鉄人 須藤 將のホームページ

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「水素ロータリーがル・マンを制覇する日」その206

2009-11-28 06:20:27 | 車・バイク
2010年3月、ホンダは鈴鹿サーキットで、24時間の耐久テストを実施した。
15スティントまでは、タイヤのパンク以外は何事もなく走行した。
16スティントを過ぎた時点で、1号車の燃料電池スタックの発電量が少し低下した。2号車は、まったく異常がなかった。
19スティントを過ぎた時点で、1号車の燃料電池スタックの発電量が320Vまで下がり、ラップタイムも悪化した。ピットインして、チェックしたところ、燃料電池スタックそのものに異常はみつからなかった。リチウムイオン電池が少し熱を持っていたがそのまま走行させた。
21スティントを過ぎた時点で、1号車の燃料電池スタックの発電量がさらに310Vまで下がった。
22スティント目に入ったとき、燃料電池スタックの発電量が300Vまで下がったが、そのまま走行させてデーターをとることにした。
24時間を迎えた。
2号車は、ノントラブルで走行を終えたが、1号車は、燃料電池スタックに問題を生じた。
走行後、1号車の燃料電池スタックを分解検査したところ、
セルそのものに異常はなかったが、セパレータの溝の模様に問題があることが判明した。
セパレータは水素と空気がイオン交換膜の全面にわたって一様に接触して流れるようにする。そのためセパレータにはガスを全体にまんべんなく流すための溝が彫ってある。溝の深さは0.5mmほど、その幅は1から数mm程度である。この溝に溜まる酸素(または空気)極とイオン交換膜との境界にできる水分を除去しなければ、この水分が邪魔して反応が進まなくなる。
1号車は、2号車よりコーナリングGが大きいためか、溝に溜まる水分が抜けなくなっていた。
小林は、ホンダ技術研究所のスタッフに、大きなコーナリングGが加わっても水分が抜ける溝パターンの研究を命じた。

ホンダ技術研究所では、燃料電池スタックのセパレータの溝模様をCGで数百種類描き、高Gが加わったシミュレーションを行なって、大きなコーナリングGが加わっても水分が抜ける溝パターンを数種類見つけ出した。その溝パターン数種類をレーザーで試作加工した部品をテストして、溝パターンを決定した。
5月末に、新しい溝パターンを採用したセパレータの燃料電池スタックが完成し、すぐにH22HRに搭載され、鈴鹿サーキットで確認走行を行なった。
結果は上々で全く問題ないレベルに仕上がった。
その確認走行時に、電池スタックからの電流を新DC-DCコンバーターで700Vまで昇圧して走行してみた。700Vで長時間走行することは無理だが、30分は十分走行でき、何ら問題が生じなかった。レシプロエンジンで言えばブースターのようなものである。
短時間なら、700Vで730ps相当の出力が得られることになった。
再度、鈴鹿サーキットで24時間耐久テストが行われ、水分が抜けることが確認されて、3台のル・マンカーが送り出された。

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