残暑

じりじりと残暑居座る日の長さ
夏の蝶別れを惜しみ舞い納む
百日紅街路潤す花たわわ

草の穂

草の穂の思い思いに頭垂れ
秋海棠花茎揃いの紅に染め
特急の風に波立つ泡立草

鳳仙花

鳳仙花名付けし店に増え続け
そよ風に黄花揺るがす女郎花
竜胆の光と影の美をつくり

芙蓉

笑みたたえ今日を咲き切る芙蓉かな
鬼灯の口が命と種を抜き
処暑といい蜩の声流れ来る

蝉

無生にて時雨となりて蝉の声
白壁に赤蔦映える夕景色
西瓜割る瞬間見ゆる味までも

滝

滝落ちて水に色あり壷に音
正面に西日を据えての車窓かな
日の盛り素足に下駄の軽さかな

雛罌粟

雛罌粟の潮風に舞う色の波
土用芽を掻き取り清む墓参り
障子洗う流さる川は音もなく

糸瓜三態

糸瓜生り西日に豊かな影つくり
食卓に糸瓜の飾る癖のなさ
糸瓜切り溢れる水は生き生きと

蚯蚓

切り返す堆肥の陰に太蚯蚓
密林は降り落つ蛭に血走りて
朝焼に赤い灯浮かぶビルの影

孑孒

孑孒の一生托すや溜まり水
背に翅をたたみて佇む糸蜻蛉
風鈴の音は物語る旅の風