能性があります。
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政治的無関心: 国民の政治への関心が低下し、投票率が低下すると、民主主義の代表性が失われる恐れがあります。これにより、特定の集団が過大な影響力を持つことになります。
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情報の偏りと誤情報: インターネットやSNSの普及により、誤情報や偏った情報が拡散しやすくなりました。これにより、有権者が正確な情報に基づいて判断することが難しくなることがあります。
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経済的不平等: 経済的不平等が広がると、一部の富裕層や企業が政治に過大な影響力を持つことがあり、一般市民の意見が反映されにくくなることがあります。
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政策の実行力不足: 民主主義では、多くの意見を調整する必要があるため、迅速な意思決定や政策の実行が難しくなることがあります。これにより、緊急事態や危機に対処する能力が制約されることがあります。
一般論としては以上ですが、匿名性についても議論がいるのではないでしょうか。
有権者が集会場に集まり対面で賛否議論して、挙手での多数決が最良でしょう。
賛否選挙型民主主義制度の危うさは、歴史が証明しています。
大衆はしばしば一時の感情に流され、扇動に乗せられやすく、何が正しいのか判断が難しいことがあります。
自分の人生は他人ではなく、自分で決定することが大切です。
独裁者に自分の運命を委ねてはいけません。
最悪の選択を避け、時間を稼ぎながら、一人一人の尊厳を実現する新しい社会システムを創造する必要があります。
選挙結果を最悪につながらないようコントロールする投票行動は、偶然ではなく意図的に望ましい状態に近づけるために、人間にとって不可欠です。
しかし、これは奇跡を期待するようなものです。
アメリカの有権者は異なる選択をしました。
これが選挙制民主主義の現実です。
現状
①根本問題は政治の仕組みにある
最大の問題点は、人間社会の政治体制です。
それは人間の尊厳を実現できる体制ではありません。
近代選挙制民主主義は「自由・平等・平和」を掲げて成立しましたが、それ以前は封建主義で、君主が人々の運命を決定していました。
人間は法の下で平等ではなく、身分によって法律上の上下が存在する社会でした。
世界の解釈ルールを独裁者が決めていたのですが、これを変えたのが近代民主主義です。
しかし、近代民主主義の理念が完全に実現されたわけではありません。
経済格差は拡大し、生活は楽にならず、戦争は続いています。
近代民主主義に疑問を抱く有権者が増えています。
民主党と共和党の政権交代は続きましたが、両政党の政策による微修正ー予定調和の世界ーでは矛盾を解消できず、戦争は続き、経済格差は拡大し続け、人間の大移動も止まりませんでした。
ここ20年間米国は、一国主義(共和党)と多国主義(民主党)の間を揺れてきました。
建前では済まされなくなった社会に登場したのがトランプです。
不倫をしようが、刑事訴追を受けようが、選挙制民主主義を否定しようが、有権者は彼に自分の運命を託しました。
②トランプは、人間史上最悪のデマゴーグ(民衆扇動家)
トランプは自己の資源(ヒト・カネ・モノ)を活用して有権者を扇動し、方向付けています。
社会の常識を覆し、分断を助長したのはトランプです。
8年の間に、彼の言動(発し方は、いつ、何を、何を使い、誰に向けてが練られています)によって人々の気持ちは変化しました。
16年の選挙では男性がトランプ支持を公にすることをためらいました。
24年は女性がトランプ支持を公にすることをためらったのでしょう。
今回、女性の票が予想外にトランプに流れました。
これは単なる大衆の人気を得る事を目標にする大衆迎合とは異なります。
彼は世界の解釈は自分にしかできないと信じています。
架空の敵を作り出し、人間の弱さを巧みに操り、刺激し、扇動しています。
富裕層を守ることを、貧困層を守るように見せかけています。
さらに、自身の保護とトランプ王朝の確立を画策しています。
民主主義の概念が彼には存在しないため、それを擁護する気持ちはありません。
③民主党では直面する課題を解決できない
民主党の敗北の根本的な原因は、人間の尊厳を実現できない政策にあります。相矛盾する言動を続けています。
イスラエルとハマスの戦争が、民主党の偽善を浮き彫りにしました。
経済格差をなくし、平和を実現することはできませんでした。
有権者が抱える現実の生活課題から逃げていました。
米AP通信の調査で米国が直面する最も重要な課題を聞いたところ、トップは「経済・雇用」の39%で、「移民」(20%)、「中絶(規制)」(11%)と続きました。
東部ペンシルベニアや南部ジョージアなどの激戦州でも順序は同じでした。
今回の選挙では、女性と非白人、若者の票がトランプに流れました。
不倫や刑事事件で訴追される容疑者であっても、彼らはそれを気にすることはありませんでした。
過去の社会常識(=不倫は女性票を逃がす)は崩れ去りました。
「中絶、民主主義」では、票を取り込めませんでした。
有権者が求める優先課題に応えなかったことが敗因でしょう。
さらに、バイデンに代わる次期候補者を用意しておくべきでした。
自滅ですが、そもそもこの党では、社会的課題に対応できなかったのでしょう。
トランプの煽りの勢いが勝りました。
歴史が古代であれ現代であれ、人間は巧妙に扇動される家畜のような存在であることに変わりはありません。
人間は動物であり、家畜の群れのような行動を見せます。
トランプはその手綱さばきを覚えたのでしょう。
【今後の大まかな予想】
・年内
トランプの考えを実行する閣僚人事。
選挙活動を取り仕切り、支援した人物を登用する人事です。
・25年夏まで
公約を実行します。
自分を起訴した人物への報復。
ウクライナ停戦と軍事支援の打ち切り。
国際主義から一国主義に。
・2025年
不法移民を国外に強制送還します。
・2026年
上下両院の中間選挙で、さらにトランプの共和党が増えます。
民主党は総崩れになり、議会はトランプ翼賛会となります。
トランプ王朝の姿が現れます。
・2028年
政・官・軍の支配権を確立します。
トランプ批判者を投獄します。
米国内は、内乱の様相を見せます。
連邦軍による鎮圧が予想されます。
トランプは絶対君主として君臨します。
社会は、封建時代(君主と家臣団ー奴隷)に変わります。
*憲法上大統領3選禁止ですが、合憲的な方法もあれば軍を統制しているのでクーデターという非合法もあります。
それから、イーロン・マスクは、人間史最大最悪の政商です。
人間史は試行錯誤で続いてきました。
近代になり人間は選挙制民主主義を試しましたが、錯誤という結論になりそうです。
そうなれば、人間史においては短命だったということになります。
これまでは人間が歴史を書き続けましたが、それはいつまで続くでしょうか。
*天星人語は、こころ持つロボット君が歴史を書くのではと、微かに期待しています。
今の人間も古代ローマの競技場に集まり、人間同士が闘う、死か生かの格闘技を見に集まった人間と変わりません。
「殺せ、殺せ、殺せ」と叫んで、格闘技を見ていました。
だから、ニーチェは人間は「動物であり、家畜の集まり」、「狂った動物」と書いたのです。
これが私を含む、人間なんです。
奴隷です。
生物進化を現す「系統樹」で言えば、人間は生物進化の途中にいる生物でしょう。
【補説】
トランプは政体としては絶対君主を目指しています。
絶対君主(Absolute Monarch)とは、国家の統治権を全て君主が掌握し、法や議会などの制約を受けずに統治を行う君主自身を指します。
この政治体制の下では、君主が立法、行政、司法などのあらゆる権限を独占し、全体的な国家運営を行います。
また経済は、重商主義(Mercantilism)です。
重商主義とは、16~18世紀に広く採用された経済理論で、国家の富を増やすために貿易黒字を重視し、国内産業を保護・育成する政策を推進しました。
金や銀などの貴金属を、(今は仮想通貨含む)主な富の源泉とみなし、輸出を増やし輸入を抑えることで国家の経済力を強化しようとしました。
また、植民地を獲得し、その資源を本国に供給する構造を築くことも特徴です。
さらに外交は、一国主義(Nationalism)です。
これは、主に19世紀以降の概念で、国家としての利益や自主性を最優先とする思想です。
一国主義は国民意識や愛国心を強調し、国家の独立性や内政不干渉を重視します。
紆余曲折ありますが、止めるも進めるも、出来るのはトランプだけです。
民主的な選挙により選ばれました。
命令すれば軍も従います。
絶対君主(=独裁者)だけが 世界を解釈し・ルールを作り・刑罰を下します。
これは、教科書に封建制度と書いてあります。
絶対君主と家臣団(政権閣僚と支援する大富豪)ー奴隷の社会です。
人間は狂った動物で一番信頼できない生物です。
が、家畜の群れではないひとりひとりが強い意志を持つ生き方ー人間の尊厳を実現する社会を作るーを出来ないのでしょうか。
そういう生き方は「奇跡」に期待するものなのでしょうか。
【もうすこし大局から論じた関連記事です。長いですが、よろしければ読んでください】
