
ギャングも怖れるブギーマンが、世界中の殺し屋から逆に命を狙われる立場に陥るまでを描いたクライム・アクション。最愛の奥さんを喪った傷心のジョン・ウィックが、そうとも知らずにジョンから仔犬と車を奪ったギャングどもに血の雨を降らせた前作から5日後、カモッラと呼ばれる組織の幹部サンティーノから実姉の殺しを依頼されるところからこの続編のお話が始まる。
「俺は引退したんだから、他の奴に頼んでくれ」
仕事をやめたいのにやめさしてくれない状況というのは、深刻な労働力不足に見舞われている日本とどこか似ていなくもない。年金需給開始年齢を引き上げてなんとか死ぬまで働かせようと官僚が画策するブルーカラー市場。「あんなに働かなければよかった」などと愚痴をこぼしながら死ぬよりは、多少貧乏でもきっぱりと引退した方がまだ幸せのような気がするのだ。
しかし、このジョン・ウィックのレベルになると話は別だ。雨霰のように銃弾を浴びても死なないどころか、きっちり依頼された仕事を完遂するプロフェッショナル魂。アーミーナイフを同業者の胸に突き刺しながら「これがプロの流儀だ」なんてカッコをつけているから、次から次へと仕事を頼まれてしまうのだ。引退したとはいえ(職人気質が邪魔をして)確実に仕事をこなしてしまうジョン・ウィックに、是が非でも仕事をたのみたくなる依頼主の心理がまったくわかっていないのである。
プロのスポーツ界を見回しても、偉大な業績を残した選手ほど本人が引退したいと思っても周りがそれを許してくれない。よって、最期はボロボロになるまで闘って試合に大負けしたあげく恥をかかされるケースを、みなさん何度も目撃しているにちがいない。チャンピオンのままきれいに勇退した選手など数えるほどだろう。具志堅用高にランス・アームストロング、浅田真央に吉田沙保里と、今までの活躍がはなばなしかっただけに引退直前の試合がことさら惨めに見えてしまうのかもしれない。
次から次へとゾンビのようにわいてくる殺し屋相手にショットガンをぶっぱなし、得意の柔術で敵を1本背負い。さらには相手の腕や首をきめておいて至近距離からとどめの一撃を放つジョン・ウィック。今回ホームレス・ギャング団を牛耳るキングにも借りを作ってしまい、あろうことかホテル・コンチネンタル内での殺しは厳禁というタブーをも破ってしまう。次回3では、ジョン・ウィックがこのキングとホテル支配人から生命を狙われること必至であり、殺し屋稼業からも当分の間足を洗えそうにないのである。
ジョン・ウィック:チャプター2
監督 チャド・スタエルスキ(2017年)
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