鉄人 須藤 將のホームページ

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ロータリーエンジンとモータースポーツ その35

2009-08-24 07:02:52 | 車・バイク
マツダスピードチームは、1982年のル・マン用に新しい254 i RX-7シルエット・フォーミュラを開発した。空力特性がさらに向上し、風洞でCd=0.35を達成し,ユーノーディアで277km/hをマークできる実力になった。搭載する13Bエンジンは、広島本社から供給すると共に松浦もチーフ・エンジニアとしてル・マンに出かけることになった。松浦は、予選ではパワーのある燃料噴射の13Bエンジンを使用、本番では信頼性を重視してキャブレーター仕様13Bエンジンを採用する作戦で臨んだが、オーガナイザーから本番でも燃料噴射の13Bエンジンを使用するようにと勧告された。急遽本社から、燃料噴射を取り寄せる手配したが、大橋監督の折衝によりオーガナイザーが軟化して、本番でウェバー気化器付きキャブレーター仕様13Bエンジンが認められることになった。

予選1日目に82号車の寺田が4分04秒74をマーク、しかし、83号車のトムウォーキンショウにタイムがでない。2日目、急遽、エンジンを60分で載せ換え、トムウォーキンショウがタイムアタック。4分11秒29で無事予選を通過でき本番出走の55台の中に入った。
2台の254 iが最後尾のグループでスタート、順調に順位を上げていき、83号車は一時総合8位まで進出したが、13時間と40分、180周のミュルサンヌで燃料系のトラブルによりストップした。
82号車は、83号車より後方に位置しており、順調に4時間目に25位、8時間目に18位、12時間目に16位と徐々に順位を上げてきていたが、2日目の朝を迎え、トラブルが発生し始めた。リア・スタビライザー点検、パッド交換、リア・ダンパー交換、午前9時から約1時間を要したトランスミッションのオーバーホール作業で給油を含めピットに3時間03分止まっていた。その後順調に走っていたが、ゴールを目前にした282周目、ロータリーエンジン特有の“スピッツバック“現象、時間がたち距離が伸びてくるとアペックスシールの周辺にカーボンスラッジが溜まり、アペックスシールの動きが阻害され、爆発行程の燃焼ガスがアペックスシールのトップから抜けて後工程の吸入室に漏れる現象で、これに気付いた寺田は、もう1周して途中で止まったら、今までの苦労が水の泡になると考え、3時52分ゴール手前のアルナージュでチェッカーフラッグが振られるのを待った。計器版のデジタルウォッチが壊れているかのように遅い。コースマーシャルが飛んで来て走れの催促。寺田は訴えた。コースマーシャルは理解してくれた。やがて、コースマーシャルが、チェッカーフラッグが振られていると告げにきた。寺田は祈るような気持ちでスタートボタンを押した。エンジンが蘇った。息をつきながらチェッカーを受けた。マツダスピードチームとして総合14位で初完走である。
松浦は、完走までル・マンの階段を登ってきたが、優勝なんてはるかかなたの夢物語に過ぎないと思った。しかし、いつに日にかという想いはあった。

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