こちら土産探偵団（＾０＾）

ここは休憩室。

・・・とは言っても、休憩する場所というよりは、御喋りする場所かも。

矢木さんが、ちょっと元気がなかった私の為に慰労会を開いてくれた。すなわち、仕事終了後のお茶会だ。

 

『お土産』

この言葉は、グロッサリー女史にとっては、特別な意味を持つ。

「私の宮崎土産、どうなったんだろう・・・？」

そこから矢木さんの推理が始まった。最初は、店長が全部、自分のものだと勘違いして自宅へ持ち帰ったのかもよ～と言っていた矢木さんだったが、

「二箱もですか」

という私に、う～～ん、と考えた。

「そういえば、母の日にね、末永さんと岸辺さんと私の三人に、店長からプレゼントがあったんよ。メーカーさんからの試食用だったみたいだけど・・・ね。セットになってて、結構、良かったよ。お休みだった梅子さんと、遅番だった鈴木さんには又の機会に・・・って。他の店舗の店長によっては一人で貰ったりする人もいるみたいだけど、ウチの店長、そういうタイプじゃないもんね。皆に配るじゃない？最近、忙しくて、ただ単に、忘れてるのかも・・・ね」

梅子さんも思い出したように言った。

今回、母の日プレゼントがもらえなかった梅子さんと私には、

「次回何かプレゼントしますから、期待せずに待っていてください！」

という事だったそうだ。

「いいえ、おおいに期待します」

と、梅子さんは答えたというから、たいしたものですわ。

 

「きっと、父の日が来たら、店長も思い出すよ」

「まあ・・・中身は日持ちするクッキーですけど・・・。そのまんま東知事の顔がプリントされた・・・。美味しい云々で選んだんじゃないんですけど、箱には知事が走ってる絵が描いてあって・・・。

『私、宮崎のために走ります』

・・・っていう・・・。反応が見たかったんですよねえ～。面白いから皆にも見せたかったな～」

すると、矢木さんの目が光った。

私が宮崎へ旅立つ前日、矢木さんが、

「そのまんま知事のシールが欲しいね」

といっていた事をこの時、思い出した私であった・・。

実は、行く先々の土産屋でシールは売ってないか聞いてみたが、

「皆さん、パッケージを切り取ってるようですよ」

という店員の返答だった。

クッキーは一枚一枚、そのまんま知事の顔写真付き袋に入っているから、これをキープしてもらうしかないな・・・矢木さんには、この包装紙で我慢してもらおう・・・と、その時、諦めたんだけれど。

「それで、店長、何か、コメントした？？」

「いいえ。何も」

「それは　つまらないね」

「う～～～ん」

矢木さん、必死で消えた土産の行方を推理中・・・。

「分かった！　きっと店長、私達グロッサリーには、すでにお土産は配ってあって、これは事務用にくれたと思ったんよ！

店長のことだから、きっと、

ウチのパートさんが宮崎へ行ってこれをくれた・・・

とか、言いながら、本社に持っていって、お茶したんじゃないの？

きっと、本社の人達とだけで、そのまんま東を見て、ウケとるんよお～～！ぎゃはははっ」

にゃっ・・・にゃるほど。

言われて見れば、末永さんの場合は、自分でグロッサリー女史には土産を配布し、店長には別に箱を用意し、

「これは、男の人達でどうぞ」

といって、手渡していたっけ・・・ね。

矢木さんの推理は頷けるし、面白い

そして、それよりも更に可笑しいのは、現物の箱の「そのまんま東知事」の絵を見てもいないのに、店長と本社の人たちがウケテイル様子を思い浮かべ、矢木さん自身も大ウケしていること。

そうだ！

矢木さんは、携帯電話もパソコンも持っている！

その内、私が選んだ「そのまんま知事」のベストショットを写メールしてあげよう。

 

翌朝・・・。

店長室を覗くと、店長はお休みなのに、机の上には消えた筈の土産を入れて渡した紙袋が置かれてあった。

「昨日、土産、土産って、鈴木さんが騒いでたから、隣にいたレジの社員にも聞こえてただろうし、店長の耳にも・・・・？それで元の位置に戻したとか・・・？？？

ぎゃはははっ・・・・！」

 

でも、紙袋だけ・・・？しか見えなかったけど。

まさか、店長室へ入っていって、キョロキョロする訳には・・・いかないもんねえ。

（探偵ついでに、変身した矢木さん）

これなら、誰にも見つからないわよねっ

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