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(07/06/01)

ゆれる

2006年10月26日 | 丁稚 定吉の映画日記
わてが丁稚の定吉だす。
ミニシアターでロードショーされている「ゆれる」を見て来ました。
前評判に違わぬ本格派の心理劇でした。凶悪事件が時効を迎えるたびに時効の壁なるものが現われますが、その壁がなぜ必要なのかもよく分かります。結末でドンデン返しがあるのですが、それとて「ゆらぎ」であって事実とは限らないのですから。
弟に思いを寄せる女に思いを寄せる兄、弟と女がデキてしまったことに気付いた後に3人で行ったつり橋から女が落下死。遠くから見た一瞬の出来事の真実とは?
しかし弟を演じるオダギリジョーの上手さにも驚きましたが、それよりも兄を演じた香川照之でしょ。以前からこの人は「狂った日本兵」を演じたら映画史に名を残す人だと思っていましたが、それだけではない演技の幅が広さを思い知らされました。「狂った兄」もハマリ役だったんですね。狂った役しか出来ない、という意味ではなくて、動的な狂い方と静的な狂い方、そして狂ってるのかどうか微妙な狂い方、狂い方一つでこれだけ演じ分けられる人はいないでしょう。そしてその狂気の中に、狂気に至るまでの人生を見せてくれます。
この映画は徹頭徹尾、弟視線で描かれていますが、ほとんどシナリオには描かれていない兄のそれまでの生活や逡巡の一部始終が香川照之の演技から見て取れます。単純に嫉妬したわけでも、憎さだけで唾を吐きかけたのではないわけでも、犯罪者が無罪を勝ち取るために嘘をついたのでもないことが伝わってきちゃうんですよ。事故の瞬間を見ていない観客が分かっちゃうんです。
弟視線のストーリーは弟視線の映画を見なければ分かりませんが、兄視線のストーリーを弟視線の映画から見て取れる、この違い。
まぁでも真実は分からないんですけどね、誰にも。
ただリセットしようとする兄と追いかける弟がいるだけ。それと、いい方にゆれた「真実」を真実だと信じる心理行動に心当たりがあって、深層心理に押しこめていたイヤな記憶を思い出した観客と。

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