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ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

クラウド アトラス

2020年09月07日 | 激辛こきおろし篇

『クラウド アトラス(天に歯向かうもの)』=絶対的権力に立ち向かうものを6つのオムニバスにまとめたSF大作。奴隷制度を仕切る資本家、クラシック作曲の大家、老人ホームの管理人、原発メジャー、クローンリサイクルセンター、そしてほろびゆく地球の運命…平身低頭従わざるをえないそんな絶対的権力に、時空を超えていどんだ人間たちの物語である。

しかしウォシャウスキー姉妹はこの映画でとんだヘマを♪やらかしちまあった。『マトリックス・シリーズ』にも取り入れた仏教への言及、具体的には輪廻転生と縁起を演出に加えたがために何がいいたいのかさっぱり。観客の興味はもっぱらトム・ハンクスやヒューゴ・ウィービングが、各オムニバスに何役で登場していたのかというその(どうでもいい)1点に集中し、映画のテーマ探しなど途中でどこかで吹き飛んでしまっているのだ。

その“混みいった(人物相関)図(クラウド アトラス)”を完成させて満足しきっている輩を排出させ、その人達に輪廻やら縁起の意味を無理矢理探させようとしたウォシャウスキー姉妹の罪は重い。おそらくこれは監督が思いついた一種の“お遊び”であり、金貨の入った木箱で頭をかちわられる強欲な医者と、評論家をベランダから投げ落とすB級作家の間には多分何の因果関係もないのである。

元々イギリス人作家が書いたSF小説だからだろうか、英国出身の俳優を中心にアフリカ系と韓国系が少々、ユダヤ人俳優がまったく見当たらないという非常に珍しいキャスティング。3時間近くの長尺に何のおとがめも入らなかったことから察するに、本作はハリウッドの出資を受けていないインディーズ系映画なのではないか。よって本国アメリカでは話題にものぼらず、批評家もこぞって酷評を浴びせたらしい。作品そのものがハリウッド=絶対的権力に歯向かって作られた映画なのかもしれない。

6つにエネルギーが分散した結果1本1本のシナリオの練りも当然浅くなるわけで、それを意味のない一人複数役のアクロバティックな演出で補おうとしているが、失敗は誰の目にも明らか。要するに輪廻だとか縁起とかいう余分な演出に拘った結果、かえって作品の本質を見えにくくしているのである。大勢の大物俳優が普段オファーが絶対に来そうにない役を楽しそうに演じてはいるが、見ているこちらがちっとも楽しめない残念な1本である。

クラウド アトラス
監督 ウォシャウスキー姉妹
   トム・ティクヴァ(2013年)
[オススメ度 ]


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