Jazzを聴こうぜBLOG版

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音楽の何を聴くか・・・・・

2004-09-19 01:28:44 | ジャズの話題
金曜日は飲み会で、帰ってきたのが土曜の朝だったので、ここに投稿する事ができませんでした。
今日も1日ブッ潰れてた・・・・・。

一昨日、大西順子(p)の事を書いた時に、Jackie Mclean(ジャッキー・マクリーン、as)のリーダー作「Hat Trick」を引用して、「Mcleanはあまり良くなかった」といった旨の事を書いたよね。
「Hat Trick」でのMcleanの吹奏のみをクローズアップしてみた時に、全体的に雑だという印象を僕は持っているんですよ。
もともと弱々しいかすれたトーンに特徴のある人なんだけど、他のアルバムではハスキーではあってももっと各フレーズの隅々まで意識が行き届いていて、きちんと最後までコントロールされているように聴こえるんですね。
それがこのアルバムだとコントロールを離れた音が結構頻繁に耳に飛び込んでくる。
最初の音にアタックをかけた時に目的の音程まで届かなかったり、意図しない濁音(割れて濁ったような音、演奏法上では「グロートーン」というらしい。「ブキャーッ」て音ね)が一瞬出てしまっていたり。ディミヌェンド(だんだん弱く)していったり音量を抑えた音を吹いた時に一定量のブレスを吹き込む事を維持できなくて、音が「フヨヨヨ~」ってヨレてしまったり。音程そのものも正確じゃなかった。
完璧な演奏ってなかなかあるものではないし、ホーン奏者が音程やブレスコントロールの事を指摘されるのは往々にしてありがちだよね。僕も重箱の隅をつついて揚げ足を取るような聴き方はしたくない。
フレージングのアイディアやタイミングなどは、いかにもキャリアを感じさせるおおらかな貫禄があったし、大西順子とのコミュニケーションもある意味緊密で、悪かった点ばかりではないと思うよ。
でもそれを差し引いても、このアルバムでは耳につく不愉快な音が多すぎるかな、と。
僕はサックスの構造や演奏法に関しての知識はほとんどないので、これは純粋に音を聴いての素のままの印象ね。

で、某所でこのアルバムの話になり、「Mcleanのデキはこのアルバムでは散々だった」といった発言をしたところ、その人は「Hat Trick」はお気に入りだったらしく「まったく理解できない」との答えが返ってきた。
理解できないという返答であったので、ではMcleanのどこが良くなかったのかという事をかいつまんで返したのだけれども、音楽を聴くってやっぱり難しいんだなぁって思った。

音楽に対してリスナーが何を求めているか、音楽の何を聴いているか、というのは千差万別。
「音楽そのものの美しさや完成度」を求めて聴く事、つまり「音を聴く」事が音楽を聴く上での根本だと思うんだけど、全部のリスナーがそういう聴き方をしているかというとそれはまったくと言っていいほどそうじゃない。
「世間で評価されている事」を求める人。逆に「世間で注目されていない事」を求めていて、聴く事自体ではなく「そのアーティストを聴いている自分」とか「その音楽を聴いている自分」に満足しているタイプ。
また、音楽自体を聴いていても演奏の細部までは耳に入れない(入ってこない)で、雰囲気のみを求めるタイプ。
果てはアーティストの容姿や外見に惹かれているようなタイプ。
音楽を聴く上で、これらの聴き方のすべてが、僕は「あり」だと思ってる。それもリスナーとしての嗜好のひとつではあるよね。

でも僕はやっぱり「音を聴いて、聴いた事のみから判断する」という姿勢は持ち続けていたい。
Mcleanは言わずと知れた巨匠の1人だし、この「Hat Trick」に関しては評論家やライターにも評価している人が多くて、ジャズ名盤集的な書籍にもチラッと触れられていたりする。
決して一般的な評価の低い盤ではないと思うんだけど、僕が聴いた限りにおいては不愉快だったんだからしょうがない。
誰になんと言われようと、「お前はわかってない」と言われようと、あのアルバムでのMcleanは雑だった。
Mcleanが巨匠であるとか、このアルバムに対する世間の評価は関係ない。
また、演奏法上の技術的な視点も本質じゃない。
僕が聴いてそう感じたんだから、少なくとも僕にとってはそれは絶対的に正しい。
本質は「音を聴いて感じる事」だよ。

歴史に名を残したジャズジャイアンツの演奏に対して一般ピープルがボロクソ言ってますが、僕は決してMcleanが嫌いなわけではないです。むしろ好きですよ。
だけど演奏者が生身の人間である以上は「今日の演奏は上手くいった、いかなかった」という事は誰にでも必ずある事だし、それは最終的には「聴き手側がどう聴くか」という問題に落ち着く。
「聴く」って事だよ、「聴く」って事。
音楽の「音を聴く」って事。
どんなに耳が稚拙でもいい。知識なんかなくてもいい。
聴くって事は大切。「自分の耳で聴いて判断する事」が一番大切だ。
僕は「ジャズファン」ではなく、「ジャズマニア」でもなく、いつまでも「ジャズリスナー」でいたいと思う。
そんなとこです。

本日の安眠盤、Jackie Mcleanの「Jackie's Bag」
ではでは。