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退職したら(2021/5/17)

2021-05-17 21:41:58 | どん底に落ちたとき
日経新聞 2003/6/24 夕刊より


退職して心身の調子を崩す人は少なくない。夜の寝つきが悪くなったり、朝、スッキリと起きられなくなったりして、生活のリズムが崩れてくる。日中も体がだるくて仕方がない。最初のうちは仕事を辞めて生活のパターンが変わったためだろうと思うのだか、それにしても長すぎる。

 体のどこかが悪くなったのではと気になる。しかし、医者に行って検査をしても異常は見当たらない。ずるずると日が過ぎて気持ちばかりが焦ってくる。どこかに異常があればかえって安心できるのにと変な期待をしてしまう。

 何かしなくてはいけないと思うが、何をすればいいのか分からない。心の中にぽっかり穴があいたような感じがする。いままでとは違う自分にとまどい、こんな人間ではなかったのにと自分を責める。

 このような状態になるのは仕事一途にがんばってきた人に多いようだ。これまでは仕事の成果をあげて、回りから評価されることが生きがいだった。それなりに出世もした。あとは余生をのんびりと送るだけだと考えていた。

 ところが退職してみると勝手が違う。生活のリズムをとるのが意外と難しい。サラリーマンにとって背広は戦闘服だと言ったひとがいた。そうした人たちにとって、仕事にいかず背広も着ない生活は思いのほかストレスが多い。全てを奪われて一人置き去りにされたような心細さを感じる。

 頑張ってきた人に限って心細さを素直に認めることが出来ない。そのような自分を認めるとますます弱気になっていくようで怖いのかもしれない。しかし、そうしたときこそ自分の弱さを受け入れる勇気が必要だ。思い切ってまわりの人に相談すれば、新しい可能性が開けてくるはずだ。

(17年前、31年間勤務のT社をリストラで辞めて以降、自己紹介が必要な時、「T社をリストラされまして・・・」と手短・正確に説明している。気の毒がって、「会社が引き止めたが、自分の意思で辞めたんでしょう」と取り繕ってくれる人もいるが、「いいえ、リストラ、不要になったんです」と恥を忍んで白状する。瞬間、世間体が悪いと、心の痛みを感じるが、あとは、スッキリ、せいせいする。「そういうことなら、これから付き合ってやろうと」という人が何人かいて、今では、大事な飲み友達、釣り友達になっている。自分の弱さを受け入れる勇気、別の人生を楽しむよき種と、実感する。恥をものともせず、自分の手持ちのカードを相手にありのまま見せる、それで、新しい楽しい世界が開けると、つくづく思います。takeda)

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