紅葉散る

紅葉散る日差しは色を浮き立たせ
長葱の青葉を揺らす帰り道
輝きて赤の小粒の実千両

小春

一日を残し小春の朝迎え
新海苔に新米くるむ味あらた
友逝きて枯葉となりし別れかな

落葉

雨しとど積もる落葉の動かれぬ
切り方で大根の味さまざまに
伸びながら八手の花の珠はじけ

枯葉

葉脈を残し枯葉の砕け散る
湯豆腐の形にこもる熱さかな
夕時雨道半ばにて晴れ上がり

冬の雨

マラソンに試練加わる冬の雨
ストーブの電気は流れ音となり
冬眠に熊の子育つ穴の中

木の葉散る

木の葉散る追いかけてきて纏いつき
新海苔の噛み切る音に香りたち
すき焼きを囲み昭和のひとくさり

おでん

立体の呼び名教わるおでんかな
座布団の丸洗いする秋日和
生姜湯の香りとともに温まり

山茶花

ひとひらの花びら知らす山茶花
滑空の鷹の輪流る秋の空
冬の鵙枝揺らしつつ声残す

冬耕

冬耕の人の動きに土生きる
紅葉の斑な山路今朝の冬
すざましや枝に留まる葉は震え
風を背に尾花の占める川原かな
白富士の前に横たう山眠る

秋風

木漏れ日の秋風映す障子かな
生き残る角の白菊濁りなき
緑葉を落葉に変えし秋時雨
稜線の一点輝く秋夕べ
新雪に輝く富士の秋高し
山動き車窓を追いし秋日和