拈華微笑 ネンゲ・ミショウ

我が琴線に触れる 森羅万象を
写・文で日記す。

 ヨーロッパの不二山

2021年08月21日 | 観自在

  私の持ち物の中で宝物的なものは、老師から頂いた書『独坐大雄蜂』ぐらいなものではなかろうか。

  禅修行をしていたある日、居士林の古参のメンバー、私を含めた4人が老師の部屋に招かれ、老師直筆の禅語の『書』4枚が畳の上に並べてあって

  各自好きなのを選びなさい・・・とのことであった。

  普段居士林の古参として直日(リーダー)とか侍者(直日補佐)、典座(お粥・茶係)などの役回りに対して、老師が私達をねぎらう意味で

  『書』をくださる…らしい。 さて、4枚の『書』は全部違った禅語で中でも一番有名でカッコいい・・・と、4人が4人欲しいと思ったのが

  『独坐大雄蜂』であった。今考えると、一番古参の先輩、渡邉さんにあげればよかったのに、ジャンケンで決めよう…ということになって

  結局、普段ジャンケンが弱い私のもとに『独坐大雄蜂』が来ることになった。

  掛け軸にしてもらって、スイスに来て私の部屋に掛けて30年目の数日前、引越し先の部屋数の減った新アパートの壁に掛けた時

  なんだか、ジグソーパズルのラスト・ワンピースがそこに収まったような気がした。

  それというのも、新アパートのテラスからは、旧アパートのテラスのように壮大なレマン湖の眺望はなく、ネズミの額ほどの湖が屋根と屋根の間から

  チラッと見えるだけであるが、なんとヨーロッパ最高峰の『モンブラン』がレマン湖の向こうにど~んと見えるではないか。

  公案としての『独坐大雄蜂』はさっぱりわからずにいたが、いつの間にか、この『書』に導かれてここに来たように思える。

             

  

 

      独坐大雄峰(『碧巌録』二十六則)

      僧が百丈懐海和尚にむかって、「如何なるか是れ奇特の事」(この世の中で、最も素晴らしいことは何ですか)と尋ねた。

      すると百丈は「独坐大雄峰」(この百丈山にこうしてどっかりと坐っていること)と答えた。