とある看護師の迷宮組曲

とある救命看護師。迷宮を彷徨い、雑記を綴ります。
管理者:T-okayama、TakoShun

過失は末端へ

2008年04月12日 20時33分49秒 | ふと思ったこと
日航機のニアミス事故で管制官二人の第二審判決が出た。
結果は一審を覆し逆転の猶予付きの有罪判決。
管制官側は共に上告する方針。

一方、イージス艦「あたご」の事故では事故当時の末端の見張り員は訴追されず、
当直士官及び艦長が海難審判の対象となることが決まった。

さて、これらのことを我々看護師で考えてみる。
看護師には業務上の注意義務である「結果予見義務」と「結果回避義務」がある。
 例えばわたくしごとだが、最近重症患者を受け持ったときに鬼のように
輸血を使う機会があった。
もしも、数ある輸血のパックの中に違う型の輸血が混じっており、
さらに確認ミスでそのまま投与してしまったら・・・
さらにさらに、輸血後の副作用に気がついたのが30分後で
患者は溶血性のショックに陥り、数時間後に死亡したら・・・
わたしは刑法上の業務上過失致死罪に問われることになる。

輸血の投与までには多くの確認過程を要する。
緊急で投与する場合、まずは患者の血液型を確認するため採血をし、
臨床検査技師が血液型の確認試験を行う。(表試験・裏試験・・・懐かしい*1)
さらに実際に輸血に使う製剤と患者の血液の血漿と赤血球部分を交差適合試験にかける。
臨床検査技師が交差適合試験を行い凝固や溶血が起こらないのを確認する。
この両段階で、患者の取り違えが起こる可能性もあるのでダブルチェックをする。
検査をパスすると、輸血が病棟へ届く。この段階でも輸血パックと番号・血液型の照合を
少なくとも2回行う。(血液検査室から出すときと、病棟に届いたとき)
さらに、受け持ち看護師とリーダー看護師が投与前の確認を行う。
ここまできてやっと患者へ投与される。
だが、実際にここまでやってもミスは起こる。

そして、交差適合試験でミスがあり、それが原因だと判明すれば"検査をした"
臨床検査技師は処罰される。
交差適合試験は合っていても、投与時に患者ミスやパックの取り違えミスが起こると
"投与をした"看護師が処罰される。

いずれにしても実際に処罰されるのは末端の医療スタッフだ。
つまり、行為を行った本人である。

これはどういうことかというと、主任や看護師長などは事故においては
刑事責任は問われないのだ。
無論、病院内では管理責任を問われることはあるかもしれない。
だが、社会的・刑事的に責任を負うのは末端の行為者だ。
有罪が確定すれば例え執行猶予がついても「前科一犯」の犯罪者である。

当然、その背景には死に至った患者がおり、
我々、医療者はその結果責任を負う必要がある。

これには患者側、医療者側双方に立った考え方を見てみる必要がある。
医療者が医療側にのみ立った考え方をすると傲慢な医療になり、
患者が患者側にのみ立った考え方をすると医療者は何も出来なくなる。

誰だって裁判で有罪判決を受けたくて医療を行っているわけではないのだ。

大切なことはミスが起こったときに、同じミスが二度と起こらないようにすること。
そのためには実際に行為を行ったものは正直に何が起こったのかを話す必要がある。

ちなみに上述の管制官の話では、アメリカでは管制官は免罪され、
その代わりに洗いざらい正直に話すシステムがある。
これが、日本に馴染むシステムとは思えないが、
看護師としては少しは参考にしてもよさそうだ。
また日本の医療の中には公務員もいる。
公務員であるか否かは、業務上の民事責任を考える上では重要になる。

まぁ「責任」なんてものは医療に限らず
あらゆる業務に共通するものなんですがね。車の運転とか。。。


*1・・・看護の前に卒業した衛生技術学科(臨床検査)の病院実習を思い出す

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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2008-04-13 14:24:30
”凝固”じゃなくて”凝集”ね

麻○のあの程度の実習では何の役にも立たないよ

輸血はできる限りやりたくないッス

ウチの病院では検体のことで看護師側がミスしても『こっちは忙しいんだからそっちがミが出ないようにしろ』と突っぱねられてしまうよ…

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Unknown (t-okayama)
2008-04-13 23:24:53
☆誰?BUHI

凝集ね、そうだった。
もう遥か昔の忘却の彼方だよ

大学の実習なんてひとつも覚えてないよ。
印象深いのは病院実習だね。

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