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[マンガ] オレ的「マンガ大賞2008」

2008-04-22 | マンガ

売り場の書店員さんが中心になって選ぶ、今一番”旬な”マンガ…ということで、3月28日に「岳」(石塚真一)が大賞と発表された「マンガ大賞2008」についての話題です…ちょっと遅きに失した感はありますが(汗)、少々お付き合い下さい

何がしたいのかというと、オレのブログでも取り上げた「マンガ大賞2008」のノミネート作品ですが、オレの目から見るとどうも女性読者の嗜好に偏っている気が強くしたので、ちょっとオレなりのノミネート作品を挙げさせて貰います

いや、別にオレ自身が大したマンガ読みでも無いことは重々承知してますし、実際、選に漏れた候補の中に高確率で存在したであろう作品を、ここでワザワザ挙げるのも僭越に過ぎるんですが…

”マンガ大賞”というキーワードを検索されて、オレのブログにヒットした方々に向けてちょっとした主張をさせて下さい(汗)

 *「マンガ大賞2008」における推薦と基本的に同じ条件(8巻以内で5作品)で選択してみました
 *作者名の50音順です

080422青木幸子 『ZOO KEEPER』(~5巻・講談社「イブニング」にて連載中)

青木幸子という作家についてオレは詳しく知りません…ネットで調べてみても、どうやら単行本になっている作品は本作のみのようです…「直木賞」という賞の本質が、本来は”新人作家に向けた賞”として設立されたという趣旨に照らせば、この作家が一番ノミネートされるに相応しいのかもしれませんね

内容は、動物園で飼育員として勤める主人公の女性が、”赤外線探知”を肉眼で行使できる能力を持っているという設定なんですが、”超能力を使って快刀乱麻のごとくビシバシ諸問題を解決していく”といったタイプの作品ではありません…能力はあくまで問題解決のとっかかりでしか無くて、主人公は周囲の仲間たちと共に、ひたすら努力と思考を重ねることで一歩一歩、解決に歩み寄って行きます

…そのストイックな姿勢が、作品に通底している確かなリアリティの描写に繋がっているのだと思いますね

そして描かれるエピソードは基本的にミステリーの体裁を取っているんですが、コアラ、ワニ、象、チーターなどよく知っているようで実は知られていない動物の生態や、人間が動物を飼育するということ、つまり動物園の存在そのものに対してビシバシ疑問を投げかけたりする内容が硬派で非常に面白いです

080422_2岩明均 『ヒストリエ』(~4巻・講談社「アフタヌーン」にて連載中)

作者の岩明均は「寄生獣」「雪の峠」など、長編も短編も内容を練りに練り上げる作風が特徴で、寡作ながらハズレを描くことも極端に少ない職人系の作家の一人として注目されています…って、マンガ読みの方にこんな説明は今更不要かと思いますが、一応(汗)

内容は、古代ヨーロッパにおいてかのアレキサンダー大王が史上最大の帝国を打ち立てた影で、書記官を務めていたエウメネスという人物に焦点を当てた歴史叙事詩です

書記官が主人公?…ということで、まずは面白さに懐疑的になってしまうかもしれませんが、このエウメネスという人物は非常に波乱に満ちた人生を送ってまして(作中で若き主人公が、オデッセウスの激動の英雄譚に自らの運命をなぞらえたりします)、淡々とした絵柄ながら、細部まで見事に計算され尽くしたドラマが詰まっています

そして遠い異国の地が舞台で、しかも歴史モノ…ということで、いきなり女性のマンガ読みの大半が敬遠してしまいそうですが(汗)、この作者はいつ・どこの時代を題材にしようが、”人間とは何か”という深遠なテーマを誰にでもわかりやすくエンターテインメントに昇華させて描写するのが得意なので、万人にオススメしたいですね

080422_3徳弘正也 『不老不死伝説 バンパイア ~近未来編』(~4巻・集英社「スーパージャンプ」連載中)

徳弘正也という作家はかつて少年ジャンプの黄金期において、「シェイプアップ乱」や「ジャングルの王者ターちゃん」などで下品さwを前面に出したギャグ作家としてその地位を確立しましたが、青年誌に移行してからはその下品さに加えて、高度な社会風刺とペーソスに満ちたSF世界観を持ち味とした作風に一大転換を果たしています…なので、昔のイメージを(悪い意味で(汗))引きずっている昔ながらのマンガ読みの方々には、是非とも一読をオススメしたいですね

内容は、不老不死で絶世の美女であるバンパイアの”マリア”を巡って、人間の欲望と野望と陰謀と、ほんの少しの希望がとことん渦巻くスリリングなマンガです

青年誌ということもあって、持ち味の下品なギャグ(ぶっちゃけ性描写)はかなり過激なんですが(汗)、この作者の前作「狂四郎2030」や「バンパイア」においてその描写は単なるギャグや意味の無いサービスシーンなどではなくて(そういうシーンももちろんありますがw)、とても必然性のあるシーンが大半なんですね…物語の上でセックスが物凄く重要な意味を持っているんです

あと確かにエロとグロの描写が陰惨な作品ではあるんですが、絵柄的には少年誌時代の見易いタッチのままなので、女性のマンガ読みの方も読んでみて欲しいです(…ただし、オトナ限定w)

最後にちょっと言い訳なんですが、この作品は厳密には、「~昭和編」という前シリーズと合わせて一つの作品になっていて、前シリーズ(全5巻)と合わせるとギリギリ8巻以内という条件をオーバーしてしまうんですが、どうしてもオススメしておきたいのでカンベンして下さい(汗)

080422_4日本橋ヨヲコ 『少女ファイト』(~3巻・講談社「イブニング」にて連載中)

デビューから10年以上、作者の日本橋ヨヲコは特に一般的にブレイクした作品があるというイメージはありませんが(あくまでオレの主観です…すみません)、「G線上ヘヴンズドア」や「極東学園天国」などの高校生の青春モノを得意とする作家です

ただ、この作者のマンガは読んでて胸がイタいんですよね…いわゆる、セカイ系というジャンルに分類するのが一番分かり易い例えだと思うんですが、キャラの若さゆえの内面や心理的な描写がとても鋭いので、こちらの気持ちが落ちている時などにうっかり読んでしまうと危険です(汗)

…とは言っても、この「少女ファイト」の場合は従来の強烈な描写は和らいでいるというか、キャラやストーリーが一般的な社会常識からは微妙に外れていつつもw、王道のスポ根マンガとして気楽に読める側面も大きいです

バレーボールというスポーツにしても、多数の登場人物が入り乱れる複雑な人間関係に立脚したコメディ・恋愛要素にしても、非常にしっかりしているという印象なので、安心してオススメ出来ますね

080422_5松本大洋 『竹光侍』(~4巻・小学館「ビッグコミックスピリッツ」にて連載中)

松本大洋というと、実写映画化された「ピンポン」や3Dアニメで完全再現された「鉄コン筋クリート」など、非常にクセのある独特な作風で知られた個性派作家ですが、今作の舞台は江戸時代で、やはり絵柄も内容もちょっと独特です

線が非常に少なくて、整合性という意味ではかなり崩れた絵柄なんですが、絵画というか絵巻物のような雰囲気が、非常にクセになりますね…コマ割りからして、定規でカッチリ引いたような線は皆無なので、とっつきは悪いかもしれませんが(汗)、決して読みにくい絵というわけではないと思います

内容は、とある事情で剣を捨てた若侍が(だから腰に差すのは竹光)江戸の町で暮らす様子を追いかけているんですが、江戸時代の文化、風俗、人情、そして少しだけ摩訶不可思議な世界がイキイキと描写されています…池波正太郎や、藤沢周平の世界がお好きな方には、文句なしにオススメ出来ますね

おっと、そうそう
この作品では時折、ひょいと顔を見せる”闇”が際立つ時に、えもいわれぬ快感が読者の背筋を駆け巡るのを忘れてはいけません…”闇”とは、主人公のものであったり、江戸の町を震撼させる辻斬りのものであったり、はたまた、名も無き町人のものであったりするんですが…まさに”人の世の闇”が、絶妙なスパイスとなって、この作品の印象を引き締めています

■■■
…とまあ、こんなカンジでオレ的「マンガ大賞2008」を書き出してみました

念のために書いておきますが、本家の「マンガ大賞」の方で挙げられていたノミネート作品がこれらの5作品よりも下だ、なんて言う気はさらさらありません(…が、敢えて、上だとも言いませんw)

以前のエントリにも書きましたが、あの一覧については、ほとんどの作品の単行本をオレも持ってますし、大賞を受賞した「岳」も素晴らしいマンガだと思います!

ただ、ちょっと、オレとしてはあのノミネートされた一覧にすら(オレの好きな作品が)挙げられていないと、なんか悔しかったので…

とにかく、これでちょっと溜飲が下がりましたw
もし、どこかで機会がありましたら、オレの挙げた5作品についても是非読んでみて下さい!

コメント (4)
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