このエントリは、ネッタイムス・ブログのアーカイブ(7月27日のエントリ)なのでヨロシク!
英国ではロンドン・オリンピックが華々しく開幕し、熱戦の火蓋が切った。が、である。英国の実情と言えば、若者の失業率は1980年代以降最悪の22%前後に高止まりする等、オリンピック特需にも拘わらず、経済と言えば暗雲が漂い低迷している。
その原因に付いては、リーマン・ショック後の付加価値税増税(消費税に相当)等の増税策が、失敗だった事が大きいとされている。
英国と付加価値税増税等の増税に関して、当ブログのエントリ、消費税増税とマスコミの提灯報道等でお馴染み、産経新聞の編集委員と論説委員を兼務している特別記者の田村秀男が、「産経ビジネスアイ」に記事を書いているで、以下に貼ってみる。
「消費増税の結末はすでに示されている」
ロンドン五輪まであと1週間足らず。通常、五輪開催国は個人消費ブームなどに沸くのだが、英国経済は暗い。
英実質国内総生産(GDP)伸び率は昨年第4四半期、今年第1四半期と2連続で前期比マイナスに落ち込んだ。
ユーロ危機の余波による、とみるのが一般的のようだが、ユーロ圏のフランスより景気は悪化し、マイナスの度合いはスペイン並みである。
どうやら主因は、2011年1月から実施した付加価値税(消費税に相当)増税に行き着く。
キャメロン保守党・自由民主党連立政権による緊縮財政は付加価値税率17.5%の20%へのアップのほか、株式などの売却利益税の増税、子ども手当など社会福祉関連の予算削減にも踏み切った。
付加価値税収は増税前の10年には前年比30%前後の増収となっていたが、増税後の11年4月以来、マイナスに落ち込んだままだ。
増税前の「駆け込み消費」が発生し、増税後はその分が剥げ落ち、消費が減ったとみなす向きもあるが、肝心なポイントを外している。
増税を機に、消費者の心理はリーマン・ショック直後並みに冷え込んでいる点だ。
英国の「消費者信頼度指数」(2004年5月=100)は付加価値税率引き上げ後の11年2月には前年比52%減と落ち込んだあともマイナスが続き、今年初めにいったん下げ止まった。
そのあと、再び下がり始め、この5月、40.9まで下がった。前年同期の水準に比べ28%のマイナスである。
税の減収は付加価値税にとどまらない。
所得税や法人税収は11年4月あたりから伸び率が鈍化し始め、今年3月からとうとう前年比マイナスに落ち込んでしまった。
付加価値増税に心持ち程度に合わせた所得税と法人税の実質減税の影響がないわけではないが、個人消費の落ち込みに伴う景気後退がより強く反映したとみるべきだろう。
中央銀行であるイングランド銀行は昨年秋から、ポンド札を大増刷して国債を買い上げる量的緩和(QE)政策を再開し、今年5月の資金供給残高(マネタリーベース)はリーマン前の3.7倍と、米QEをしのぐ水準に達した。
ポンド相場はユーロやドルに対して上がらずに済み、長期金利も下がってきたが、下降局面に突っ込んだ実体景気は浮上しない。
いわば、ブレーキをかけたままアクセルを踏み込むようなものだ。
日本では1997年4月に消費税率を3%から5%に引き上げた翌年からデフレ不況に陥り、現在に至る。
もともと今回の日本の消費増税は「英増税に倣え」、という財務官僚にそそのかされた菅直人前政権や大手メディアが前のめりになったのがきっかけだ。
英国の大失敗が明白になっても野田佳彦首相はまったく意に介さず、日本のメディアの多くももっぱら華やかな祭典の取材合戦に血道を上げるのが、何とももどかしい。
(産経新聞編集委員 田村秀男)
以上が、産経ビジネスアイに書いた田村秀男の記事なのだが、付加価値税が経済に暗い影を落としているのは英国だけでは無い。
イタリア経済は、ベルルスコーニ前首相が昨年9月に付加価値税の税率を1%引き上げて21%にして以来、同税の受取額は減少し、4月末迄の1年間の徴収額は2006年以降で最低に落ち込み、モンティ首相は増税が裏目に出始めた事に頭を抱えている。
一方、フランス政府は7月4日の閣議で、財政赤字を削減する為、富裕層や企業を対象とする計72億ユーロ(約7200億円)の増税を盛り込んだ補正予算案を決定し、サルコジ前政権が10月からの実施を決めていた付加価値税の引き上げは撤回している。
付加価値税が増税されない事に国民は歓迎している様だが、増税となる富裕層や企業からは反発の声が上がっているのは当然と言えば当然だろう。
これらフランスの動きに関し英国は、富裕層や企業に対して税金が安い英国に「いらっしゃい」と、ラブコールしている様だ(笑)。
金持ちから税金を取ると言う姿勢はフランスだけでは無く、米国のオバマ大統領も富裕層への増税を明言している。が、やはり富裕層から反発の声が上がっている。
各国共に、どうすれば税収を増やす事が出来るか。と、頭を悩ませている様だが、消費税(付加価値税)では消費者心理を冷やし、結局の所、経済を落ち込ませて、思う様に増税に繋がらない事は明らかなのではないだろうか。
当ブログのエントリ、消費税増税と北風と太陽にも書いた様に、やはり消費者心理を上向かせて、財布の紐を緩ませる事が増税への一番の近道だと思う。では。
関連エントリ
・消費税増税の三党翼賛体制と違法ダウンロード刑事罰化
・民主党、三党談合の合意を了承
・消費税増税の談合三兄弟を打倒せよ
【ネッタイムス・東坊京門・作】
英国ではロンドン・オリンピックが華々しく開幕し、熱戦の火蓋が切った。が、である。英国の実情と言えば、若者の失業率は1980年代以降最悪の22%前後に高止まりする等、オリンピック特需にも拘わらず、経済と言えば暗雲が漂い低迷している。
その原因に付いては、リーマン・ショック後の付加価値税増税(消費税に相当)等の増税策が、失敗だった事が大きいとされている。
英国と付加価値税増税等の増税に関して、当ブログのエントリ、消費税増税とマスコミの提灯報道等でお馴染み、産経新聞の編集委員と論説委員を兼務している特別記者の田村秀男が、「産経ビジネスアイ」に記事を書いているで、以下に貼ってみる。
「消費増税の結末はすでに示されている」
ロンドン五輪まであと1週間足らず。通常、五輪開催国は個人消費ブームなどに沸くのだが、英国経済は暗い。
英実質国内総生産(GDP)伸び率は昨年第4四半期、今年第1四半期と2連続で前期比マイナスに落ち込んだ。
ユーロ危機の余波による、とみるのが一般的のようだが、ユーロ圏のフランスより景気は悪化し、マイナスの度合いはスペイン並みである。
どうやら主因は、2011年1月から実施した付加価値税(消費税に相当)増税に行き着く。
キャメロン保守党・自由民主党連立政権による緊縮財政は付加価値税率17.5%の20%へのアップのほか、株式などの売却利益税の増税、子ども手当など社会福祉関連の予算削減にも踏み切った。
付加価値税収は増税前の10年には前年比30%前後の増収となっていたが、増税後の11年4月以来、マイナスに落ち込んだままだ。
増税前の「駆け込み消費」が発生し、増税後はその分が剥げ落ち、消費が減ったとみなす向きもあるが、肝心なポイントを外している。
増税を機に、消費者の心理はリーマン・ショック直後並みに冷え込んでいる点だ。
英国の「消費者信頼度指数」(2004年5月=100)は付加価値税率引き上げ後の11年2月には前年比52%減と落ち込んだあともマイナスが続き、今年初めにいったん下げ止まった。
そのあと、再び下がり始め、この5月、40.9まで下がった。前年同期の水準に比べ28%のマイナスである。
税の減収は付加価値税にとどまらない。
所得税や法人税収は11年4月あたりから伸び率が鈍化し始め、今年3月からとうとう前年比マイナスに落ち込んでしまった。
付加価値増税に心持ち程度に合わせた所得税と法人税の実質減税の影響がないわけではないが、個人消費の落ち込みに伴う景気後退がより強く反映したとみるべきだろう。
中央銀行であるイングランド銀行は昨年秋から、ポンド札を大増刷して国債を買い上げる量的緩和(QE)政策を再開し、今年5月の資金供給残高(マネタリーベース)はリーマン前の3.7倍と、米QEをしのぐ水準に達した。
ポンド相場はユーロやドルに対して上がらずに済み、長期金利も下がってきたが、下降局面に突っ込んだ実体景気は浮上しない。
いわば、ブレーキをかけたままアクセルを踏み込むようなものだ。
日本では1997年4月に消費税率を3%から5%に引き上げた翌年からデフレ不況に陥り、現在に至る。
もともと今回の日本の消費増税は「英増税に倣え」、という財務官僚にそそのかされた菅直人前政権や大手メディアが前のめりになったのがきっかけだ。
英国の大失敗が明白になっても野田佳彦首相はまったく意に介さず、日本のメディアの多くももっぱら華やかな祭典の取材合戦に血道を上げるのが、何とももどかしい。
(産経新聞編集委員 田村秀男)
以上が、産経ビジネスアイに書いた田村秀男の記事なのだが、付加価値税が経済に暗い影を落としているのは英国だけでは無い。
イタリア経済は、ベルルスコーニ前首相が昨年9月に付加価値税の税率を1%引き上げて21%にして以来、同税の受取額は減少し、4月末迄の1年間の徴収額は2006年以降で最低に落ち込み、モンティ首相は増税が裏目に出始めた事に頭を抱えている。
一方、フランス政府は7月4日の閣議で、財政赤字を削減する為、富裕層や企業を対象とする計72億ユーロ(約7200億円)の増税を盛り込んだ補正予算案を決定し、サルコジ前政権が10月からの実施を決めていた付加価値税の引き上げは撤回している。
付加価値税が増税されない事に国民は歓迎している様だが、増税となる富裕層や企業からは反発の声が上がっているのは当然と言えば当然だろう。
これらフランスの動きに関し英国は、富裕層や企業に対して税金が安い英国に「いらっしゃい」と、ラブコールしている様だ(笑)。
金持ちから税金を取ると言う姿勢はフランスだけでは無く、米国のオバマ大統領も富裕層への増税を明言している。が、やはり富裕層から反発の声が上がっている。
各国共に、どうすれば税収を増やす事が出来るか。と、頭を悩ませている様だが、消費税(付加価値税)では消費者心理を冷やし、結局の所、経済を落ち込ませて、思う様に増税に繋がらない事は明らかなのではないだろうか。
当ブログのエントリ、消費税増税と北風と太陽にも書いた様に、やはり消費者心理を上向かせて、財布の紐を緩ませる事が増税への一番の近道だと思う。では。
関連エントリ
・消費税増税の三党翼賛体制と違法ダウンロード刑事罰化
・民主党、三党談合の合意を了承
・消費税増税の談合三兄弟を打倒せよ
【ネッタイムス・東坊京門・作】