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ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

ブラック・ボックス

2021年05月25日 | ネタバレなし批評篇

意外にもブラック・ウォッシュ系が多いamazon original ビデオ、その中でもなかなかお薦めなのが本SFスリラーだ。ホワイト・ウォッシュと聞くとやたら目くじらを立てる人が多いのに、ウォーク・カルチャーの影響からかほぼスルーされているジャンルなのだ。デップー俳優主演のあの作品とジョーダン・ピール監督のあの作品にオチが似ていると言えば大体の見当がつく人が多いとは思うが、この映画の見所は別にある。

交通事故によって妻を失い、自身も脳死状態に陥ったものの、友人の勤める病院で奇跡的に意識が戻ったノーラン。しかし事故の影響で記憶を喪い、同居している一人娘エヴァには迷惑をかけっぱなし。そんなノーランの元に治療に当たった病院の脳神経外科医から最新医療治験のオファーが舞い込むのだが…

記憶喪失の父親が娘との愛情を取り戻すヒューマンドラマのようにも思えるが、娘の父親への愛vs母親の息子への愛という隠されたシナリオの構成に気づかれると、より好感度が高まる一本になっている。映画前半部分で、なかなか記憶を取り戻さない父親の世話をやくエヴァの健気さがとても丁寧に描かれているため、より一層そう感じさせるのかもしれない。

朝は寝坊すけの父親の目覚まし時計変わり、親としての資格が充分あるように担任教師の前で振る舞うトレーニングは欠かさない。料理もロクすっぽできない父親に代わって、夕食のレシピまで考えてあげるエヴァ。この父親想いの娘が反抗期前の小学校低学年という設定がミソになっており、そのピュアな振る舞いにきっとあなたのハートはわしづかみ、胸キュン必至のオヤジ殺し娘エヴァちゃんなのである。

そんなエヴァに対峙する人物のことを説明してしまうともろネタバレになるのでここではブラック・ボックスにしておくが、登場人物がほぼ黒人だけの割には全く違和感を感じさせないのは、記憶喪失のシングル・ファーザーと一人娘の日常を丹念の描いた映画前半部分があればこそなのだ。後のSF的展開は本作の中でオマケと云っても過言ではないだろう。

しかしそんな父親への純粋な想いも、娘が思春期をむかえるまでのほんの僅かな期間だけ。一連の陰謀を企てた黒幕に実験サンプルの家族構成を吟味する精神的余裕があれば、女同士のこの勝負どちらに転んでも不思議ではなかったのだ。但し、母親がブラック・ボックスに隠れた息子の癖(へき)に気づけなかった時点で、勝負はすでについていたのである。

ブラック・ボックス
監督エマニュエル・オセイ=クフォー(2018年)

[オススメ度 ]




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