片陰

片陰に入りて見上げる空の青
山椒の香に誘われて蝶の舞う
空澄みて風爽やかに夏の夕

夏草

夏草に予期せぬ南瓜の蔓は延び
粘りをばオクラ閉じこむ若緑
生のまなのパセリは色に香を添えて

夏休み

行列の先に楽しき夏休み
梅雨晴れ間青に輝く夏の空
熱湯はトマトの皮に手品して

梅雨

降り止まぬ雨量の多き梅雨重ね
冷房を念頭におき夏の知恵
若牛蒡流しに白く横たわり

虎杖の花

虎杖の花つけて知る愛らしさ
夏休み飛び交う声の甲高し
昼寝より目覚むる風はそよと吹き

布袋草

身を隠す陰は拡がる布袋草
土用入り串の操る香りかな
熱帯夜切れ間のありて夏布団

鱧

京とつき鱧さまざまに姿変え
火を囲み岩魚の並ぶ薄けむり
廻り合う雷鳥すでに白失せて
幹線と住まいを結ぶ夾竹桃

青鬼灯

青鬼灯提げし実灯す赤き艶
夏菊に暑さをしのぐ気品あり
花と風戯れあいし具美人草

熱砂

熱砂吹く千日耐えし支援かな
長雨に落下気遣う柿青き
波打ちて飛ぶ蝶を追う捕虫網

茅の輪

水無月の茅の輪くぐりの歩幅かな
雷鳴の雨に洗われ夕焼ける
噴水の飛沫にかすむ笑顔かな