第七回橘俳句賞受賞作品(平成１７年)

秋高し

　湯河原
梅林を透す日差しが空の色　
　安曇野
山葵田の水清ければ音も澄み
木の独楽の色鮮やかに回りだす
あせらずに只ひたすらに田草取る
鳴るまでを草笛替えて吹き続く
秋高し図書館に通う脚軽き
敗戦日迷迷として生を選ぶ
花束の中より散らばる実千両
茄子の苗己に見立て骨太に
蓮根掘る節を連ねる逞しさ

若布

荒波の若布は青を育みし
風に乗り水木の花は白く舞い
棕櫚の花房の黄色の重きかな

穀雨

願いこめ穀雨の音に夜もすがら
庭番を焼き物蛙に目借時
緩やかに形を変える春の雲

独活

野趣豊か男料理に山の独活
青麦を生けし窓辺に風そよぐ
永き日の槌の響きに木の香る

八重桜

一樹にて八重の桜の人を呼ぶ
藤房を巧みに潜り香りを揺らす

蜂

目印を背負いし蜂の蜜を追い
春の灯のカーテン透し淡き色

山葵

清流の音に育ちし山葵かな
陽の目受け色つき染めし茗荷竹
爽やかに喉すべり行く海雲かな

雪柳 (青樹句会）

雪柳白の重みに風起こし
風が這い揺れて紫雲英の花と知る

幹老いしいたわる枝は花万朶
十二色操りパンジーの色を出し