目指せ!ツール・ド・モンブラン。

フランス・イタリア・スイスを巡る旅「ウルトラトレイル・ド・モンブラン」UTMB他大会やハワイトレイル、国内のラン旅など。

UTMB体験記~Kさん03~ ウルトラトレイル・デュ・モンブラン2009

2009-09-21 | →UTMB & CCC体験記
2009年度大会では30名を越える日本人がツールドモンブランを走りました。
美しくも厳しいモンブランの旅。そんな旅のドラマを紹介します。

今回は機会あって知り合った方々にお願いして完走記・体験記を寄稿いただきました!
その中からUTMB166Kに出場した蚊取り線香(K)さんの完走記をご紹介します。

今回はUTMB完走のノウハウをKさんに伺いました。
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Kさんレース完走記前半 シャモニースタート~クールマイヨール



1.完走するために必要な体力レベル

個人的にはフルマラソンを4時間半未満で走れて、山歩きの好きな人なら完走できると考えています。5時間でもおそらく大丈夫だと思います。

私の過去10年のフルマラソンのベストタイムは4時間39分、今年のベストは4時間40分です。
100kmの完走はまだありません。
(2008年おんたけ100km-実際は97km-16時間49分、2009年野辺山は96.5km地点で13時間35分でリタイア)
山岳レースでは2008年の日本山岳耐久レースが17時間22分でした。

足の筋力はまったく使う必要が無いといっていいと思います。
私はレース中、レース後とも足の筋肉痛はまったくありませんでした。

意外と思われるかも知れませんが、このレースでは特別な体力は要求されません。
平地の100kmレースを12時間以内ぐらいで走れる人ならば準備は特に必要ないと思います。

2.完走するための必要な能力

いちばん要求されるのはゆっくり長く歩く能力で、これは走る力には正比例するものではないので、このためのトレーニングを必要とされます。
ともかく山に行き、1日に30-40km程度の山歩きをすることが歩く力の養成にいちばんだと思います。

次に必要なのは山歩きの総合能力で、もっとも体力を使わないですむ足のはこび方、山の上り方、下り方、また装備の的確な使い方などをマスターする必要があります。
私は効率的かつ安全な登り方として、登り1歩で稼ぐ高さを10cm-15cmとしています。これは標準的な歩き方の日本人のほぼ半分だと思います。
総合能力の養成方法について具体的に説明することは難しいのですが、重荷を背負っての夏山縦走、冬山、岩登りなどを経験していると断然有利です。

最後に見逃しがちですが、2晩寝ずに歩き続ける力も重要で、これは練習して身に着けにくい能力なだけに、厄介なところです。

3.トレーニング

私の場合トレーニングは3月から7月までの5ヶ月間行いました。
月間150kmのランニングと50kmのウォーキングを目標としました。
スピードは時速8km台が目安でした。
結果的には7月以外はほぼ目標をクリアー、全体としては8割方できたかなといった感じです。
期間的には半年あれば十分で、1回のトレーニングを最低10km以上ぐらいにしたほうがいいと思います。ただし私に関していえば10km未満の練習日が圧倒的に多かったです。



4.装備

通常のランニングや山歩きの装備で十分です。
よい(高額、高機能な)装備をそろえるのではなく、自分の持っている装備の機能を最大限引き出して使う工夫が必要です。
UTMB,CCCのために必要な装備というのは無いといっていいと思います。

ひとつ重要なのはヘッドライトです。意外に思われるかもしれませんが、明るくみえるものは道を間違える原因になります。これはあかるいと光があたったところだけがよく見えてしまい、少し離れたところがわかりにくく、結果的に正しいルートを探しにくくなるからです。今回のレースで道に迷った人が多かったのはこんなところにも理由があると考えています。
私の場合若干暗めのライトを使い(電池の残量で調整します)、道がわかりにくくなったときにはライトを消して地形を見ています。

5.完走のための戦略

私の場合事前に区間ごとの目標タイムを設定して、107kmのフーリまでは時計それほど頻繁に見ることはありませんでしたが、ほぼ予定通りに歩きました。
自分の実力のあった通過タイムの設定と実際の通過が大切で、設定のためには普段から、たとえば距離が7kmで標高差登り1,200m、下り200mのコースは自分の場合は2時間20分かかる、といった感覚を身に着けていることが必要です。
自分の力に合ったコース設定ができ、それをある程度守って歩くことが重要です。

次に重要視したのは休憩時間で、前半は1回7分、後半は1回10分に設定し、基本的にこの時間内の休憩としました。休憩地点を20箇所とすると1回3分余分に休んだだけでも1時間ですから、ぎりぎりで完走を目指すランナーには大きなポイントです。

装備については何を持つかが問題になります。レース前日、当日の天気予報をチェックしてそれにあわせた装備を過不足なく持つ必要があります。
私は今回のレースでは天気予報をもとに、2日目の午後から気温が低下し風も出るとの予想を立て、クールマイエールで防寒具として長袖のシャツに加えて薄手のセーターを持っていきました。
結果的にはこれが正解でセーターがなければ2日目の夜は乗り切れなかったのは間違いありません。

このあたりのところはランニングの力よりも山登りの力が要求されるところで、山の経験の少ない人は、レース前の半年ほどは山に行く回数を増やすべきだと思います。
こういうと走るためのトレーニング時間が少なくなると心配になるかもしれませんが、フルマラソンの記録を10分短縮するより、フルマラソンのタイムの何倍で走れるようになるかが重要だと思います。
今回私はマラソンにかかる時間の10倍弱で走りましたが、3時間台前半で走る友人数名は13-14倍かけています。
この人たちがフルマラソンで10分短縮し結果的に2時間20分(10分× 14)短縮するのは大変ですが、倍数を1減らすのはおそらくそれほど難しくなく、それだけで自身のマラソンの時間分である3時間を短縮することができるので、倍数を減らすトレーニング(山歩き)のほうがはるかに効率がいいはずです。
山登りをしていれば自然に倍数が少なくなっていきます。

また疲れや体調に異変が起こったときの対応ですが、基本的には我慢するしか手はありません。
私は今回100km以降、持病の胃の痛みで苦しみましたが、ともかく我慢しました。
107km以降はほとんど固形物を食べられず苦労しました。
もし次回参加するならば、胃薬と痛み止めは持っていくつもりです。
レース後に長距離走のときにチーズを食べると体の中で乳酸とチーズの成分で化学反応が起こり胃痛を引き起こすという話を聞きました。
初めて聞く話ですが、確かにUTMBでは日本のレースよりも胃痛で苦しむ人が多いような気がします。これについては専門家の意見を聞けたらと思っています。
眠気対策としてはカフェインを使用しましたが、2晩目にはいると効果を実感することはありませんでした。
レースを放棄したくなった時や、何かトラブルが発生したときにはとりあえず10分歩いてから考えることにしていましたし、実際そうして何とか乗り切りました。

これが私の2009年の感想およびそのためのコツと思えるものの記録です。
ご参考になれば幸いです。


次回はUTMB質疑応答集!Kさんの強さに迫ります

※ルートMAPはウルトラトレイル・ド・モンブラン公式サイトからのものです
※レース中の画像はUTMBに出場されたはっしーさんからご提供いただきました。ありがとうございます

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6 コメント

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大変参考になります (荒鷲)
2009-09-21 10:10:38
レース前から蚊取り線香さんがおっしゃっていた通りです。

残念ながら、自分はシャンペ過ぎから、眠気=精神的ダメージや幻覚との闘いに負けてしまいたした。でもあのままストップかけられなかったら、ケガしていたでしょう…

今回、自分が無事に下山し、蚊取り線香さんの待望のゴールを500m手前でAさんと応援出来て良かったなと思います。


でも、ゆっくり制限時間を目指していたので、足首を捻る誤算はありましたが、筋肉痛は全くありませんでした。蚊取り線香さんのペース配分を参考にして良かった。

自分に残された、あと36kmは果てしなく遠いものと思いますが、今年のハセツネからまた再スタートを切ります。

自らの貴重な経験を語っていただいた蚊取り線香さん、またその機会を作ってくださったSUUさんに感謝いたします。
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あと36km (s)
2009-09-26 10:47:38
荒鷲さん こんにちは。
足の調子は如何でしょうか。
蚊取り線香さんの記事を読むたびに、あの時の思いが蘇ります。美しくも厳しい旅!

僕はラフォリーで止めたこと自体は悔やんでいませんが、ツールへの想いが強くなったことだけは確かです。
またあの舞台に向けて頑張りましょう!

ではでは
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教えてください (みるく)
2009-10-25 04:44:48
はじめまして。UTMBに憧れて真面目にエントリーしようと考え情報収集している者です。とても参考になり感動しました。ところで、私の一番の問題はエントリ方法がわからないということです。公式HPを翻訳しても良くわからずつまずいています。どんなふうにやればよいのでしょうか?ある程度教えていただけると嬉しいです。お願いです。
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UTMBに憧れて (s)
2009-10-25 17:20:11
みるくさま こんばんは。
はじめまして。suuと申します!

僕も去年は手探りでした。
ブログを知り合った方々に助けられて今年のcccに出場しました。出てみた感想は「素晴らしい」の一言に尽きます!

2010年レースのエントリーは12月下旬からスタートします。
レースに出るためには、日本の対象レースを完走しているのが要件です。
UTMBが4ポイント、cccが1ポイント必要です。
3週間のプレエントリー期間後に料金振込みを経て本登録扱いとなります。
詳しくは、期日が近づいたらブログでも書くつもりです。

今は以下の順序で気持ちを盛り上げては如何でしょうか。
い:10月31土のNHK「ワンダーXワンダー」UTMB特集を観る
ろ:11月29日のNHk-BS「ハイビジョン特集」でUTMB大特集を観る
は:気分が盛り上がったところで、12月23日から始まるプレエントリーに申込!

何かあれば気軽にコメントください。僕以外のUTMB経験者もコメントバックしてくれる可能性ありです 笑

ではでは
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エントリー (蚊取り線香)
2009-10-25 18:19:52
ミルクさん、こんにちは。
エントリーの方法ですがホームページに詳しく説明されていますので読んでみてください。(www.ultratrailmb.com→enrollment
→enrollment2010でエントリーについての説明のページにアクセスします)これで疑問点は解消するはずですが、もしわからないことがあれば大会事務局にメールで問い合わせましょう。
このブログ上で質問していただいてもかまいません。Suuさんがおっしゃているように、多くの今年の参加者から回答をもらえると思います。疑問点はプリエントリーの始まる前までに解消しておいたほうが安心です。
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ありがとうございます (みるく)
2009-10-27 00:56:37
エントリー方法について回答していただきましてありがとうございます。今年は北丹沢、おんたけ100、ハセツネをなんとか完走しましたのでポイントは大丈夫です(すべて初体験で、タイムは遅いです)。まずは大会ホームページを理解できるように頑張って読んでみます。また質問させていただくかもしれませんがよろしくお願いします。週末のTV放映が楽しみです。
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