「あぁそうだったんだ。」
気のせいか彼女の体から力が抜けたように小さくなった気がした
「お前と付き合った時に別に好きな人が居て、けどうまくいってなくて誰でもいいから付き合いたかった。付き合い始めは好きではなかったけど、楽しかったし一緒に居たいと思えた。だから結婚しよう!子供つくろうって!お前にいったじゃん?その時お前は会社に入りたてで仕事が楽しくて結婚もする気はないし子供もほしくないって断っただろ。それからすれ違っていったのかも。今もその時好きだった人とは続いてるけど、旅行にも行ったり遊びにもいったりしてる。けれど最近またうまくいってないんだよね。だからこんな勝手なことを言ったりしてるのかも。ごめんナ。自分勝手でごめんナ。」
言いたいことをいい終わった自分はそのまま黙った
何を言われても
自分のことを
否定されようが
罵られようが
別にかまわないと思いながら
改めて彼女のことを後ろから強く抱きしめた
一瞬とも数分とも分からない沈黙の後
彼女が自分の手を振り払い
笑顔で言うのだった
「付き合い始めた頃は誰だってラブラブだし、別れて時間が経てば相手のいいところしか思い出さなくなるよ。今みたいにね。けれど、またよりを戻して嫌なことがあればもう二度と仲良くなんかなれないよ。まぁどうしてもって言うなら今から20kgやせたらよりを戻すかどうか考えてあげてもいいよ!付き合い始めたころのようにかっこよくなればね。けど考える対象にしてあげてもいいだけだからね!!」
好き勝手なことを
自分勝手なことを言った自分を
彼女は受け止めてくれたような気がした
錯覚かもしれない
けれど
今日話せたことは良いことだったのかもしれない
「私は前しか向かない性格なんだよ。今まで付き合った人でいいなと思える人はたくさんいたけど過去を振り返っても戻らないって分かってるから。だから、未来で会える将来の人を楽しみにしてるんだ。」
そう言う彼女を笑顔で見ているしかなかった
そうだよねと
うなずくしかできなかった
彼女の言うことなんて
すぐ論破できるだろう
そして
無理やりでも抱きしめて
復縁を迫ればそれもできたかもしれない
けれどそれ以上に
自分の傲慢さがそれを止めてしまった
そして何より
迷いがある自分には
彼女を幸せにできないだろうと理性が欲求を差し止めた
「さすがにもう寒いし帰ろうか。次は焼肉だからね!この前約束した焼肉屋に連れて行ってよ!!」
そういって彼女は横断歩道を渡っていった
気づけばもう2時をすぎている
あっという間に時間が過ぎてしまっていた
おそらく
彼女と別れた時間も
こんな風にあっという間だったのだろう
暗闇に駆け足で消えていく彼女を見送り
もう一本
タバコに火をつけた
なんであんなことを言ったのだろうという自責
思いのうちすべてを吐露できたいう安堵
これから先自分は何を望むのだろうという不安
入り混じる思いを吐き出すように
白い息を吐きながら自分も暗闇へ足を進めた
ということでした
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