とある看護師の迷宮組曲

とある救命看護師。迷宮を彷徨い、雑記を綴ります。
管理者:T-okayama、TakoShun

横浜下町八景 <耽美小説風>

2007年07月27日 11時16分02秒 | 記憶の彼方
うちのおかんの実家は横浜の下町、藤棚(横浜市西区)である。
戸部駅から歩けば5分の藤棚商店街の通り裏に昭和幾年に建てられたトタンの家がある。
幼い頃から歩きなれた藤棚近辺は梅雨の時期を過ぎれば縁日が9日19日29日と「9」のつく日に開催され、多くの露店が灯を連ねた。
地元の下町小童に混じってワタシもよく金魚すくいだの、
りんごあめだの、ちんちん焼き(*1)だの、小銭を片手に通っていたものだ。
もう何年も足を運んでいないが、今時分は昔ほどの盛況ではないと聞く。
そもそも時代の流れで古き商店がシャッターを下ろすのを寂しげに見ていた自分を思えば、それも仕方のないことかもしれない。

藤棚商店街は隣の久保町商店街とあわせ、
西区戸部から保土ヶ谷区西久保町(*2)にかける間に位置し、休日には多くの人で賑わいをみせていた。
今でこそマグロの解体で有名な保土ヶ谷天王町の松原商店街が全国区に名を馳せているが、
ワタシの幼い頃、昭和60年代までは藤棚も久保町も同様の賑わいだったように思える。

近年放送された「喰いタン」の第一シリーズでコロッケが出てくる話があったが、
それはワタシもよく通った藤棚商店街の一角にある昔からある肉屋のものだ。
今でもたまに買い物に行くが、そのときにおかんの姉、つまりワタシの叔母が聞いて来た。
ちなみにその肉屋のせがれだか娘は叔母の同級生だ。
そんな肉屋はまだ健在だが、それは珍しいほうで行く度につくだ煮屋だとか
生肉店とか、中華屋までもが消えてなくなっている。

藤棚の正面から浦舟へ向かい関東学院の坂を下ると黄金町、
そこを左へ行けば日の出町、右へ行けばY高のある南太田・井土ヶ谷。
一方、裏側から御所山という交差点を抜け、まっすぐ進めば高島町。
交差点を右に伊勢山方面へ行き、紅葉坂を下りると桜木町だ。
どこへ行くにも車で5分程度、頑張って歩きでも15~20分程度だ。

戸部駅とは逆、商店街を挟んで反対側に相鉄西横浜駅がある。
ワタシは相鉄線を使うので、藤棚へ電車で行くときはよくこの駅を利用した。
駅を降りると目の間には国道1号、すなわち東海道が横たわる。
それを渡りまっすぐ進めば商店街の入り口だ。
ワタシが幼い頃、よくその道を一人で歩いていると途中の商店の脇に、
今はあまり見かけない成人雑誌の自販機を横目にするのが常だった。
小学生の自分が妙に気になり、あわよくば中を見てみたいと興味を持ったのは言うまでもない。
その向かいには怪しいピンク色の小店もあった。
そんな通りの脇を幼い子を連れた母親が暖かい日差しの中を歩いている。
だが、下町にはそんな光景が普通だった。
子供は幼心に大人に聞いてはいけないことを察し、世の中のそういう部分を学ぶのだ。
そういう部分に触れなければ学ぶことはできないのに、今はそれを隔離しようとする。
それは清潔を意識しすぎた日本人が、細菌やウィルスの脅威に対して
免疫がないと言われることに似ている。


そこにあった街並みも今は昔の話。
今では空き店舗が増えて休日でも人はまばらだ。
量販店の煽りをもろに受けたと言えば、松原に比した言い訳に聞こえるかもしれない。
だが、紛れもなく、寂れた商店街になった。
まだ残るなじみの店もいつまで続くか分からない。

街は生きている。
寂れた街の反対側では、今日も光の消えぬみなとみらいの街がある。
みなとみらいもここ20年の話。
ワタシにとってはどちらも変えがたい街なのは、言うまでもない。

だが、そこに、一方に肩入れできない侘しさがある。


*1:ちんちん焼き-小さいカステラパン。
         昔横浜の街のいたるところにちんちん電車=市電が通っていた。

*2:久保町-行政区分で「久保町」は西区、「西久保町」は保土ヶ谷区である。

友愛数

2007年07月24日 09時16分00秒 | ふと思ったこと
約数とはその数を割り切れる数である。
6の約数は、[1,2,3,6]の4つである。
よくよくみると6の約数は自分自身である[6]を除く他の3つ[1,2,3]を足すと6となる。
このように整数nのn自身を除く約数の和が整数nと同じになる数を完全数という。
完全数は6を含め44個発見されている。
6の次は28である。

約数の和を考えるともっと興味深い数が存在する。
220の約数の和は・・・1,2,4,5,10,11,20,22,44,55,110で284である。
一方、284の約数の和を見てみると・・・1,2,4,71,142であり、なんと220なのである。
このような数は他に(1184、1210)など10個発見されている。
このような互いの約数の和が一方の数になるロマンチックな数を友愛数という。

ちなみに今まで発見されている一番に大きな友愛数のペアは(66928、66992)である。


ワタシは数学という学問は限りなくロマンチックなのではないかと思う。
例えば大海原を見てはまだ見ぬ生物に思いを馳せる海洋学者、
星空を見てはその向こう、遠く向こうに何があるのか物思いに耽る宇宙学者。。。
理系の多くの学者はそこにあるものの不可思議に魅せられ、それに没頭する。

数学はそのもっとも根本的な学問でありながら、目で見えない。
人が「数」という概念を創り、「数式」や「公式」を用い謎を解いてきた。
それは現実には存在せず、「考え方」として頭の中にのみ存在するのだ。

つまり数学者は自分の脳の中に広がる無限大のひらめきと向き合っているのだ。

それは、海や宇宙と変わりはない。

目を向けた先が海であるか宇宙であるか生物であるか原子であるかの違い、
すなわち数という無限大の見えない世界に魅力が見えてしまったわけである。

数にまつわる不思議は他にもたくさんある。
とっつきにくいが、その奥深さは折り紙つきだ。
友愛数なんてロマンチックなことを言われると、
少しだけシアワセを分けてもらえた気がする。

なんちって。

夏の終わりのハーモニー

2007年07月10日 03時44分51秒 | メロディ
夏の終わりのハーモニー♪

この曲のオリジナルはワタシの音楽絶対不応期(*1)の時代のため、
知ったきっかけはカバーしたMOOMINのアルバムを聴いたことによる。

井上陽水作詞、玉置浩二作曲。

短大時代の友達が車でかけまくっていたので気がついたら自分もツタヤで借りていた。
それが、MOOMINのアルバム「NATURAL HIGH」だった。
もう4・5年前の話になる。
そのアルバムの中でとりわけ存在感を示していたのがこの曲だ。

実際に井上陽水のオリジナルを聴いてみると、MOOMINから入ってしまった不束者のワタシにとって
井上のあのねっとりとした歌い方は多少違和感がある。
MOOMINの高いスウィートヴォイスが、「真夏」「星空」なんて創造力をかきたてるフレーズにマッチするからだと思う。

のちに「リバーサイドホテル」もカバーしているが、こちらはまだ聴くに至っていない。
「誰も知らない素顔の八代亜紀」(*2)なんてことしか思う浮かばないが、
MOOMINのトーンでリバーサイドをどう歌っているのか、
たまにはツタヤで借りてみてもいいかもしれない。
しばらくMOOMIN聴いてないからなぁ・・・



*1 音楽絶対不応期:1980年代中盤から終盤に掛けて音楽的に興味のなかった時代。
          この時代の楽曲そのものをあまり知らない。
          ワタシの作った造語。
*2 誰も知らない素顔の八代亜紀:イメージを植えつけたという意味で嘉門達夫は天才だと思う。

よせてはかえす、人の心は波の色

2007年07月05日 02時51分55秒 | ふと思ったこと
悩みは誰にでもある。
些細な悩みでも、重たい悩みでも、それを乗り越えればそれまでの自分とは違う。
それが人の生き方ってもんだ。

同期の仲間数名と焼肉に。
仕事の責任もプレッシャーも重くなり、気軽に話せる同期が貴重な存在であることをみな知っている。
言葉だけでなく、雰囲気をも共有しているのだ。
それが居心地というのだろうか。

穏やかな日も、嵐の日も、言葉の上では、波は波で変わりない。
それは、変わりのない日常の一部と同じ。
看護師は看護師。やってる仕事は変わらない。

だが、風向き、潮の満ち引きで波は簡単に変化する。
同じ波は二度と来ない。
看護師の仕事も、同じ仕事の日は二度と来ない。


時間があったので海へ行った。
暗闇に漂う穏やかな海は、我々の心に何を教えるのか。

夏の始まり。
海に映る街の景色は、振り返る自分を映す鏡のように、
悩める子羊達をいざなっていく。

エクレアの食べ方

2007年07月02日 11時18分25秒 | ふと思ったこと
コンビニでシュークリームを手に取る。
ふと陳列棚を見るとエクレアも隣に並んでいる。

シュークリームやエクレアは今でこそ食べたいときにふと買いに行くこともあるが、
小さい頃はお客さんが来たときの手土産で口にできるくらいのものだった。
たまぁに気が向いたときにオカンが洋菓子屋さんで買ってくることもあったが、
基本的に人からもらうものってイメージがある。

エクレアについて調べてみると、もともとのエクレールって言葉は稲妻って意味らしい。
語源には諸説色々あるらしいがその中のひとつに、中のカスタードがこぼれないように、
またかけてあるチョコが溶けないように瞬く間に食べてしまうことからってのがある。

確かにワタシもエクレアを食べる速度はマッハだ。
一緒に入れたアイスコーヒーを一口も口にすることなく手元からエクレアが消えてなくなることも少なくない。
ありゃもう終わってしもうた。。。

一瞬でカロリー摂取。

カスタードクリームにチョコレート。
カロリーは相当なものだ。
甘味に関して、基本的に温かいものは少しの味付けで甘く感じる。
しょっぱいのは逆だ。
冷たいものをより甘く感じさせるには、相当の糖分含有量が必要なのだ。
アイスクリームが高カロリーなのはそのため。
世知がない事実である。

時折甘いものを食べたい衝動にかられる。
そのたびに「これは何カロリーだろか?」なんて頭によぎるのは
悲しさという感情以外に何も生まない。

そんな悲壮感漂う中、今、エクレアを口にする。
しかも高速