目指せ!ツール・ド・モンブラン。

フランス・イタリア・スイスを巡る旅「ウルトラトレイル・ド・モンブラン」UTMB他大会やハワイトレイル、国内のラン旅など。

UTMB体験記~Kさん02~ ウルトラトレイル・デュ・モンブラン2009

2009-09-20 | →UTMB & CCC体験記
2009年度大会では30名を越える日本人がツールドモンブランを走りました。
美しくも厳しいモンブランの旅。そんな旅のドラマを紹介します。

今回は機会あって知り合った方々にお願いして完走記・体験記を寄稿いただきました!
その中からUTMB166Kに出場した蚊取り線香(K)さんの完走記をご紹介します。

今回はレース後半、クールマイヨール~シャモニーゴールまでとなります。
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Kさんレース完走記前半 シャモニースタート~クールマイヨール



・クールマイエール - レフュージベルトーネ (82.4km)
通過時間19:35:47 順位1533
ここも重点区間です。暑さと78kmを過ぎてからの標高差800mの一気の登りは精神的にこたえます。友人ともここはがんばりどころだからと確認しあい、途中1回3分ほどの休憩を入れて予定通りの時間で乗り切りました。
この小屋からの眺めは本当に雄大です。

・レフュージベルトーネ -レフュージボナッティ (89.9km)
通過時間21:24:15 順位1509
UTMBのコース中ベストといってもいいすばらしい景色の中比較的平坦な道が続き、疲れていても走れる区間です。
友人が前半眠気のせいか5分ほど遅れましたが、後半で盛り返しました。

・レフュージボナティ -  アーヌーバ (94.2km)
通過時間22:43:05 順位1500
水平移動のあと、徐々に下っていきます。
アーヌーバでは食事をしっかり取りこれからの急な登りに備えます。
強風が予想されたので雨具の上を着用し、目出し帽、手袋もすぐに出せるようにしました。



・アーヌーバ - グランコルフェレ (98.8km)
通過時間24:34:00 順位1455
かなりの急な登りが続きますが、快調に登ります。
本来途中で短い休憩を入れる予定でしたが、強風で休めば体力を奪われると判断し体を冷やさない程度にゆっくり確実に登りました。
おそらく気温は5度以下、風速は10m以上だったと思います。
友人は彼女の生まれる前から始まった私の山の経験を尊重してくれ、ペース設定や休憩場所、休憩時間、エイドで食べるものまですべて私の判断に従ってくれて非常に助かりました。


・グランコルフェレ - フーリ (108.1km)
通過時間26:44:17 順位1470
山の反対側に下りると風も弱くなっていました。フーリまであと3km-4kmぐらいのところで道端に座り込み持ってきたおにぎりを食べました。
こちらの人たちはエイド以外で休憩することはあまりないためか、座っていると多くの人からサバ(大丈夫? )と声をかけられました。
コルドボンノムの登りで話をしたバスク人も通り過ぎていきました。
この当りから徐々に暗くなり始めライトをつけました。

残すところ2kmぐらいのところで友人が突然「あの、黙っていたのだけど、実はさっき足をひねって捻挫したみたい。どうしたらいい?この調子だと123kmまではいけるけどその先はついていけないと思う」と言い出しました。
私はこの時点で二人そろっての完走は間違いないと確信していただけにショックでした。
結局ここで二人は分かれて進むことになりました。彼女と無言で握手し私は先行しました。
まもなく車道に出て、2kmほどでフーリのエイドステーションでした。
ここで休憩をかねて10分ほど彼女を待っていましたが、現れませんでした。
たった2kmで10分以上差がつくのは怪我の具合がひどいのだなと心配になりました。

3-4日後にシャモニでお昼ご飯を食べたときに聞いたのですが、結局122.8kmのシャンペラックでリタイアしたそうです。そして集中力が切れたのか、シャンペラックへの登りでコースアウトしてしまい、だいぶ体力をつかったようです。
友人はハイキングガイドとしてお客さんを連れてこのコースは何回となく歩いているだけに通常では考えられないことでした。
このあたりが夜間走を含む超長距離のUTMBの難しさなのだと思いました。

・フーリ - シャンペラック (122.8km)
通過時間30:08:44 順位1304
私のもっとも嫌いな区間です。そんな精神的なこともあってかシャンペの登りではバテバテになって、2回ほど休憩しました。周りのランナーも何人かは休憩していました。
景色が無いことがつらいのだと思います。
また友人と別行動になったことで精神的な支えがなくなったことも大きいと感じました。

・シャンペラック - ボビーヌ (132km)
通過時間33:32:59 順位1187
エイドからはしばらく下り気味の林道が続き結構な人数を抜いて快調に進みました。
上り区間に入ってもしばらくは順調でしたが、周り人の力任せの登り方に影響され徐々にペースを乱し始めました。
疲れて休みたかったのですが、休むときっと眠る、眠ると寒さで下手をすれば凍死すると考え、つらかったですがゆっくりと登りました。
ボビーヌの1km手前ぐらいからは気温が急に低下し風も出て、セーターを着るタイミングが遅れ、震えが止まらない状態でエイドに到着しました。
エイドでは熱いスープ、お茶を飲み、体をこすり何とか体温を戻そうと30分ほど努力しましたが手遅れで、震えが止まりません。
下りとは言えこの先を一人で歩くのはかなり不安で、スタッフに申し出て椅子と毛布を借りて休憩しました。
ただしここでは休憩もリタイアもできず10分たったら出発するよういわれました。
10分過ぎてもまだ回復せず、非常に具合が悪いと伝えたところ、ドクターが来て、血圧や血糖値をはかりました。結果は異常無しとのことですぐに追い出されてしまいました。
そんなこんなでこのエイドでは結局1時間以上費やしてしましました。



・ボビーヌ - トリアン (138.2km)
通過時間36:39:49 順位1364
精神面でかなり弱気になってしまい、のろのろ、ふらふらと進みました。
1時間も歩き標高が下がるとやっと体も温まり震えも止まりました。
1時間半ぐらいでトリアンにつく頃には体調も回復し、完走を目標に気持ちを入れ替えました。

・トリアン - バルロシーヌ (148.6km)
通過時間40:07:19 順位1363
ここはコターニュまで結構な急な登りです。
先ほどの時間のロスもあり、ここでしっかり登らないと制限時間が心配ですので休み無しで登るつもりでしたが、30分もすると気持ちが切れてしまい、結局登りで3回(20分)休みました。
ここの登りではフィンランドからハイキングに来ていた大学生と思われるかわいらしいお嬢さんと2度ほど話したのだけが気分転換になりました。やさしい表情とソフトな口調には心が和みました。
この区間はボビーヌで受けた精神的ダメージがまだ回復していなかったと思われます。

コターニュからは下りになり、時間が気になっていたので前を走っているランナーに必死にくっついていきました。結局走りっぱなしでバルロシーヌに到着しました。
制限時間の25分ぐらい前でした。

・バルロシーヌ - テートオーバン
通過時間43:00:07 順位1335
標高差約1,000mの最後の登りです。最初の3kmは少し時間が気になりましたが、コルデモンテで完走を確信しました。
途中反対側から歩いてくる家族づれに、「奥さんはどうした? 」と聞かれました。
前半私たちと同じペースで歩いていた人のようです。
一瞬、なに?と思いましたが友人のことだと気がつき、「怪我をしてリタイアした」と答えるとさびしさがこみ上げてきました。

コターニュまでの登りではあんなにばてたのに、この登りは好調で思った通りのペースで休みなく登りきることができました。

・テートデュバン - フレジェール (159.5km)
通過時間43:49:28 順位1324
コースガイドを見て下る一方と思っていましたが結構登りがあり道も走りにくく、1時間を予想していましたが15分ほどオーバーしました。
フレジェールでは、シャモニの制限時間まで2時間以上残っていたため周りのランナーは椅子に座って談笑している人も多かったですが、私は休むことなく進みました。



・フレジェール -シャモニ (166.4km)

小石の多い歩きにくい道をひたすら下ります。もういやになったころにやっときれいな花と景色の楽しめるカフェフローリアを通過します。
あと3km30分でゴールですから周りの人たちも明らかにのんびりとし始めました。
ゴールに備えてか、ウエアを着替えている人も何人かいました。
私もここからゴール1km手前の車道まではゆっくりと歩きました。
時々ゆっくり走って追い抜いていく人もいましたがごく少数です。

・ゴール
通過時間45:18:48 順位1269
ゴール手前の1kmほどの舗装道路に出てから走りました。途中Oさん、Aさんが応援に出てくれていて後ろを走ってきてくれました。またあと500m地点ではSさん、Aさんも沿道で応援してくれていました。
多くの人の声援を受け少しばかりヒーロー気分です。
街中に入り右に曲がって50mでゴールです。
ゴールしたときはあまり何も考えていなかったと思います。ただ105kmまで同行してくれた友人が隣にいなかったのがさびしく残念でした。
そして憧れだった完走ベストをもらい、幸せな気分でビールを飲み干しました。
うれしさというよりもほっとした気持ちが強かったと思います。

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・そして今

この文書を書いている9月15日、レースを終えてまだ2週間と少しですが、ずいぶんと昔のことのような気がしてなりません。レース中ですら10km手前のことがずいぶん昔に感じられました。
166km45時間は本当に長い旅でした。
昨年の11月に体を壊してしまい出発直前まで入院、通院を続けていたことを考えると、絶対に大丈夫とは思っていましたがそれでも完走は夢のようです。

まだ体は疲れていますが、気持ちは来年に向かっています。
次はチームレースであるPTR(来年は350km?)が目標です。
まずはメンバーを募ることから始まります。
105kmまで同行してもらった友人には、来年もう一度UTMBをやるからと残念ながらあっさり断られてしまいました。
来年は誰が旅の道連れになってくれるのでしょうか。どんな出会いがあるのでしょうか。そしてどんなドラマが生まれるのでしょうか。今から夢が膨らみます。


次回はKさん流レース完走のノウハウ編です!

※ルートMAPはウルトラトレイル・ド・モンブラン公式サイトからのものです
※レース中の画像はUTMBに出場されたはっしーさんからご提供いただきました。ありがとうございます

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2 コメント

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Unknown (あんきも)
2009-09-21 01:40:29
文章に引き込まれ、あっという間に読んでしまいました。
Kさんほどの経験や強い精神力を持っても、心細くなる事があったんですね。
貴重なレポートを有難う御座いました!

私もBovine登りで目が回り、エイドで30分寝かせてもらってましたが、あそこにDrが居てくれたのはラッキーな事だったと思います。
強い精神力 (s)
2009-09-26 10:42:30
あんさん こんにちは。
ツールはまさにレースというよりも旅ですね。
いろいろ予期せぬ事が起きます。
だからこそ、飛びぬけた魅力があるのだと思います。

インタビュー編もお楽しみに!