ヒュドラと同じように、大勢による暗愚の状態を表す。頭と尾が八つある大蛇。この怪物は若い女性を食い物にしていたが、一人の英雄の知によって撃退された。
頭が二つという状態は、知恵の倍増を表すことがあるが、三つ以上になるとそれはもう責任の放棄である。多数の頭はみな、他の頭に責任を押し付けられると思って好きなことをやり始める。
大勢の中にいると、馬鹿は安心して、自分の行動の起因を、他のやつに求めるのである。要するに、あいつがやっているから自分もやっているのだ、誰かがやっているから自分もやっていいのだ、だからどんなことをしてもいいのだという心理である。
みんながやっていればなんでもやっていいのだと思い込み、ひとりではとてもできないことをやることがある。大勢でやれば、びっくりするようなことさえ平気でできる。
八岐大蛇は美女を好んだ。それを手に入れるために結託し、人間の男が集団で馬鹿をやったという暴虐の象徴である。
多頭の怪物は、あまりにも凶暴になる。自分の力を錯覚して、狂うからである。