「(生徒数の少ない)小さな私立校でゼロからのスタート。こんなに早く頂点に立てるとは夢にも思わなかった」。ことし4月から校長も務める指揮官は、そう振り返った。岡谷工時代は準優勝や3位を何度か経験しながら悲願の全国優勝を果たしたが、新天地では昨年の8強から駆け上がった。
大半の選手が、岡谷市にある監督の家に下宿。学校へは監督が運転するバスで通う。「四六時中一緒で窮屈だと思うが、そのことによって生徒に伝わるものがある。それがうちの強さ」と話す。
日本一を自負する練習や細かい約束事のある日常生活に加え、渡辺(須坂市立常盤中学校出身)は「これ以上は入らないというぐらいご飯を食べて体をつくってきた」。すべては目標のため、厳しく自分を律してきた選手たちの努力が報われた。
◎全国高校総体=ハイライト 初Vの創造学園 セットごと際どい競り合い、選手成長
「本番で出せる力の度合いが、日増しに高まった。二百点の出来。めったに褒めないが、きょうは手放しで褒めてやりたい」。壬生監督が選手に最大限の賛辞を贈った。
準決勝で連覇を狙う宇部商を突破した。アタッカーの平均身長が188センチの相手に、最大の武器となる3枚ブロックや192センチのセッター渡辺の高いトス回しからの攻撃で対抗。指揮官が「スター軍団」と評する相手に組織力で食い下がり、最後はミスの差が勝敗を分けた。
迎えた決勝戦。主将の柳沢は「僕はスタミナがないので、3セットぎりぎり持つか持たないか。3セットで仕留める」と集中力を高めて臨んだ。第2セット序盤ではバックアタックを2度決めてチームを鼓舞し、スパイクでチーム最多の15得点を挙げた。
シーソーゲームとなった各セットで共通していたのが終盤の粘り強さ。壬生監督は「20点すぎからエンジンをかけて力を出す練習をしてきた」。緊迫した場面でミスも出るが、気持ちを切り替え崩れなかった。
「苦しい時に焦りがないと言えばうそになるが、自分たちが勝てる思いがどこかにあったから落ち着いていた」。渡辺の言葉が、練習の質、量ともどこにも負けないと信じて戦った選手の思いを代弁していた。