春隣

燦燦と蕾ふくらみ春隣
雪降らず一月超えて芽の青き
早春に読経流れて友おくる

寒菊

黄の冴える寒菊揺れる風の中
寒椿つぼみ色づく中に紅
土手青む土と織りなす日差しかな

寒の朝

静けさの中に明けゆく寒の朝
赤き実を三つ守りて薮柑子
凍豆腐含まれし味懐かしき

寒椿

葉の艶に磨かれ紅の寒椿
東雲に青空見せて寒の雨
散歩路に香り求めて冬の梅

大寒

大寒の輝く汗に勝ち名乗り
日脚伸ぶ時を忘れし窓辺かな
寒猿のボスを囲みて暖をとり

寒椿

暖冬に蕾みほころぶ寒椿
水仙の花器に定まり花開き
出初の日と重なる父の誕生日

寒雀

寒雀一羽とならず群れ遊べ
懐かしみ記憶つぶやく歌留多かな

寒肥

寒肥の一握りごと話しかけ
飾られし楪に見る逞しさ
消防車路地埋め尽くす小火も消え

湯豆腐

熱々の湯豆腐静かに掬われて
切干の更なる味の日向より
一枝に千両実る赤さえて

門松

門松を湿らす雨の静かなる
寒鯉の日溜まり騒ぐ色の波
粛として影を走らす初鴉