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人間の声の力

2004-11-01 20:27:07 | ジャズの話題
もう1年も前になるのかな・・・・・僕はその年の4月に転職して、慣れない仕事と、その業界のある意味特殊な人間関係の持ち方に馴染もうと、毎日毎日必死に過ごしてたのね。
今から考えてもあの頃は大変だった。
毎日毎日沈没寸前のずぶ濡れで泳ぎきって、なんとか週末に逃げ込むような過ごし方をしていたと思う。
それは今でもあまり変わらないのかもしれないんだけど(苦笑)。

秋から初冬だったかな・・・・・週末ね、仕事が終わって帰ってきて、夜の10時か11時くらいだったと思う。ちょっとした用事で外出して車を走らせてたのさ。
毎日ずっとストレスの中に身を置いていて、リラックスするはずの週末なんだけどね・・・・・自分でも気づかないうちに固くなってたんだと思う。
なんとなく不安で、ピリピリとした緊張が抜け切らない・・・・そんな感じだったのね。
まったく意識はしていなかったけど。

運転しながら車の中であるサックス奏者のアルバムを流していたのさ。
なんとなく聴き流していた1曲目のインストの曲が終わって、2曲目のボーカルがフィーチャーされたトラックが流れてきたのね。
その瞬間奇跡が起こった。
すごく大袈裟だし、奇跡なんて言葉を使うのは好みじゃないんだけど、それでもあれは奇跡だった・・・・・と思う。
その曲が始まった瞬間、ボーカリストの声が聴こえてきた瞬間、泣けた。
不意に泣けた。
一瞬で泣けた。
運転を中断して車を路肩に停めなきゃならないくらい、それくらい泣けた。
曲が流れていくに連れて、無意識にこわばっていた全身からフッと力が抜けて、驚くほど緊張がほぐれていった。
熱い血流が足の先から手の指先、頭のてっぺん、体の末端まで流れていくのがわかった。
気持ちがジワーッと暖かくなっていった。
その時ね、そのあまりに劇的な癒され方に「俺ってこんなに酷い状態だったのか」って、自分でも驚いた。(実は「癒された」なんて言い方も大嫌いなんだけどね)

今まで嫌になるほど音楽を聴いてきてたくさん感動してきた。今でも毎日湯水のように聴き続けてるけども、その中でもあれは特別な体験だった。
あらためてそのアルバムのそのトラックを聴き返してみてもね、いい曲だと思う。
ボーカルもいい声ではないし、決して絢爛な技巧を駆使するタイプのボーカリストではないんだけど、無造作なようでいて実は凄く繊細に意を配って歌っていて、それが素朴で暖かい歌声になってる。
歌って凄いよね。
人間の声の力って凄い。人の声の暖かさって凄いと思う。
そういえばある声楽の先生が「人間の声帯って他の楽器と違って体温で暖かいんだよ。物理的な温度のお話ね。それだけの事なんだけど、それは他のどんな楽器にもない、凄い事なんだよ」って言ってたっけ。
これはね、この「暖かさ」って、恐らく他のどんな楽器でも届かない領域でしょう。
色んな楽器で暖かい音出す人いるけどもね、ウォームな演奏ってたくさんあるけどもね、これは人の声以外には無理。
絶対にできないでしょう。
何も知らなかったのさ。歌詞は英語で、聴いたって内容はわからないし、歌手の名前もどんな曲かもまったく知らなかった。予備知識まったくなし。
聴いた瞬間にその「声の力」だけであんなに劇的に気持ちを持っていかれるなんてね・・・・・僕があの時にした体験ってのは、他の楽器の音では絶対にもたらす事はできなかったと思う。

もちろんね、そのトラックを他の人が聴いたからといって同じ印象を覚えるかってのは、それはまったく別の話。
その時の僕の精神状態があって、求めていた音楽があって、その結果ツボに嵌ったからあの体験があった。
それはわかってるよ。
あとになってライナーに載っていた訳詞を読んで、その曲が「今夜は独りは嫌なんだ」って「受け入れなくてもいいから拒絶はしないでくれ。朝までは・・・・・今夜は独りは嫌なんだ」って、概ねそんな意味なんだってわかって2度びっくり。
聴いた瞬間は意味もわからず劇的に感動していたけど、やっぱりその時の自分の気持ちにピッタリに書かれていた曲だったんだなって。
こんな偶然っていうか・・・・・ちょっと上手くいえないけど、あの体験は特別だった。
なんつうか、音楽ってスゲェなって。

今日はちょっとキザな言い回しの文章になっちゃったけど(笑)。
一昨日に続いて今日も安眠盤としてその曲を聴いてる。
アルバムはMichael Brecker(マイケル・ブレッカー、ts)の「Nearness Of You」。
その曲はJames Taylor(ジェームス・テイラー、vo)がフィーチャーされた2曲目の「Don't Let Me Be Lonely Tonight」。
原曲からはかなりアレンジされていて印象が違うんだけども、凄くいい曲ですよ。
お験しあれ。

ではでは。

2 コメント

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歌詞… (ヨックタイ)
2004-11-05 02:06:58
女の子にマイ・ファニー・ヴァレンタインを弾いて怒られたことがあります。「お前は頭悪いしかわいくもないけど、そんなお前が好きなんだよ」みたいな歌詞だったとは…。「Are you smart?」は私への言葉でした。
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My Funny Valentine (TARO)
2004-11-07 01:32:39
そうですね。

以前歌っていた頃によく演っていましたよ。



個人的にはスッゲェいい歌詞だと思ってます。

「そのまま変わらないでね」って、Billy Joelにもありましたよね。

「綺麗だね」とか「美人だね」って、通り一遍当の褒め言葉でちやほやされて喜ぶような女は、僕は願い下げですね(笑)。
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